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第十章 魔導学園学園祭編
782話 大怪獣みたいなバトル
しおりを挟むクロガネに迫る風の刃、切断。サラマンドラの口から放たれたものだ。
不可視のそれは、でも魔力を感じ取ることでわかる。それに、少しだけ空間が揺らいでいるのも特徴だ。
迫るそれを、クロガネはやっぱり避ける気配はなくて……
「フン!」
鼻息一つ、大きな翼をバサッとはためかせる。
すると、ただの羽ばたきがまるで突風のように吹き荒れて、風の刃を打ち消していく。
「!」
反撃といった反撃でもなく、攻撃を防ぐために防御の姿勢を取ったわけでもない。
たった一度、翼をバサッとやっただけで……サラマンドラの攻撃を弾いたのだ。
それはクロガネにとって、なんてことない行動のはずだ。
「うぉお……すげぇ」
それを見ていた周囲の人たちは、あまりの光景にぽかんとした様子だ。
対峙するサラマンドラの表情にも、気のせいか驚きの感情が見える。
グルル……と喉の奥を鳴らして、唸り声をあげる。
「どうやら、半端な攻撃は通用しないようだな、ドラ」
「グルルル……!」
後ろで見ているゴルさんは、腕を組みながら表情一つ変えていない。
サラマンドラの勝利を信じているのか、それともこれほどの力の差は予想通りなのか。
ただ……これがサラマンドラの全力ではない。それは私もわかっている。
「来るよ、クロガネ」
クロガネは決して、油断はしていない。でも、これまでサラマンドラの攻撃はクロガネには通用していない。
だけど、次の攻撃は……どうかは、わからない。
サラマンドラの口の中に、力が収束していくのがわかる。
「ゴォオオオオ!」
それは、一瞬の溜め。直後、サラマンドラの口からは強力な炎が放たれる。
そんじょそこらの炎ではない。それだけで、魔術に匹敵するレベルの炎だ。
それを確認し、クロガネは……その場から、飛び上がった。
「おぉ、飛んだぞ!」
「しかも、速い!」
飛翔するクロガネ、それを追うようにサラマンドラも首を動かして……再び、炎を放つ。
空を自由に飛び回るクロガネに、打ち上げられる炎は簡単には当たらない。右へ左へ、上へ下へ。炎が舞う。
サラマンドラの炎の恐ろしい所は、魔術クラスの威力があるそれをほぼ溜めなしで、それも連続して放てるところだ。
魔術には詠唱が必要だし、たとえ無詠唱で撃てたとしても本人の魔力によるが二、三発いければいいほうだ。
もちろん、サラマンドラもあれを無制限に撃てるわけじゃないだろうけど……
「私との決闘の時は結局限界来なかったしね」
思い返しても、よくあの猛攻を潜り抜けられたものだと、自分で感心する。
「バァアアアア!」
しかも、サラマンドラは別に炎を吐き続けなければいけないわけではない。
それに混ぜるようにして、風の刃も放つのだ。
……意図してのものかはわからないけど、炎に燃えた口の中から続けて放たれる風の刃は炎の刃と化していた。
燃えているため不可視ではなくなるけど、それもこの状況では関係ないだろう。
「っ……」
「あっ……」
ここにきて、クロガネの身体に異変が起こる。
飛んでくる炎の刃の一部が、クロガネの翼を斬り裂いたのだ。
それはクロガネから見ても、小さな傷だろう。
けど、鱗に覆われた場所とは違い、刃でも斬れてしまう。
しかも、風の刃が炎でコーティングされている形になっているので、翼の羽ばたきで炎がかき消えても刃はまだ残ったままだ。防御面も強化されている。
『ふむ……避け続けるのも芸がないか。ならば、力には力で競ってやろう』
クロガネはその場で止まり、口を大きく開ける。
そしてその中に、魔力が溜められていく。膨大な魔力が。
あれは……クロガネの竜魔息だ。
溜めた魔力の塊を、吐きだしぶつける攻撃。その威力はすさまじい。
「お、おいここいて大丈夫かな」
「も、もう少し離れてようぜ」
みんなクロガネの攻撃を見たことはないけど……肌で感じたのかもしれない。この場にいては危険だと、距離を取っていく。
その中で、カルさんとリリアーナ先輩は平然と立っていた。
「しっかし、惜しいわねぇ。これだけの規模の対決、他にもたくさん見てもらった方がいいんじゃない?」
「それはいろいろと面倒なことになりそうなので却下です」
「むしろ、エランちゃんやゴルちゃんも参戦した激突を見たくない?」
「もっと却下です」
……わりと余裕だなこの二人は。
ちなみにネクちゃんは、二人の側に縮こまるようにしてしゃがんでいた。
「ジェアアアア!!」
そうしている間にも、展開は進んでいく。
口に溜めた魔力を吐きだすのはクロガネ……ではなく、サラマンドラだ。
溜めに関しては、サラマンドラの方が早い。強烈な炎が、クロガネの巨体を飲みこんでいく。
「あっ、クロガネ!」
炎はその間も威力を増し続けているように思える。
灼熱の炎は、空中のクロガネを飲みこんで……まるで全てを焼き尽くすんじゃないかと思えるほどの力を感じる。
もし私が生身であれを受ければ、黒焦げになってしまうこと間違いなしだ。
それをクロガネは、鱗があるとはいえまともにくらって……
……一瞬、なにかが光ったような気がした。
「ゴァアアアア!!」
強大な咆哮が、轟き……炎が打ち消されていく。
クロガネが放った竜魔息が、クロガネを飲みこんでいた炎をもろともに押し返していく。
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