史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
994 / 1,198
第十三章 黒髪少女の軌跡編

981話 名前

しおりを挟む


 それから、きんぱつの人がかえってくるまでせいれいさんと話しつづけた。
 家の中でじっとしているように言われたから、かえってくるまえに家の中にもどるつもりだったけど……お話にすっかりむちゅうになっていた私は、すっかり忘れてしまっていた。

「! 外に出て、なにをしているんだ?」

「あ」

 だから気づいた時には、かえってきたきんぱつの人に声をかけられたところだった。
 私はおこられると思って、カタカタとふるえてしまった。

 そんな私の気持ちをさっしてくれたのか、きんぱつの人は「ぷっ」と笑った。

「別に怒らないよ。私も言い方が悪かったな……家から出ていけないわけじゃないんだ。ただ、勝手に動き回ったら危ないかと思って」

「ご、ごめんなさい……」

「謝る必要はないよ」

 私がかってなことをしてしまったのに、きんぱつの人はおこるどころか笑ってゆるしてくれた。
 やっぱりやさしいな。なら私も、ちゃんとしつもんには答えないと!

「あのね! まどの外を見てたら、きれいな光が見えてね……外に出たら、せいれいさんだったの!」

「……精霊?」

 身振り手振りで、なんとか伝える。かってに外に出たのは悪いかもしれないけど、私はべつに悪いことをしていたわけじゃないんだ。
 となりのせいれいさんを指さして、この子と話していたのだとあぴーる。

 するときんぱつの人は、あごに手を当ててなにやら考えこんでいた。

「キミは……精霊が見えるのかい?」

「? うん」

 なにを考えているのかと思ったら、ふしぎなことを聞いてくる。
 見えるもなにも、こうしてちゃんととなりにいるし、お話だってできている。

「それで、さっきまでお話していたんだよ!」

「……驚いたな」

 おどろいた……? なにに対してだろう?

 するときんぱつの人は、私と私のとなりに浮かんでいるせいれいさんとを交互に見た。

「精霊は、誰にでも見えるわけじゃないんだ。魔導の素質がある者……それも、たいていの人間は自らの魔力を高めて初めて精霊を認識できるようになる。
 初めから精霊が見えて、しかも話までできるなんて」

「? えっと、いけないことだった?」

「とんでもない。すごいことで、驚いていたってだけだよ。キミには素質があるんだね」

 ……そしつ、とかそういうのはよくわかんないけど、せいれいさんと仲良くしても問題ないってことだよね。
 よかったぁ。だめだって言われたらどうしようかと思った。せっかく仲良くなれたんだもん、もっと仲良くなりたい。

 ほっとしたのは私だけじゃなくて、どうやらせいれいさんものようだ。私たちは、しぜんと笑った。

「精霊を見ることができ、話もできて……なにより、精霊が好いているように見える。そういう体質なのか……記憶を失う前からそうだったのか……」

 なんだか、きんぱつの人はぶつぶつとむずかしそうなことをつぶやいている。

「だれにでも見えるわけじゃない……って言ってたけど、きんぱつの人は見えるの?」

「ん? あぁ、もちろん。これでも、精霊とはわりと仲良くやって……って、きんぱつの人? それって私のことかい?」

「うん、名前おぼえられなくて」

「……」

 きんぱつの人は、なにやらしぶい顔になって、頭をかかえた。
 どうしたんだろう。頭痛いのかな?

「グレイシア。グレイシア・フィールドだよ、言ってごらん」

「ぐ、ぐれ……ぐれっしあ、ふぃんがー?」

「全然違う」

 ずーん、と落ち込むきんぱつの人。
 名前をまちがえられたんだ、それもとうぜんなのかもしれない。私にはおぼえている名前すらないけど。

 でも……ほんとうにむずかしいんだもん。長いし、おぼえらんないよ。

「なら、あだ名とかどうだろう」

「あだな?」

「そう。名前が覚えにくいなら、特徴的な印象から覚えやすい単語を言ってみて」

「きんぱつの人」

「……」

 またもずーん、と沈むきんぱつの人。だめだっただろうか。
 でも特徴的なのってきんぱつだし。あとはみどりの目とか、とがった耳とか……

 うーん……

「ま、まあ名前を覚えるか、ゆっくり考えてくれよ、エラン」

「……えらん?」

「あ」

 出てきた名前……らしきたんごに、きんぱつの人ははっとした様子で口元をおさえた。
 でも、聞いちゃったことばは取りけせない。

「えらんって、だれ? ……もしかして、私?」

「……ごめん、嫌だったかな」

 なぜか、ふくざつそうな顔をしている。こういうの、ばつがわるそう……って言うんだっけ。
 いやかどうか、って。たしかに、いきなりそう呼ばれてへんな気分だったけど……

 ふしぎと、いやじゃなかった。

「ううん、すてきな名前だと思う!」

「……そっか。なら……キミのこと、エランと。そう呼んでもいいかな?」

 すてきな名前……そう聞いたしゅんかんのきんぱつの人のひょうじょうは、きっとずっとわすれることはないだろう。
 うれしそうな……だけど、どこか悲しそうでないちゃいそうな。そんな顔だった。

 それに、どんな答えをのぞんでいるのかはわからないけど……私の答えは、一つだった。

「うん、もちろんだよ!」

 そう言って、笑った。うまく笑えていたかはわからないけど……私の答えを聞いて、きんぱつの人もうれしそうに笑っていた。

 えらん、えらんか……なんだか、すごく好きだな、この名前!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。 「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」 周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。 アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。 ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。 その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。 そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!

夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。 彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。 価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い! これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

処理中です...