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第十章 魔導学園学園祭編
779話 使い魔には自信があります
しおりを挟むサラマンドラを召喚して子供と戯れているゴルさんは、少し楽しそうに見えた。
異空間へとつなぎ、そしてこの広い空間で魔導や使い魔とのふれあいコーナーをやっている。
魔導というものがどういうものなのか。それを見てもらうには、一番の方法だ。
中庭じゃピアさんたちが魔導具の体験やってるけど、それとはまた違った楽しさがあるはずだ。
「魔導を使えない人が見て楽しめるのはもちろん、使える人は実際にこの場で使って遊ぶこともできます」
「へぇ」
基本的には、魔導の使い方は学園で学ぶか独学か……それとも誰かに教えてもらうか。
大きな魔力でなければ、日常生活に使えるくらいのことはできる。
だけど、ここなら一流の魔導士を目指す人が揃っている。
それを見て、学んだり使ったりするわけだ。
「へぇ、なんか楽しい」
「エランも、存分に楽しんでいくといいですよ。そちらのあなた……ラテンさん、でしたっけ」
「えっ、あっ、はいっ」
さすがはリリアーナ副会長。会ったことがなくても、一年生の名前はちゃんと覚えているんだ。
それも、名前だけじゃない。名前と顔だ。だってその二つが一致しないと、名前は出てこないもん。
いきなり名前を呼ばれて、ネクちゃんは肩を震わせる。
「お客さんも生徒のみんなも楽しそうだよねぇ」
「そういうエランも、満喫しているように見えるけど」
「あ、わかるぅ?」
私はこれで、全クラスの出し物を制覇したのだ。
そして、残るはあと一日。まだ楽しめるぞ!
「よぉし、じゃあ私も楽しんじゃお。行こうネクちゃん」
「え、わ、おうっ」
私はネクちゃんの手を引き、人が集まっている所に行く。
ここにはたくさんの人がいるから、新しく誰かが入ってきてもわからないだろう……って思ってたけど、やっぱり私は目立つんだろう。
結構人の注目を浴びる。
「む、エランか」
「どもどもー」
そして私は、ゴルさんの側へ。
今朝も生徒会室で会ったけど、やっぱりいつもとは違う場所だからか、ちょっと新鮮な気持ち。
そんでネクちゃんは、私の後ろに隠れたままがくがくと震えている。
「やはり来たか」
「もちろん、もうタメリア先輩やメメメリ先輩のクラスにも行ったよ。
……それにしても、面白そうだよね」
私は改めて、周囲を見た。
笑いあって楽しんでいるみんなが、そこにいる。いい光景だ。
しっかし、ここならばなにをしても周りに影響が出ることはない……か。
……そうだ!
「ねえねえ、ここならなにしてもいいんだよね!」
「ん? あぁ、まあそのための空間だからな。ここでなにをしようと、外に影響が出ることはないが……」
「なら、使い魔出しちゃっても問題ないんだよね!」
「あぁもちろん……ん?」
よしっ、ゴルさんの許可も取った!
最近はクロガネを召喚出来るような場所もなかったし、ずっと窮屈な思いをさせていたに違いない。
ここで、たまにはストレス発散させてあげないとね!
「よぉし、出てこいクロガネ!」
「お前いきなり……」
地面には魔法陣が表れ、その下から黒い鱗を持つ竜が姿を現す。
巨大なその生物は圧倒的な存在感を持ち、その場にいた人たちは全員がその存在に釘づけになる。
魔大陸で会った黒竜。クロガネ……私と使い魔契約を結んだモンスター(?)だ。
「クロガネごめんねー、あんまり外に出せなくて」
『構うことはない。が、やはり外の空気と言うのはいいものだな』
周囲の視線をクロガネに感じる。ふふんどうよ、私のクロガネに存分に見惚れるといいよ。
そして私の隣では……
「こ、こ、こくりゅ……ふ、ぅ……」
「あぁ、ネクちゃん!」
ネクちゃんが、気を失ってしまった。
ただでさえ、二年生と三年生のクラスをまたぎ、ついにはゴルさんと直接会ったのだ。その緊張感はとんでもないものだっただろう。
ここへ来て、クロガネの圧倒的存在感。張り詰めていた緊張の糸が限界に達したのだ。
「驚かせてごめんね。でも、これからネクちゃんも使い魔召喚することになるんだから、今のうちから慣れておかなくちゃ」
「いや、さすがにこれほどの使い魔を召喚することはできないでしょう……」
あのリリアーナ先輩も、クロガネを見上げて唖然としている。
圧倒的な使い魔なら、それこそゴルさんの使い魔がいるけど……
それとはまた、迫力が違うってことだろう。
「ほぉ、これが。こんなに近くで見るのは初めてだな」
唯一、普段と態度が変わらないのがゴルさんだ。さすがだな。
黒竜を見上げ、興味深そうに見ている。
ゴルさんでも、ドラゴンをこんな間近で見た経験はないだろうな。
「どう、すごいでしょ。大きいし、強いし、硬いし、空だってあっという間に飛んじゃうんだから」
「……自分の使い魔に対して自信を持っているのは、まあいいことだな」
ふふん、と私は胸を張る。
いつか私も立派な使い魔を召喚したいと思っていたけど、思っていた以上に立派な子と契約しちゃったよ。
このゴルさんの反応を見てもわかるし、周りの人だって。それに人だけじゃなく、他にも召喚されている使い魔たちの目もクロガネに向いていて……
「……」
「……」
「ん?」
ただ、その中で一匹……サラマンドラだけは、クロガネのことをじっと見ていて。クロガネもまた、サラマンドラを見ていて。
クロガネとサラマンドラの視線が、交わっていた。
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