3 / 20
ダンジョン創造者とダンジョン攻略者
第3話 ダンジョンを攻略する冒険者クレナイ
しおりを挟む冒険者クレナイ。それが彼女の名前だ。クレナイと聞いてパッと思い浮かぶのが、赤色の紅だ。
クレナイというのが、俺の知っている意味と同じとはわからない。が、名は体を表すというやつか、髪の色は赤い。ので勝手に紅とイメージしている。
そもそも、クレナイというのが彼女の本名かもわからないのだがな。
そんな彼女は、一人だ。基本、ダンジョンには複数人でパーティーを組んで挑むのが定石とされている。
それを彼女は、一人で……これまで……
「今のセリフ、果たして何度目でしょうねぇ」
「やかましい」
くっ……痛いところを突きやがって……!
悔しいことに、俺は今の言葉を吐くのが初めてではない。何回も……クレナイが訪れる度に、言っている気もする。
いや、忘れろそんなこと。今に見ていろ。今回こそ……!
「よし、そこだいけ! そのトラップにかかれ……あぁ、そんな!
いや、まだダンジョンモンスターがいる……あ、そんなあっさりと……
あ……あぁ……」
用意したダンジョン、そこに設置されたトラップやモンスターは、容赦なくクレナイに牙を剥く。これまで何人もの冒険者を弾いてきたのだ。
それを……クレナイは、ものともしない。トラップを、モンスターを、なにもかもをあっさりとクリアして……
ついにダンジョンの最奥へと到達して……ダンジョンボスをも倒して……用意されていた、宝箱を開けた。
「あぁー!」
「またクリアされちゃいましたねぇ」
俺は、頭を抱える。ラビは、軽くため息を漏らす。もはや、このやり取りも何度目だろう。
まただ、またこの女は……俺のダンジョンを、あっさりとクリアした……!
『鮮やかなお手並みお見事!』
『クレ様こっち見て! 手ぇ振って!』
『てかこのダンジョンがしょぼすぎたんじゃね?』
『それはないだろ、何人も冒険者が脱落してるし』
『じゃあやっぱりクレたんが最強ってことじゃん!』
『今日もいい酒が飲めそう』
『さすがおれたちのダンマス!』
流れる、コメント欄……みんな、各々勝手にコメントを打っているはずなのに、一部会話みたいになっているのが不思議だ。
これがリアルにしろ、ゲームにしろ、視聴者には関係ない……好きなことを言うだけだ。だがこれがリアルと知っていて、作ったダンジョンを攻略される俺の負った傷は深い。
俺が、冒険者クレナイを天敵と呼んでいる理由。それは、クレナイが迷宮攻略者と呼ばれている人物で……
俺の作り出したダンジョンを、ただの一度もミスることなく、次々と攻略していく女だからだ!
「……クレナイ……!」
……クレナイという名の、赤き冒険者。初めて彼女の名前を知ったのは、彼女を知る誰かが彼女に、クレナイと呼びかけたときだ。
彼女のことを目にしたのは、いつのことだったか……はじめに見たときには、きれいな女性だと思った。燃えるような真っ赤な短髪。キリッとした鋭い目、そして左頬に刻まれた刀傷。
傷があっても、その美しさが損なわれることはなかった。むしろ、傷があってこそ彼女の気高さが完成されているようで。
だが、相手が美人だからって、俺のやることは変わらない。冒険者にとって難しめのダンジョンを設定し作り、それを苦悩の末クリアしてもらう。
今回の相手も、すぐに弾き出されてしまうだろうと思った。
その結果は……
「な……にぃ……!?」
……俺の作ったダンジョンは、クリアできない設定ではないが何度も挑めば、いつかはクリアできるものに設定してある。
もちろん、初見でクリアする者もいる。だがそれも、名だたる冒険者を含んだ複数人でパーティーを組んでいる場合だ。単体ではまずない。
クレナイという冒険者など、それまで聞いたことがない……それも、クレナイはたった一人。
パーティーを組んでいないし、ましてや初ダンジョンだ。少なくとも、俺が作ったダンジョンは初めてだ。
そんな、女に……俺のダンジョンは、あっさりとクリアされた。
「な、なぁに。まあ、こういう日もあるさ」
しかし、ダンジョン攻略というのは実力と、そして運が作用する。
実力は確かにあったが、今回は、クレナイがそれ以上に運を持っていたというだけの話。それだけだ。初見かつ一人でクリアする冒険者だって、いないわけではないのだ。
……そう、自分に言い聞かせ。
数日を置いて、俺が作った別のダンジョンに挑む者があった。クレナイだ。
俺は、自分が作ったダンジョンならばどこであろうと、その内部を見ることができる。なので、この空間全体にあるモニターはダンジョンの数だけ、ダンジョンはモニターの数だけ存在する。
逆に言えば、ダンジョンの外の状況は一切わからないのだが。
ともあれ、再び挑んできたクレナイ。このダンジョンも、冒険者の中ではそれなりに難関だと有名だ。
次こそ、クレナイに一泡吹かせてやる。
……しかし、あっさりとクリアされてしまった。
「な……ぁ……!」
偶然、偶然だ。偶然に違いない。
なぁに、次だ次。三度目の正直という言葉もある! 次こそ、クレナイをギャフンと言わせてやる!
……三度目の正直どころか、二度あることは三度あるだった。三度、ダンジョンは攻略された。
0
あなたにおすすめの小説
スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~
名無し
ファンタジー
主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる