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第十一章 使い魔召喚編
863話 お騒がせしました
しおりを挟むダルマスは困っている。なんとかしたい気持ちはあるけど、どうしようもないことだってある。
「まあ、私にできるのはちょこっとしたアドバイスだけだから。さすがにその状態の使い魔をどうしたらいいのかは、わからないな。ごめんね」
「……お前が謝る必要はない。こいつが頑ななのが悪いんだ」
ダルマスは肩に乗ったままの使い魔の頭を、つんつんとつついている。
言われなきゃ、これが不死鳥だなんて思えないよなぁ。
いくら見た目で判断してはいけないと言っても。そこには限度があるし。
「他のやつは、使い魔との関係をうまく深めているというのにな」
その言葉に、私も周りを見る。
使い魔とお話しているだけでなく、魔法を使って使い魔とできることを模索したり、訓練所だからこそできることをやっている。
それに、使い魔同士戯れているところもある。
……と、そんなときだ。
「キィイイイイイ!」
「!?」
耳に届く、とても甲高い音。いや、声か?
なんて言うんだろう……耳の奥まで届くというか、鼓膜に振動が行き渡るというか……
思わず耳を塞ぎ、声の出所を探す。
「ちょ、ちょっと! とめてとめて!」
続いて慌てたような声が聞こえる。
その言葉に従ってか、甲高い声はだんだんと小さくなっていく。広い訓練所に響き渡った声は、私以外にも影響を及ぼす。
さっきまでわいわいと騒いでいたみんなが、一斉に静かになって……
「あ、えっと……お、お騒がせしました……」
それを見たクレアちゃんが、とても気まずそうに頭を下げていた。
「クレアちゃんなの? 今の」
私は、クレアちゃんの側に近寄る。
「まあ……私っていうか、この子っていうか」
バツが悪そうにうなずくクレアちゃんは、自分の近くを飛んでいる使い魔を指す。
今の声は、このコウモリが出したものだというのか。
「得意なことは超音波だって言うもんだから、それを試すように言ったら……まさか、こんなことになるなんて」
どうやら、使い魔の得意なことを披露していた……ってことらしいな。
そんで、やったのが……あの耳の奥の奥まで届く声だったってわけか。
「しかし、超音波とは人の耳には聞こえないものではなかったか?」
「! だ、ダルマス様!?」
私の後ろから、ダルマスもやってくる。まさかの人物の登場に、クレアちゃんは肩を大きく震わせた。
それから、ペコペコと頭を何度も下げ始める。
「ももも、申し訳ありません! 不快な思いをさせてしまって……」
「いや、すさまじいものだったが、故意に迷惑をかけようと思ったわけでもないんだし、問題はない」
そうそう、クレアちゃんは使い魔の得意なものを確かめただけなんだから。
それを聞いて、クレアちゃんはほっと息を吐く。
「あ、ありがとうございます。
……さっきのは、どうやら私たちのもわかりやすく周波数を変えて発した……ってことらしいです」
超音波とは人の耳には聞こえない……それに対するクレアちゃんの回答。
私には超音波だかなんだかよくわかんないけど、要は本来人には聞こえないものを人にも聞こえるように調整したと。
これは、単に大きな声を出すとか、そんな単純な問題じゃないんだろうな。
「なるほど。対象をモンスターに絞るか、人間に絞るか……または両方か。それによって相手の動きを封じることができると」
「確かに、あんなすんごい声出されたら耳塞がないと立ってられないもん」
むしろ、耳を塞いでも立ってられない。それくらいにすごい声だった。
とはいえ、それほどにすさまじい威力だからこそ、ダルマスの言うように相手の動いを止めることに使える。
しかもこれは、魔法や魔術じゃできないことだ。単純な攻撃とは違って、目に見えない精神的な攻撃。使い魔だからこその攻撃。
相手の動きを封じるだけ、という点でも、その先にできることの幅が広がる。
「すごいじゃんクレアちゃん!」
「そ、そうかしら? なんか地味じゃない?」
当のクレアちゃんは、手放しで喜べないようだ。確かに、地味っちゃ地味だけどさ。
「地味でも、効果はてきめんだ。誇っていいことだと思うぞ」
「! あ、はい……」
続いてダルマスに褒められると、クレアちゃんは顔を赤くして小さくうなずいた。なんか私の時と態度違くない?
……もしかしてこの反応は……
「ねえ、クレアちゃん」
私はクレアちゃんにどっと耳打ちをする。
「なあに?」
「クレアちゃんってさ、ダルマスのこと好きなの?」
「……はぁ?」
もしもクレアちゃんがダルマスを好きなんだとしたら。キリアちゃんと同じ……キリアちゃんにとって恋のライバルが増えてしまうことになる。
私としては、友達の恋は応援したい。でも、別々の友達が同じ人を好きになったら……私は、どうすればいいんだろう。
と、私としてはドキドキしていた。だけどクレアちゃんは、しらっとした目をしていた。
「なに言ってんのよ、違うわよ」
「え?」
あれぇ?
「だって、なんか顔赤くしてもじもじしてるし……」
「ダルマス様のような上級貴族に話しかけられて、私みたいな下級貴族が平然とできるわけないでしょ。私はエランちゃんみたいに肝が太くないの」
ジト目を向けてくるクレアちゃん。どうやら私の勘違いだったみたいだ。
いやぁ、キリアちゃんみたいな反応をするもんだからてっきり……
「というか……むしろエランちゃんがダルマス様のこと好きなんだと思ってたんだけど」
「……ん?」
おや? なんか今、とんでもない言葉が聞こえてきたぞ。
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