795 / 1,198
第十章 魔導学園学園祭編
782話 大怪獣みたいなバトル
しおりを挟むクロガネに迫る風の刃、切断。サラマンドラの口から放たれたものだ。
不可視のそれは、でも魔力を感じ取ることでわかる。それに、少しだけ空間が揺らいでいるのも特徴だ。
迫るそれを、クロガネはやっぱり避ける気配はなくて……
「フン!」
鼻息一つ、大きな翼をバサッとはためかせる。
すると、ただの羽ばたきがまるで突風のように吹き荒れて、風の刃を打ち消していく。
「!」
反撃といった反撃でもなく、攻撃を防ぐために防御の姿勢を取ったわけでもない。
たった一度、翼をバサッとやっただけで……サラマンドラの攻撃を弾いたのだ。
それはクロガネにとって、なんてことない行動のはずだ。
「うぉお……すげぇ」
それを見ていた周囲の人たちは、あまりの光景にぽかんとした様子だ。
対峙するサラマンドラの表情にも、気のせいか驚きの感情が見える。
グルル……と喉の奥を鳴らして、唸り声をあげる。
「どうやら、半端な攻撃は通用しないようだな、ドラ」
「グルルル……!」
後ろで見ているゴルさんは、腕を組みながら表情一つ変えていない。
サラマンドラの勝利を信じているのか、それともこれほどの力の差は予想通りなのか。
ただ……これがサラマンドラの全力ではない。それは私もわかっている。
「来るよ、クロガネ」
クロガネは決して、油断はしていない。でも、これまでサラマンドラの攻撃はクロガネには通用していない。
だけど、次の攻撃は……どうかは、わからない。
サラマンドラの口の中に、力が収束していくのがわかる。
「ゴォオオオオ!」
それは、一瞬の溜め。直後、サラマンドラの口からは強力な炎が放たれる。
そんじょそこらの炎ではない。それだけで、魔術に匹敵するレベルの炎だ。
それを確認し、クロガネは……その場から、飛び上がった。
「おぉ、飛んだぞ!」
「しかも、速い!」
飛翔するクロガネ、それを追うようにサラマンドラも首を動かして……再び、炎を放つ。
空を自由に飛び回るクロガネに、打ち上げられる炎は簡単には当たらない。右へ左へ、上へ下へ。炎が舞う。
サラマンドラの炎の恐ろしい所は、魔術クラスの威力があるそれをほぼ溜めなしで、それも連続して放てるところだ。
魔術には詠唱が必要だし、たとえ無詠唱で撃てたとしても本人の魔力によるが二、三発いければいいほうだ。
もちろん、サラマンドラもあれを無制限に撃てるわけじゃないだろうけど……
「私との決闘の時は結局限界来なかったしね」
思い返しても、よくあの猛攻を潜り抜けられたものだと、自分で感心する。
「バァアアアア!」
しかも、サラマンドラは別に炎を吐き続けなければいけないわけではない。
それに混ぜるようにして、風の刃も放つのだ。
……意図してのものかはわからないけど、炎に燃えた口の中から続けて放たれる風の刃は炎の刃と化していた。
燃えているため不可視ではなくなるけど、それもこの状況では関係ないだろう。
「っ……」
「あっ……」
ここにきて、クロガネの身体に異変が起こる。
飛んでくる炎の刃の一部が、クロガネの翼を斬り裂いたのだ。
それはクロガネから見ても、小さな傷だろう。
けど、鱗に覆われた場所とは違い、刃でも斬れてしまう。
しかも、風の刃が炎でコーティングされている形になっているので、翼の羽ばたきで炎がかき消えても刃はまだ残ったままだ。防御面も強化されている。
『ふむ……避け続けるのも芸がないか。ならば、力には力で競ってやろう』
クロガネはその場で止まり、口を大きく開ける。
そしてその中に、魔力が溜められていく。膨大な魔力が。
あれは……クロガネの竜魔息だ。
溜めた魔力の塊を、吐きだしぶつける攻撃。その威力はすさまじい。
「お、おいここいて大丈夫かな」
「も、もう少し離れてようぜ」
みんなクロガネの攻撃を見たことはないけど……肌で感じたのかもしれない。この場にいては危険だと、距離を取っていく。
その中で、カルさんとリリアーナ先輩は平然と立っていた。
「しっかし、惜しいわねぇ。これだけの規模の対決、他にもたくさん見てもらった方がいいんじゃない?」
「それはいろいろと面倒なことになりそうなので却下です」
「むしろ、エランちゃんやゴルちゃんも参戦した激突を見たくない?」
「もっと却下です」
……わりと余裕だなこの二人は。
ちなみにネクちゃんは、二人の側に縮こまるようにしてしゃがんでいた。
「ジェアアアア!!」
そうしている間にも、展開は進んでいく。
口に溜めた魔力を吐きだすのはクロガネ……ではなく、サラマンドラだ。
溜めに関しては、サラマンドラの方が早い。強烈な炎が、クロガネの巨体を飲みこんでいく。
「あっ、クロガネ!」
炎はその間も威力を増し続けているように思える。
灼熱の炎は、空中のクロガネを飲みこんで……まるで全てを焼き尽くすんじゃないかと思えるほどの力を感じる。
もし私が生身であれを受ければ、黒焦げになってしまうこと間違いなしだ。
それをクロガネは、鱗があるとはいえまともにくらって……
……一瞬、なにかが光ったような気がした。
「ゴァアアアア!!」
強大な咆哮が、轟き……炎が打ち消されていく。
クロガネが放った竜魔息が、クロガネを飲みこんでいた炎をもろともに押し返していく。
11
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない
櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。
手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。
大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。
成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで?
歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった!
出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。
騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる?
5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。
ハッピーエンドです。
完結しています。
小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。
戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました
志熊みゅう
恋愛
十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。
マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。
その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。
――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。
彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。
断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる