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第十一章 使い魔召喚編
871話 エルフの調べ物
しおりを挟む一通り不死鳥のことについて調べたダルマスは、先に帰っていった。
結局本当に知りたいことは知ることはできなかった、か。本にも載ってないって、かなり珍しいことなのかな。珍し過ぎる生き物だから、あんまり事例がないんだろうな。
ま、それはそれとして。私は私の調べたいことを調べるとしますか。
以前は、ダークエルフについてここで調べた。そして今回は、エルフだ。
エルフについては、ダークエルフと同じところに本が置いてあったので、見つけるのに苦労はなかった。
「正確には種族が変わるなんて事例があるのかってことを調べたいけど……それだと、どこを調べればいいのかわからないしな」
とりあえずは、エルフでそういう事例がないか確認してみよう。それに、ラッヘについてもな。
エルフは、魔導大国のこの国でも見かけないくらい人数が少ない。私が知ってるのだって、師匠とラッヘ、ウーラスト先生くらいだ。
ルリーちゃんやルラン、リーサはダークエルフだしね。
……そういえば、ラッヘは力を使い切って記憶全部なくしちゃったんだよな。似てるっちゃ似てるな……
「うーん……」
ペラペラとページを捲っていき、なにか重要なことが書かれていないか確認する。
だけど、そのほとんどはすでに知っているものだった。
これまでにも、暇なときにはこっそり図書室に来ていた。でも、こうしてゆっくり腰を据えるのは久しぶりかもしれないな。
「うぅん。別名森の妖精。自然や精霊に愛され、基本的に自然の中で暮らす。自然の中に生きるため魔力は純粋かつ膨大。他人の魔法を操作できるとも言われている。精霊に愛されるがゆえに魔術を得意とする」
どれもこれも知っている知識ばっかりだよー。やっぱエルフすごいなーって感想しか出てこないや。
だけど、こうして改めて確認するってのもいいかもしれない……と。
……お、これは……
「限界魔力……自分の魔力を極限まで上昇させる。使用後は魔力体力ともに限界へと達し、回復まで長い時間を要する」
これって……ラッヘがやったやつかな。あの時、ラッヘの魔力がすごい爆発するみたいに大きくなって……
その後、ラッヘからは微弱な魔力しか感じられなくなったんだよな。
でも、これには時間と共に回復する、と書いてあるな。じゃあ、いつかは元に戻るのか?
いや、時間経過ったって魔大陸のあのときからさすがに時間が経ちすぎだ。だいたい、これには記憶喪失については書かれていない。
書かれていないんじゃあ、どうすればいいのかわからない。どうして記憶喪失になったのかも。
……もしかして、魔大陸で使用したから、じゃないだろうな。
魔大陸じゃエルフは私以上に影響を受けていたみたいだし、そんな悪影響の中でこんな技を使ってしまったから、想定できないことが起こった。
「ラッヘのことも、解決しなきゃいけないのに」
だけど、"限界突破"に関するそれ以上の記述はない。
もはや記憶を失ってからのほうがラッヘとの付き合いが長い。でも、このままでいいわけないだろう。私とクロガネを繋いでくれたのだって、以前のラッヘだし。
そりゃ、ラッヘに直接記憶を戻したいか聞いたわけではない。もしかしたら、このままがいいかもしれない……私だって、わざわざ昔のことを思い出したいとは思わない。
でも、失くした記憶の量が全然違う。エルフだから膨大な時間を生きてきただろう、その期間の記憶が全部なくなったのだ。
せめて、記憶を取り戻す手立てくらい手に入れておきたいものだ。
「ラッヘのこと、リーフェルさんのこと……あぁー……」
二人に共通しているのは、記憶を失っていること。まあまだリーフェルさんが元エルフだと決まったわけじゃないんだけどね。
それにしても、エルフに関する資料があんまりないから一人でも調べられるかと思ったけど……こんなことなら、クレアちゃんに手伝いを頼めばよかったかな。
でも、今日は用事があるようだったし。そっちも大事だ。
「うーん……ちょっと休憩しよう」
しばらく本を読んでいたけど、大した情報は得られず。
少し休憩をしよう。そう思い、うんと背伸びをして……席を立つ。そして、室内の端に向かう。
図書室には、ただで飲める水が設置してあるんだよねぇ。紙コップを取って、水を注いで……
「んぐっ……ぷはぁ!」
一気に中身を飲み干す。くぁあ、渇いていた喉が潤うよ。
さあて、もう少し調べますかね。紙コップをゴミ箱に捨て、座っていた席に戻る。
すると、正面から本を抱えた男の子が歩いてきていた。私は避けるために、右へと酔ったのだけど……
「わっ……」
「おっと?」
私が避けたそのタイミングで、男の子の足下がふらつく。バランスを崩し、なんとか倒れないように頑張っていたが……
よろよろと、左に……つまり私が避けたのと同じ方向によろめいた。
結果として、少し身体がぶつかってしまう。
「す、すみませんっ。急に体勢が崩れちゃって」
「気にしないで、別に怪我とかしてないし。そっちこそ大丈夫?」
「はいっ」
本も落とさなかったようだし、お互い怪我もない。
ちょっとぶつかった程度だ。彼は私にぺこりと頭を下げ、カウンターに向かっていた。本を借りるのだろう。
私も、借りて部屋に戻ってから読もうかなぁ。いやそれだと、ノマちゃんに勘繰られるか。
リーフェルさんのことは、ルリーちゃんの話題をかわせばいいし……別に隠すようなことでもないけど……
「……あれ?」
まあここで調べられるだけ調べよう。そう思って足を進めようとすると……床になにか落ちているのを発見した。
これは……紙か。ゴミが落ちてるのかな……と、それを手に取って……
『魔力枯渇による種族変化について』
紙に書いてある文字に、私は愕然とした。
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