史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
792 / 1,141
第十章 魔導学園学園祭編

779話 使い魔には自信があります

しおりを挟む


 サラマンドラを召喚して子供と戯れているゴルさんは、少し楽しそうに見えた。

 異空間へとつなぎ、そしてこの広い空間で魔導や使い魔とのふれあいコーナーをやっている。
 魔導というものがどういうものなのか。それを見てもらうには、一番の方法だ。

 中庭じゃピアさんたちが魔導具の体験やってるけど、それとはまた違った楽しさがあるはずだ。

「魔導を使えない人が見て楽しめるのはもちろん、使える人は実際にこの場で使って遊ぶこともできます」

「へぇ」

 基本的には、魔導の使い方は学園で学ぶか独学か……それとも誰かに教えてもらうか。
 大きな魔力でなければ、日常生活に使えるくらいのことはできる。

 だけど、ここなら一流の魔導士を目指す人が揃っている。
 それを見て、学んだり使ったりするわけだ。

「へぇ、なんか楽しい」

「エランも、存分に楽しんでいくといいですよ。そちらのあなた……ラテンさん、でしたっけ」

「えっ、あっ、はいっ」

 さすがはリリアーナ副会長。会ったことがなくても、一年生の名前はちゃんと覚えているんだ。
 それも、名前だけじゃない。名前と顔だ。だってその二つが一致しないと、名前は出てこないもん。

 いきなり名前を呼ばれて、ネクちゃんは肩を震わせる。

「お客さんも生徒のみんなも楽しそうだよねぇ」

「そういうエランも、満喫しているように見えるけど」

「あ、わかるぅ?」

 私はこれで、全クラスの出し物を制覇したのだ。
 そして、残るはあと一日。まだ楽しめるぞ!

「よぉし、じゃあ私も楽しんじゃお。行こうネクちゃん」

「え、わ、おうっ」

 私はネクちゃんの手を引き、人が集まっている所に行く。
 ここにはたくさんの人がいるから、新しく誰かが入ってきてもわからないだろう……って思ってたけど、やっぱり私は目立つんだろう。

 結構人の注目を浴びる。

「む、エランか」

「どもどもー」

 そして私は、ゴルさんの側へ。
 今朝も生徒会室で会ったけど、やっぱりいつもとは違う場所だからか、ちょっと新鮮な気持ち。

 そんでネクちゃんは、私の後ろに隠れたままがくがくと震えている。

「やはり来たか」

「もちろん、もうタメリア先輩やメメメリ先輩のクラスにも行ったよ。
 ……それにしても、面白そうだよね」

 私は改めて、周囲を見た。
 笑いあって楽しんでいるみんなが、そこにいる。いい光景だ。

 しっかし、ここならばなにをしても周りに影響が出ることはない……か。
 ……そうだ!

「ねえねえ、ここならなにしてもいいんだよね!」

「ん? あぁ、まあそのための空間だからな。ここでなにをしようと、外に影響が出ることはないが……」

「なら、使い魔出しちゃっても問題ないんだよね!」

「あぁもちろん……ん?」

 よしっ、ゴルさんの許可も取った!
 最近はクロガネを召喚出来るような場所もなかったし、ずっと窮屈な思いをさせていたに違いない。

 ここで、たまにはストレス発散させてあげないとね!

「よぉし、出てこいクロガネ!」

「お前いきなり……」

 地面には魔法陣が表れ、その下から黒い鱗を持つ竜が姿を現す。
 巨大なその生物は圧倒的な存在感を持ち、その場にいた人たちは全員がその存在に釘づけになる。

 魔大陸で会った黒竜。クロガネ……私と使い魔契約を結んだモンスター(?)だ。

「クロガネごめんねー、あんまり外に出せなくて」

『構うことはない。が、やはり外の空気と言うのはいいものだな』

 周囲の視線をクロガネに感じる。ふふんどうよ、私のクロガネに存分に見惚れるといいよ。

 そして私の隣では……

「こ、こ、こくりゅ……ふ、ぅ……」

「あぁ、ネクちゃん!」

 ネクちゃんが、気を失ってしまった。
 ただでさえ、二年生と三年生のクラスをまたぎ、ついにはゴルさんと直接会ったのだ。その緊張感はとんでもないものだっただろう。

 ここへ来て、クロガネの圧倒的存在感。張り詰めていた緊張の糸が限界に達したのだ。

「驚かせてごめんね。でも、これからネクちゃんも使い魔召喚することになるんだから、今のうちから慣れておかなくちゃ」

「いや、さすがにこれほどの使い魔を召喚することはできないでしょう……」

 あのリリアーナ先輩も、クロガネを見上げて唖然としている。
 圧倒的な使い魔なら、それこそゴルさんの使い魔がいるけど……

 それとはまた、迫力が違うってことだろう。

「ほぉ、これが。こんなに近くで見るのは初めてだな」

 唯一、普段と態度が変わらないのがゴルさんだ。さすがだな。

 黒竜を見上げ、興味深そうに見ている。
 ゴルさんでも、ドラゴンをこんな間近で見た経験はないだろうな。

「どう、すごいでしょ。大きいし、強いし、硬いし、空だってあっという間に飛んじゃうんだから」

「……自分の使い魔に対して自信を持っているのは、まあいいことだな」

 ふふん、と私は胸を張る。
 いつか私も立派な使い魔を召喚したいと思っていたけど、思っていた以上に立派な子と契約しちゃったよ。

 このゴルさんの反応を見てもわかるし、周りの人だって。それに人だけじゃなく、他にも召喚されている使い魔たちの目もクロガネに向いていて……

「……」

「……」

「ん?」

 ただ、その中で一匹……サラマンドラだけは、クロガネのことをじっと見ていて。クロガネもまた、サラマンドラを見ていて。
 クロガネとサラマンドラの視線が、交わっていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...