史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

868話 図書室にて

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「……」

 放課後。今私は図書室に来ている。その目的は、あることを調べるためだ。

 今日は生徒会の用事も、お茶会の用事もない。久しぶりののんびりした時間に、気になっていた調べ物をしよう。
 そう思っていたのだけど……

「まさかダルマスと一緒になるとは」

「な、なんだ悪いか」

 私の隣の席には、ダルマスが座っている。
 教室が同じだし、いつも同じ空間で授業を受けているけど……こうして、隣り合って座っているのは初めてだ。なんか妙な気分。

「悪くはないけど。まさか声をかけられると思わなくて」

 まさかダルマスが着いてくるとは。
 教室から出ようとした私に声をかけてきて、行き先を聞くと自分も図書室に用事があると着いてきたのだ。

 まあ着いてきたってよりは、たまたま目的地が一緒だったってだけの話だろうけど……

 にしても、良くないなぁ。さっき決めたばかりじゃないか、ダルマスと距離を置こうって。
 それがどうだ。距離を置くどころか物理的な距離は過去一近いんじゃないか。

「まあ、見てダルマス様よ」

「素敵。読書をしている姿も凛々しいですわね」

「隣の方は例の黒髪黒目の……」

 しかも、図書室という空間だと人目につく。
 図書室では静かにしないといけないから、わいわいと騒ぐことはない。声を抑えている。
 それでも、自分のこととなると聞こえちゃうんだよなぁ。

 ダルマスは目立つし、それ以上に私が目立つ。
 こうして隣り合って本を読んでいるなんて。席がいっぱい埋まっているならともかく、わりと空いている中で隣に座ってるんだもんなぁ。

「はぁ」

「どうかしたか」

「なんでもない」

 ここで変な噂を立てられてしまわないか不安だ。
 や、私たちはただ本を読んでいるだけ。やましいことなんてなにもない。んだけど……

 図書室で隣り合って読書中の男女。女の子はこういうの好きそうだからなぁ。
 噂に尾ひれがついてしまわないか心配だ。

 ……ダルマスは、こんなことしてたら私と噂になるかもって思わないのかな。

「ダルマスは、使い魔……不死鳥のことを調べてるんだね」

「あぁ。なにか資料がないかと思ってな」

 ダルマスが傍らに置いているのは、不死鳥の伝説に関する本の数々。
 自分の使い魔として、知っておくべきことはたくさんある。特に、真の姿と仮の姿とやらの記載とかないかとか。

 他のみんなは、自分の使い魔のことは使い魔本人に聞けばいいもんな。でもダルマスは、そういうわけにもいかない。

「エランも、使い魔に関することか?」

「まあ……そんなとこ」

 私の手元にあるのは、使い魔召喚に関してのものだ。
 使い魔召喚に関しては授業でいろいろ習ったが、その範囲外について。たとえば……魔物や人間の召喚。

 前例がないとは聞いたけど、本当にそうなのか。これだけ本があるのだから、一冊くらい、少しだけでも記述はないのか。
 本当に過去一度もこういったことがなかったのか。そういうことを調べている。

「……ま、他に目的もあったんだけどね」

 本当なら、リーフェルさんのことで調べたいこともあったんだよなぁ。

 ……リーフェルさん。ルリーちゃんの友達だったエルフと、同姓同名の人物。学園祭の日に出会い、そしてルリーちゃんは衝撃を受けた。
 名前が同じで、リーフェルさんは昔の記憶がない。おまけに五十年も彷徨っていたという。

 単なる同姓同名ではなくて、同一人物の可能性が浮かび上がってきた。
 だけど……彼女は、人間だ。エルフじゃない。

 種族が変わるなんてことがあるのか。エルフが人間になる現象があるのか。そういったことも気になってはいた。

「なにか言ったか?」

「いんや、なんも」

 別に、ダークエルフについてじゃないんだ。エルフのことを調べるくらい、気にすることはないんだろうけど……
 ダルマスは妙に察しがいいし、ものがものだ。私がエルフについて調べることでなにか気づいてはいけないことに気づくかもしれない。ルリーちゃんの正体とか。

 私一人なら存分に調べられたんだけど、ダルマスが隣にいてはそれができない。
 まあ、ダルマスも使い魔のことで調べたいことがあったんだ、私が「来ないで」って言えるはずもないか。

「やあ、熱心に本を読んでますね」

「! あ、レニア先輩」

 ふと、私に誰か声をかけてくる。顔を上げると、そこには見知った顔。
 レニア・カーマン。ひょんなことから顔見知りになった間柄だ。

 座っている私と、目線がそんなに変わらない。
 初めて会ったときは、年下だと間違えてしまったっけ。けれど、れっきとした先輩だ。小人族ドワーフだから背が低いだけなのだ。

「なにか調べ物みたいですね」

「ちょっとねー」

「おい、エラン」

 すると、横からダルマスが声をかけてくる。
 見知らぬ先輩と私が親しげに離しているから、気になったのだろう。

「あ、こちらレニア先輩。ピア先輩の幼馴染で……」

 とりあえず、ダルマスに紹介する。だけど、変な紹介の仕方をしてしまった。
 そもそもダルマスはピアさんを知らないだろうし、彼女の幼馴染と言ってもな。

 なにか別の紹介を……と思っていたけど。

「ピア……ピア・アランフェイクか?」

 と、ダルマスはピアさんのフルネームを当てたのだ。

「え、知ってるの?」

「そりゃ、この魔導学園でその名前は有名だからな。その……良くも悪くも、様々な魔導具を発明していると」

 そっか、ピアさん有名人だもんね。ある意味。
 ただ、それが全部良い方に有名とは限らない。ダルマスは、なるべく言葉を選んでいるようだったけど……なんとも半端な選び方だった。
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