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第十二章 中央図書館編
978話 思い出すのは、十年前の
しおりを挟む「ぐぉおおお……」
「ママ大丈夫ぅ?」
結局私は、先生にこれ以上動けないことを話し壁際に避難。寄りかかり、見学することに。
壁際へ移動したのは、浮遊魔法でちょちょいとね。誰かに運ばせるわけにもいかないしね。
……移動手段、最初から浮遊魔法を使えばよかったんじゃねぇ? 思いつかなかったなぁ。
「なんとかねぇ。心配してくれてありがと」
「ふふん!」
心配したことを褒められてご満悦のフィルちゃん。どや顔がかわいいな。
ふん、と小さな胸を張る。って、ここにいるけど……
「フィルちゃんは、みんなと混ざらないの?」
「危ないから見学だってー」
「なるほど」
まだ子供で背も低いフィルちゃん。組手をやるには危ないとの判断か。
魔導士としての適性は高い。けれど、身体能力はあくまで子供だから。
身体を作るにしても適した年齢があるだろうし、いきなり激しい運動も控えた方がいい。
「だから腕立て伏せとかやってたんだけど、ママが見学になったから私も側にいるの!」
「そ、それはどうも」
見学だからってじっとせず、自分なりにできそうなことを考えていたのか。
けど、私が来たからこっちに来たって。私がフィルちゃんの邪魔してないかな?
「ねーママー」
「んー?」
「ママは、私と同じくらいの時、なにしてたのー?」
……珍しいな、フィルちゃんから私のことを聞いてくるなんて。
私も、自分から自分のことを話すことはあまりなかったけど。わりと気になっていたのかな。
じーっとした視線をすごく感じる。
「私がフィルちゃんくらいの時、かぁ」
「うん!」
正確なところは本人もわからないみたいだけど、フィルちゃんの年齢は多分六歳くらい。
ということはつまり、ちょうど私が師匠に拾われた頃……ってことだな。
その頃の私かぁ。
「私、昔の記憶がないってのは話したよね」
「うん。ママはすごく忘れんぼさんだってことだよね!」
「……まあ、そういうことかな」
フィルちゃんにも一応、私が記憶喪失であることは話してある。
まあフィルちゃんは、記憶喪失の意味をあんまり深く理解はしていないみたいだけどねー。
「だから覚えてるのが、ちょうどフィルちゃんくらいの年の頃かな」
わいわい……と組手で盛り上がっているクラスメイトたちを見る。
授業なので、みんな真剣だ。けど、どこか楽しそうにやっている子たちも見える。
組手だし半端な気持ちで挑んだらけがをしちゃうけど、楽しさを感じるのも大事だとは思う。
ただの作業でやるのも、つまらないからね。
「へー、じゃあママが一番小さいときのことって、私と同じときなんだ!」
「まあ、そんな感じかな」
わくわく、と身体で体現しているフィルちゃんは、私の話を聞き出そうに跳ねている。というか、私の膝に乗り出そうな雰囲気を出している。
でも、悪いけどそれは勘弁してもらいたい。
だって……きっと痛い。
「フィルちゃん、おとなしくしてようね。じゃないと話してあげないよ」
「わかった!」
私の言葉に素直に従うフィルちゃんは、ピタッとその場に座る。
私と隣り合って座っているその姿は、お人形みたいでかわいい。妹だと言われてもまんざらでもないだろうな。
実際にはママと呼ばれているんだけど。
「私がフィルちゃんくらいのときは、そうだなぁ……」
壁に背中を集め、クラスメイトがわいわい騒いでいる声をBGMに、私は天井を見上げた。
不思議と、目を閉じるとあの時のことがすぐに浮かんでくる。それだけ、私にとって大切な時間だったってことだろうか。
思い出すのは、そう。師匠に拾われた、十年前のこと……
――――――十年前――――――
……私は、眠っていたいしきが起き上がってくるのを感じた。なんだろう、とてもふしぎな気分だ。
まるで、自分が生まれ変わったような……そんなかんかくがある。生まれ変わったことなんてないけれど。
ふわぁ……起きたばっかりなのに、あくびがでちゃう。いや、起きたばっかりだからかな?
目を開ける。うーん……見おぼえのないけしきだ。それに、背中に感じるやわらかいかんしょくは、なんだろう?
不思議に思いながら、私はキョロキョロと首をうごかした。どうやら、私はベッドにねているみたいだ。
「あ、目が覚めたみたいだね」
声が、聞こえた。それは、たぶん私に向けたもの。
声のしたほうこうには、誰かが立っている。そして、ゆっくりとした足取りでむかってくる。
……だれだろう。きれいなきんいろの髪だなぁ。
「おはよう、お嬢ちゃん。身体はどう、痛いところとかない?」
「……ない」
その人は、ベッドの側に立ち、私を見て……膝をまげて、私に顔を近づけてくる。
揺れるきれいなきんいろの髪。それに、ほうせきみたいな緑色の目。その目に映っているのは、小さな女の子のかお……
……これ、私か。
「キミ、一人で倒れていたんだよ。覚えてる?」
「……ない」
その人は、私がどんな状況だったのかをおしえてくれる。でも、私はその状況におぼえがない。
首をふる私に、その人は少し困ったようにまゆを下げた。
でもすぐに、にっこりと笑った。まるで、私を安心させようとするように。
「ここは私の家だ、警戒はしないでいい……って言っても、初対面のエルフにそんなことを言われても無理か。
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……これが、起きてからなにもおぼえていない名前もない私と……エルフ、グレイシア・フィールドの出会いだった。
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