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第四章 激動の体育祭!

第132話 濃すぎるチームメンバー

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 競技が始まる前にダウンしてしまわないだろうか。そんな心配に陥ってしまう。
 なんとも濃すぎるチームメンバー。中にはまともなのもいるだろうが……

 ロリコン野郎と筋肉ナルシストのせいで、キャパオーバーである。

 ……であるというのに、だ。もっと大きな問題がある。

「はあ……」

「おいおい、なにため息なんて吐いてんだ? 幸せが逃げるぞ?」

「……今この瞬間に、幸せなんてものは全速力で逃げましたよ」

 筋肉の抱擁から解放され、ほっと一息……かと思いきや、今回の心労の原因第一位がやってくる。
 顔を上げると、そこにいたのは大きなトサカ……ではなく、ちゃんとした人間だ。

 身長と同じくらいの長さの、赤と黄色が混ざったトサカ(本人曰くモヒカン)が、とても印象的である。
 むしろそれにしか目がいかない。

 おいここは高校だぞ? お前は先生なのか?
 そう言いたくなるほどに、おっさん面した男、蛾戸坂 鶏冠がとさか とさかがそこにはいた。
 通称トサカゴリラ(達志命名)。

(……いや、マジでなんでだよ)

 以前、この学校に対して、テロ行為を起こした暴走族族のリーダーだ。
 テロとはいっても、結果は散々。学校の生徒に返り討ちにあい……果てに、学校側に拘束されたはずだ。

 なのになぜ、ここにいるのか。

「あっはっは、こらこらトサカ、あんまりいじめてやるなよ。ただでさえお前の面は犯罪的なんだから」

「いや、いじめては……って誰が犯罪的な面だこら!」

「そうですよ先輩。その面をしまってもらえないと、小さなつぼみたちが泣いてしまう」

「うるせえよ! 誰だお前!」

 答えは、彼がこの学園の生徒だから。しかも達志の先輩で、ノーベルトと同じクラスだという。
 どうやら、体育祭前に釈放されたらしい。

 そして物怖じしないロペ……気を失いそうな光景だ。

「顔合わせで見つけた時には、頭がどうにかなりそうだった……テロの主犯だぞ」

「まあテロって言っても、学校側としちゃあの程度なんの問題もないってことだよねー」

 なにそれ怖い。あれくらいの騒ぎは、大騒ぎするほどでもないってことだ。

 問題は問題だと思うが、それでも生徒である以上、こういった行事には出すということなのだろうか。
 本番前の、チームの顔合わせでトサカゴリラを発見した時は思わず、自分の頬をビンタしたほどだ。

「けど……アレに敬語なんて使いたくないんだけど。小宮さん、アレタメ口じゃダメかな」

「や、一応先輩なんだからその言い方は。あ、蘭花でいいよ勇界くん」

「あ、じゃあ俺も達志で……」

「お前ら失礼すぎだろ、アレだのタメだの! 俺先輩だぞもっと敬え!」

 数少ない癒し要素、蘭花と友好を深めていたのに、無粋な声が割り込む。
 敬ってほしいなら、そもそもあんな騒ぎを起こさないてほしかったのだが。

「いや敬ってほしいなら行動で示してみろよトサカゴリラ先輩」

「んだと!? そもそもお前、初対面の時に俺のこと散々笑いやがって気にいら、ね……」

 久しぶりに、思っていたことが口に出てしまった。それも、敬語とタメ口二:八くらいの割合で。
 それを聞きつけたトサカゴリラがやってくるものだから、さあ面倒なことになるぞ。

 怒鳴り散らされ、とりあえずはおとなしく身構えていたのだが……徐々に語尾が弱くなり、しまいには口をつぐんでしまう。
 暑いのだろうか、汗までかいている。そんな面で怒るからだ。

「?」

 達志は訳が分からないが……
 ……それはそうだ。達志には見えないところで、事は起こっていたのだから。

 トサカゴリラの正面……つまり達志の背後で、リミがものすごい笑顔を、トサカゴリラに向けていたのだ。
 それを受け、トサカゴリラの脳裏には、リミに手ひどくやられた記憶がよみがえる。

 それは笑顔であった……間違いなく笑顔で、こう語っていた。

『それ以上タツシ様に無礼を働いたら、ぶっころですよ? せ、ん、ぱ、い』

「……」

 表情からすべてを読み取ったトサカゴリラは、そのまま何も言わずに、達志に背を向け去っていった。

 とにもかくにも、体育祭は開催された。
 達志が所属する赤チーム、不安しかないメンバーばかりであるが、それも運命として受け入れて、頑張るしかないだろう。

 とりあえず一番警戒すべきは、リミとルーアがいる、緑チームだろう。
 魔法の使用アリアリの体育祭では、単純に考えて……魔法の威力がずば抜けて高いあの二人が一緒のチームにいる時点で、充分な警戒に値する。

 ……とはいえ、ルーアの場合は魔法の威力制御が効かないために、眼帯で魔法使用を封印している。
 そのため、制御の効かない魔法をぶっ放すとは思えない。そんなに警戒しないでもいいだろう。

 あと、身体能力自体はそんなに高くない。

 最も警戒すべきは、やはりリミ。
 魔法の実力は言うまでもないが、柔道部主将であるノーベルトを軽々しく投げ飛ばした身体能力は、恐ろしい。

「ま、それもチームの協力プレイで乗り越えていきたい……んだけどなあ」

 果たして、この奇天烈メンバーが共に協力し合うことが、できるのだろうか。
 正直不安しかないわけだが。
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