史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十二章 中央図書館編

977話 組手の時間

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「やったぁ! やりましたわ! エランを投げ飛ばせましたわ!」

 見事な背負い投げが決まり、それに達成感を覚えたのかカリーナちゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
 私を相手にして、投げ飛ばせたのがそんなに嬉しいらしい。嬉しいならよかったけど……

 ……背中、くそ痛い。

「どうですかエランさん! 私も人知れず、努力していたのです!」

「あぁ、うん、すごいね……」

 正直、カリーナちゃんがここまでやるとは。
 男の子ならともかく、女の子にこんな風に投げ飛ばされるとは。しかもお茶会がよく似合うお嬢様に。

 相当努力してきたんだろうなぁ。

「あまり大きな声では言えませんけど、私、ダルマス様との簡易決闘を見て感銘を受けましたのよ」

 声を潜めて、カリーナちゃんは言う。
 ダルマスとのあれに感銘って、初めて聞いた……あぁ、いつも周りには誰かしらいるもんね。

 誰にも聞かれないように小声で。うっかりダルマスの耳に入ったらめんどくさいことになりそうだもんね。
 今更ダルマス本人はその程度のことを気にしないかもしれないとはいえ。

「そう、なんだ」

「はい! 身体強化の魔法をあそこまで使いこなし、相手を翻弄する姿! 痺れました!」

 オートラインさんとの手合わせの後じゃ、身体強化の魔法を使いこなせてるなんて口が裂けても言えない。
 とはいえ、褒められるのは悪い気はしないし、褒めてくれるところに水を差すつもりもない。

 ありがたくお言葉をいただくことにしよう。

「あれ以来、私は身体を鍛えるべく身体を動かしてきましたのよ。それに、ほどよい運動は健康的な身体を作ることにもなりますしね!」

 ……結構お茶会しているイメージしかなかったんだけど、見えないところで頑張ってるんだなぁ。だからスタイルもいいんだろう。

 そうだよね、頑張ってるのはみんなだ。私だけじゃない。
 それがわかっただけでも、なんだかとっても嬉しい。

「うんうん」

「……ところでエランさん、いつまで寝転がっていますの? いえ、私が投げ飛ばしておいて言うことでもないかもしれないのですが」

 私は、カリーナちゃんに投げ飛ばされた状態のまま動かないでいた。
 ……いや、動けないでいた。

 なぜかって? ふふっ、理由はわかっているくせに。聞くのは野暮ってもんだよぅ。

「気にしないで。ちょっと、床がひんやりして気持ちいいだけだから……」

「ばっちぃですわよ」

 みんなが走り回ったりいろいろしている訓練場。掃除しているとは言え、そういう問題でもないだろう。

 ふと、カリーナちゃんが手を伸ばしてくれるのが見えた。

「ほら、どうぞ」

「あぁ、うん。悪いね」

 私は、伸ばされた手に向かって自分の手を伸ばす。

 腕を伸ばすその行為だけでもいくらかビキビキするんだけど、耐えられないほどじゃない。明るい笑顔を絶やすな。
 伸ばした手は、カリーナちゃんの柔らかい手に触れる。お手入れされた、きれいな手だ。

 ぎゅっと手を繋ぎ、カリーナちゃんは私を起き上がらせるために軽く踏ん張り、ぐっと力を入れて腕を引き上げて……

「いででででででででで!!?」

 ビキビキビキィ……ッ、っと、腕が引っ張られた途端凄まじい痛みが走った。

 こ、これはいかん……これはまずい!
 痛みが! 身体の中の電気が止まらない! それになんか聞こえちゃいけない音が聞こえて……

「きゃっ、え、エランさんっ?」

 私の反応に驚いたカリーナちゃんが、かわいらしい声を上げる。
 そこまではいい、とてもかわいい反応だ。

 問題は……驚いた拍子に、掴んでいた私の手を離してしまったことだ。
 引っ張られる力がなくなったおかげで、起き上がるために少し浮いていた上体が、再び地面へと激動する。

「おがぁぢゃん!?」

 喉の奥からは自分のものとは思えない声が出て、背中にビキィンッとした痛みが走る。

 こ、これ……こ、れぇ……!

「え、エランさん!?」

 私のザマに、カリーナちゃんは驚いて姿勢を低くする。
 私を心配して、手を伸ばしてくれるのは嬉しい。

 でも、身体を揺らさないでぇ!

「ぁっ、ぁっ、ぁっ」

「エランさんっ、しっかりぃ!」

 か、身体を揺らされるだけでもちょっとした痛みが! これまずくね!?
 回復魔術を使おうにも、痛みに気を取られてうまく集中できない。自分の傷を治すのには普通の魔術を使うのとはまた違った集中力がいるんだよなぁ!

 身体中が、骨が、悲鳴をあげてる……!

「う、動かさないでぇ……」

「え。あ、はい」

 私の言葉を聞き入れてくれて、なんとかカリーナちゃんは私の身体を揺らすのをやめてくれた。
 それから、地面に寝かせることを続いてお願いする。

 その際「そっと、そっとね」と言うのを忘れない。

「あの、本当に大丈夫ですか?」

「う、うん、大丈夫だよ……」

「そうは見えませんわね」

 くそぅ、なんとか乗り切ってやろうと思ったけど、あんな姿を見せたらさすがに無理かー。

 それに、異変に気づいたのかクラスのみんなからの視線も感じる。
 じーっとした視線が……私に集中している……!

「おい、どうしたフィールド。様子がおかしいぞ」

 ここにきて、サテラン先生が私に近づき声をかけてきた。
 様子がおかしいのは見てわかるでしょう!?
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