史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
884 / 1,141
第十一章 使い魔召喚編

871話 エルフの調べ物

しおりを挟む


 一通り不死鳥フェニックスのことについて調べたダルマスは、先に帰っていった。
 結局本当に知りたいことは知ることはできなかった、か。本にも載ってないって、かなり珍しいことなのかな。珍し過ぎる生き物だから、あんまり事例がないんだろうな。

 ま、それはそれとして。私は私の調べたいことを調べるとしますか。
 以前は、ダークエルフについてここで調べた。そして今回は、エルフだ。

 エルフについては、ダークエルフと同じところに本が置いてあったので、見つけるのに苦労はなかった。

「正確には種族が変わるなんて事例があるのかってことを調べたいけど……それだと、どこを調べればいいのかわからないしな」

 とりあえずは、エルフでそういう事例がないか確認してみよう。それに、ラッヘについてもな。

 エルフは、魔導大国のこの国でも見かけないくらい人数が少ない。私が知ってるのだって、師匠とラッヘ、ウーラスト先生くらいだ。
 ルリーちゃんやルラン、リーサはダークエルフだしね。

 ……そういえば、ラッヘは力を使い切って記憶全部なくしちゃったんだよな。似てるっちゃ似てるな……

「うーん……」

 ペラペラとページを捲っていき、なにか重要なことが書かれていないか確認する。
 だけど、そのほとんどはすでに知っているものだった。

 これまでにも、暇なときにはこっそり図書室に来ていた。でも、こうしてゆっくり腰を据えるのは久しぶりかもしれないな。

「うぅん。別名森の妖精。自然や精霊に愛され、基本的に自然の中で暮らす。自然の中に生きるため魔力は純粋かつ膨大。他人の魔法を操作できるとも言われている。精霊に愛されるがゆえに魔術を得意とする」

 どれもこれも知っている知識ばっかりだよー。やっぱエルフすごいなーって感想しか出てこないや。
 だけど、こうして改めて確認するってのもいいかもしれない……と。

 ……お、これは……

限界魔力オーバーブースト……自分の魔力を極限まで上昇させる。使用後は魔力体力ともに限界へと達し、回復まで長い時間を要する」

 これって……ラッヘがやったやつかな。あの時、ラッヘの魔力がすごい爆発するみたいに大きくなって……
 その後、ラッヘからは微弱な魔力しか感じられなくなったんだよな。

 でも、これには時間と共に回復する、と書いてあるな。じゃあ、いつかは元に戻るのか?
 いや、時間経過ったって魔大陸のあのときからさすがに時間が経ちすぎだ。だいたい、これには記憶喪失については書かれていない。

 書かれていないんじゃあ、どうすればいいのかわからない。どうして記憶喪失になったのかも。

 ……もしかして、魔大陸で使用したから、じゃないだろうな。
 魔大陸じゃエルフは私以上に影響を受けていたみたいだし、そんな悪影響の中でこんな技を使ってしまったから、想定できないことが起こった。

「ラッヘのことも、解決しなきゃいけないのに」

 だけど、"限界突破"に関するそれ以上の記述はない。
 もはや記憶を失ってからのほうがラッヘとの付き合いが長い。でも、このままでいいわけないだろう。私とクロガネを繋いでくれたのだって、以前のラッヘだし。

 そりゃ、ラッヘに直接記憶を戻したいか聞いたわけではない。もしかしたら、このままがいいかもしれない……私だって、わざわざ昔のことを思い出したいとは思わない。
 でも、失くした記憶の量が全然違う。エルフだから膨大な時間を生きてきただろう、その期間の記憶が全部なくなったのだ。

 せめて、記憶を取り戻す手立てくらい手に入れておきたいものだ。

「ラッヘのこと、リーフェルさんのこと……あぁー……」

 二人に共通しているのは、記憶を失っていること。まあまだリーフェルさんが元エルフだと決まったわけじゃないんだけどね。

 それにしても、エルフに関する資料があんまりないから一人でも調べられるかと思ったけど……こんなことなら、クレアちゃんに手伝いを頼めばよかったかな。
 でも、今日は用事があるようだったし。そっちも大事だ。

「うーん……ちょっと休憩しよう」

 しばらく本を読んでいたけど、大した情報は得られず。
 少し休憩をしよう。そう思い、うんと背伸びをして……席を立つ。そして、室内の端に向かう。

 図書室には、ただで飲める水が設置してあるんだよねぇ。紙コップを取って、水を注いで……

「んぐっ……ぷはぁ!」

 一気に中身を飲み干す。くぁあ、渇いていた喉が潤うよ。

 さあて、もう少し調べますかね。紙コップをゴミ箱に捨て、座っていた席に戻る。
 すると、正面から本を抱えた男の子が歩いてきていた。私は避けるために、右へと酔ったのだけど……

「わっ……」

「おっと?」

 私が避けたそのタイミングで、男の子の足下がふらつく。バランスを崩し、なんとか倒れないように頑張っていたが……
 よろよろと、左に……つまり私が避けたのと同じ方向によろめいた。

 結果として、少し身体がぶつかってしまう。

「す、すみませんっ。急に体勢が崩れちゃって」

「気にしないで、別に怪我とかしてないし。そっちこそ大丈夫?」

「はいっ」

 本も落とさなかったようだし、お互い怪我もない。
 ちょっとぶつかった程度だ。彼は私にぺこりと頭を下げ、カウンターに向かっていた。本を借りるのだろう。

 私も、借りて部屋に戻ってから読もうかなぁ。いやそれだと、ノマちゃんに勘繰られるか。
 リーフェルさんのことは、ルリーちゃんの話題をかわせばいいし……別に隠すようなことでもないけど……

「……あれ?」

 まあここで調べられるだけ調べよう。そう思って足を進めようとすると……床になにか落ちているのを発見した。
 これは……紙か。ゴミが落ちてるのかな……と、それを手に取って……

『魔力枯渇による種族変化について』

 紙に書いてある文字に、私は愕然とした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...