死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、軌跡を辿る

王都への道行き

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「旅は、初めてか?」

「は、はい」


 旅の道中、リデューダさんは俺を気にかけ、ちょくちょく話しかけてくれた。不安でいっぱいだった俺にとって、それはなんともありがたいものだった。

 もちろん、リデューダさんだけでなく他の兵士たちも同様にだ。見た目は鎧を着てゴツゴツしているが、話せばいい人たちだ。

 多分、俺が【勇者】だからというのとは関係なしに、優しい人たちなんだろう。


「しっかし、大丈夫か坊主。そりゃ俺らとしては、坊主を連れて帰るのが仕事だけどよ……」

「モンスターどころじゃねぇ、恐ろしいんだぜ魔族ってのは」

「お前たち、あまり怖がらせるなよ」


 兵士の人たちから見れば、俺はまだ子供だろう。それに、平民だ。だというのに、気軽に話しかけてくれる。

 だが聞くところによると、兵士のほとんどは平民からなった人たちらしい。貴族は、リデューダさんのようにもっと上の立場になるか、そもそも兵士にはならない。

 また、貴族だからって兵士長になれるわけじゃない。リデューダさんがそれだけ、強くカリスマ性があるからだ。女性で、貴族なのに兵士になっている上で兵士長なのはすごいことなのだ。


「リデューダさん、俺のことは、事前にわかっていたんですよね」

「正確には、【勇者】の『スキル』を現れる者……だ。近く、【勇者】の『スキル』を持つ者が現れる日の、予見があった。そして、王国での【探知】の『スキル』を使い、【勇者】を持つ者を迎えに来たんだ」


 リデューダさんたちが、俺が『スキル』を授かってわずか数日で現れたことは、事前に【勇者】が現れることを知っていたからだ。

 場所まではわからなくても、日付と、【探知】により位置さえわかればすぐに向かえる、というわけだ。

 【探知】とは、特定の『スキル』を探すことのできる『スキル』。王国には、いろいろな聞いたことのない『スキル』を持った人が、いるのだ。


「ここから数日ほどかかる。キミを安全に届けなければならないからな、長旅になるが我慢してくれ」

「はい、よろしくお願いします」


 リデューダさんたちの目的は、俺を王都へ連れて行くこと。だから、より安全に移動する。そのため、普通に移動するよりも時間がかかってしまう。

 また、道中ずっと平和なわけではない。モンスターや野盗が襲ってくることもある。まあ、これだけの兵士を見て襲いかかってくる野盗なんてほとんどいないか、いてもバカだが。

 そうした妨害もあり、たいした障害ではないとはいえ対処には多少の苦労はあった。俺も戦おうとしたが、無事に送り届けなければならない彼女らには聞き入れられず。

 旅の途中、自分の現在の腕を試したかったが……うまくはいかず、結局俺は馬に乗ってるだけ。何日かの野宿を終え、旅は続いていく。


「ロア、大丈夫か? 疲れてないか?」

「はい、大丈夫です。リデューダさんたちこそ」

「我々は鍛えている。これくらいは、なんともないさ」


 兵士は、普段は王族を守ったり、戦争がある場合は戦いに身を投じる。冒険者という職業があるが、それには手に負えないモンスターを対処したりもする。

 いわば、国のために身を捧げた人たち、だ。


「! 見えたぞ、あれが、ファルマー王国だ!」


 村を出て数日、ついに目的地であるファルマー王国が見えた。

 大きな国だ。丸く、高い壁に囲まれている。カルボ村と似た構造ではあるものの、大きさも質も全然違う。

 岩を高く積み上げた壁は、モンスターがたとえ群れで突っ込んできてもびくともしないだろう。正面に堂々ある大門、鉄の硬度を誇るそれは、門番の許可なく通ることはできない。

 そして、この位置からでも見える……王族の住む、城。たてもの中でも一番高く、白い外壁はその綺麗さを表している。


「ファルマー王国に来るのは初めてだったな……緊張することはない。堂々としていろ」

「は、はい」


 ついにたどり着いた、ファルマー王国……この場所で、俺は勇者としての第一歩を、歩むこととなる。
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