史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

806話 たまたまじゃない

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 ヨルの手助けで、他の人たちに囲まれていた事態から脱出できた。

「…………ありがとう」

「すごい不服そう!」

 一応助かったことに変わりはないのだし、お礼は言っておかないとね。
 ヨルに助けられるなんて、不本意だけど。

 それにしても……

「あの……花火ってやつ? よくもあんなもの思いついたね」

「まあ、思いついたってかお祭りって言ったら花火だろ。こっちじゃ違うのか?」

「いや、私こういうお祭り初めてだし」

 とはいえ、みんなの反応見ていても、花火ってのは珍しいみたいだ。

「ああいうのは予定になかったけど……まあ、いいんじゃない? 面白いし」

「そうじゃな」

 先輩たちも、受け入れてくれているみたいだ。

 ま、花火の件はこれでいいとして……

「助かったは助かったけど、ヨルはなんで私たちがピンチだって知ってたのさ」

 花火が上がったタイミングは、私たちが人々に囲まれている時。あの状況で、みんなの気を散らすために花火を打ち上げた。
 花火のおかげで助かったけど、ちょっとタイミングが良すぎやしないだろうか。

 するとヨルは、得意げに笑った。

「エランがピンチなのを感じ取ってさ。こう、ちょちょいっとやったわけよ」

「……」

「うそうそ! うそだからそんなドン引きした目で見ないでよ!」

 もしも今のヨルの言葉が本当だとしたら、私は本格的にヨルと距離を置くつもりだったけど。
 それはうそだと、慌てたように言う。そういうの冗談でもキモいよ。

「いや……本当は、せっかくのお祭りの締めくくりなんだし、なんか派手なことやりたいなぁって……」

「……つまりたまたまってこと?」

「そうとも言う」

 こいつ……! たまたまタイミングよく花火が打ちあがったのを、自分の手柄みたいにしやがったのか!
 しかも、先輩たちは花火のことを知らなかったってことは、独断で勝手にやりやがったな!

「ヨル……」

「そ、そんな目で見ないでくれよ! いいじゃん結果的に役に立ったんだし! あとここに来たのはホント偶然だから!」

 多分、悪気はないんだろうなぁ。それに、助かったのも事実だし……

 うーん……

「先輩たち、こいつが勝手にやったことですけど、助かったのも事実ですしどうか穏便に……」

「まー、俺は面白いからいいと思うぜ」

「わしもじゃな、おかげで祭りが華やかになった」

「……先輩がたがいいなら」

 というわけで、ヨルが勝手に花火を打ち上げた件は許してもらえた。
 ま、あくまでこの場にいる人たちに、だ。ゴルさんやリリアーナ先輩にはどうなるかは知らない。

「それにしても、あれはどうなっとるんじゃ?」

「事前に、火属性の魔法をセットして、時間が経ったら打ちあがるようにしてるんです。簡単なのは術者が真下から火を打ち上げることですけど、これならその場に居なくても時間差で打ちあがるのが見れますしね」

「なるほど。真下にいたんじゃ、あんな風に花がきれいに咲くところなんて見れないもんな」

「その通り!」

 ……生徒会の先輩たちが、ヨルと会話をしている。妙な光景だ。
 ヨルは魔導大会でゴルさんとも戦ったり、変なところで絡んでくるよなぁ。

 一応あんなんでも、学園入学時の【生成上位者】。ゴルさん相手に魔導合戦で渡り合っていたし、実力は確かなんだよな。
 出会い方が違えば、もっと親密に魔導の訓練をするような仲になったかもしれない。

「ねえ、エランは黒髪坊やのこと苦手なノ?」

「黒髪坊や!? ……まあ、初対面の時いろいろあってね」

「ふーン」

 悪いやつでは……多分、ないんだよな。それがわかってても、時折変なことを言うし。やっぱり苦手意識は消えない。
 ただ、ルリーちゃんも悪い人ではないと言ってるし。

 わりと誰に対しても好意的なのは、好ポイントではあるけど。

「じゃ、俺らはここでわかれるかな」

「そうじゃな」

 ふと、先輩たちが言う。

「固まって動いておったら、また先ほどのように囲まれてしまうからの」

「そうそう。残り少ないけど、最後まで祭りを楽しんでよ」

 そう言って、タメリア先輩とメメメリ先輩は方向を変えて歩いていく。
 固まって歩くよりは、確かに少人数でいたほうがいい。

 だからだろうか、シルフィ先輩も口を開く。

「なら、俺もここで……」

「リーも! 最後まで楽しまないト!」

「あ、あぁ……」

 なにやらかっこよく決めようとしていたシルフィ先輩だえど、リーメイに手を取られて動揺してしまう。
 そしてリーメイに手を引かれる形で、先輩たちが去ったのとはまた別方向に歩いていく。

 残されたのは、私と……

「! し、しまった……」

「どうしたんエラン」

 私と、そしてヨル! 見事に残されてしまった。
 うっかりしていた。こんなことなら、流れで私もどっか行けばよかった。

 いや、まだ間に合う。

「じゃあ、私は……」

「俺たちも行こうぜ」

「……」

 こいつ……!

 結局私は、ヨルと行動を共にすることに。
 さっき周りの人たちから逃げるようにここまで来たから、周囲に誰もいない。二人きりの空間だ。

 なに、この森だか林だかを抜ければ問題ないはずだ。誰かしらいるだろうし、そこで別れれば済むこと。

「いやぁ、五日間あっという間だったなぁ。やっぱ魔法学校の学園祭ってすげーテンション上がったわぁ」

 ……う、うるさい……
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