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第十三章 黒髪少女の軌跡編
980話 精霊
しおりを挟むその日は、私がまだ疲れているだろうからって家にいるように言われた。
きんぱつの人は、私の手がかりがないか探しに出かけたみたいだ。
本当なら、私もいたほうがすむーずには進むと思うんだけど……
「……こくこく」
私はベッドに腰かけ、側に置いてあった水を飲む。
つめたくて、おいしい。きんぱつの人が、出かける前によういしてくれていたものだ。
飲み物は……あのちょうほうけいの箱に入っているとのこと。冷やしてあるから、好きにのんでいいと言われた。
あの中にあるものがつめたくなるなんて、ふしぎだ。
ただ、気づかいはうれしいけど……
「寝すぎて目がさえちゃってる……」
どれくらい眠っていたのかはわからないけど、少なくとも昨日起きてからはまるまる一日眠っていたんだ。
だからかな。別に、身体のふちょうも感じないし。
私もついていけばよかったかな。
でも、私を見るあの人の目……優しくて、すごく心配しているような、目。あれを見ると、あの人の言葉にさからいたくないなって思えた。
「……っていっても、ぶようじんだよね」
ぴょん、とベッドから立ち上がる。トコトコと歩いて、扉をあける。
この家には、どうやら元々あの人一人が住んでいたみたいだ。他には、誰もいない。
だから、私一人をのこすなんて……ぶようじんだと言わざるをえない。
子どもだからって、甘く見られているのか。もしも私が悪い子で、誰もいないこの家からかねめのものを取っていったらどうするんだ。
「……ま、取らないけど」
ざっと見た感じ、この家はゆうふくって感じじゃない。
だけど、私がものを取らないのはなにもかねめのものがないからってわけじゃない。そもそもそんなつもりはない。
ぶようじんだなって思っただけで、そんな悪いことは考えてない。
「……一人で、か」
まどの外を見る。周りには、特になにもない。向こうに森があるけど、他の家とかは見当たらない。
ここで、一人で……あの人は、暮らしているのか。
さびしいとかは、ないんだろうか。
「……ん?」
まあ私には関係ないこと……と思っていたら。
まどの外に、キラキラと光るものを見つけた。それは、ふわふわと浮いている。
なんだろう。きょうみが出てきた私は、まどを開ける。
「んんーっ」
身を乗りだして、手をのばす。でも、全然足りない。
この身体、小さいなー。まあ、あの人くらいの身長があってもあの光にはここからはとどきそうにないけれど。
この家で、じっとしているように言われていたけど……ちょっと出るくらい、いいよね。
「そーっと、そーっと」
家には私以外誰もいないとわかっているのに、ついそーっとしのび足でげんかんに向かってしまう。
扉をあけると、外へととび出す。
「……わぁ」
そのしゅんかん、ぶわっと光が広がった気がした。
それは、さっきの光じゃなく……太陽の光だ。
まるで、これまでずっと暗闇の中にいたのではないか……そう思えるほどに、全身に浴びた光はまぶしくて。
でも、とても心地よくて。
「……あっ、さっきの」
つい目をつぶってしまったけど、開く。
さっき見かけた光を探していると、いた。ふわふわと浮いている光が、ゆらゆらと動いている。
なんだろう……すっごい……
「きれい……」
初めて見るはずのそれに、私はどうしようもなく心を惹かれ……いっぽいっぽと近づいていく。
光は、私に気づいているのかいないのか。逃げることなく、かといって私に近寄ってくるでもなく。その場に止まっていた。
そして、手をのばせばふれるんじゃないか。そんな距離にまで近づき、私は足を止めた。
「あなた、だぁれ?」
『――――――』
「……せいれい?」
その声は、なんだろう。まるで、頭の中にちょくせつ……聞こえた。
あの人の言葉のように、耳で聞くのではない。頭の中に、声が聞こえるんだ。ひょうげんするのが、むずかしいけど。
でも、ふかい感はない。それどころか、あたたかい感じがする。
「せいれい、さんは、ここでなにしてるの?」
『――――――』
私のしつもんに、せいれいさんは答えてくれる。頭の中に声が聞こえるたいみんぐで、せいれいさんはキラキラと光が増すのだ。
私に対して、好意てき……ってことかな。
初めて話すはずのそのせいれいさんに、私は気持ちがたかぶっていくのを感じた。
「そっかー、ここってせいれいさんにとって住みやすい場所なんだね? 私はねー、記憶がないんだって。だから、ここでおとなしくしてるの。私をひろってくれた人が、私の手がかりを探しに出かけてるんだよ!」
『――――――』
「それは大変……そうなのかな。自分のこともなんにもわからないから、そうなのかも。でも、ふしぎとあせりとかはないんだー。なんにもわからないから、きき感とかないのかも」
頭の中に聞こえてくるのは、男の人のような、女の人のような。子どものような、大人のような。そんなふしぎな声。
私の話し相手になってくれたせいれいさんは、私の言葉にいちいち反応してくれた。
それがうれしくて、楽しくて、私は自然と笑っていた。
思えば、目がさめてからいっかいも笑ってなかったかも。
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