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死に戻り勇者、軌跡を辿る
仲間たちと国王との出会い
しおりを挟む国についた俺は、リデューダさんの案内の下、城へと向かうことに。
国の中……王都は、やはり故郷の村とは全然違う。建物の数も、人の数も、場所自体の大きさも。
「ロア、これから国王と会ってもらうが……あまり、緊張しなくても大丈夫だ。呼び出したのは、こちらなのだからな」
「はい」
王都をキョロキョロと見回している俺に、リデューダさんは声をかける。どうやら、物珍しさから周囲を見回し、緊張をほぐしていると思われたようだ。
正直、前世の俺はそうだった。初めて訪れた王都、湧き上がる緊張感をごまかすために、周囲の景色を見ていた。
まあ……前世ほどではないとはいえ、今も緊張していないといえば嘘になる。なぜなら……
「……このあと、会うんだからな」
自分の口の中で、そっと呟く。そう、このあとには、国王に会う……だが、会うのは国王だけでは、ない。
今後、行動を共にすることになる……五人の仲間と、出会うことになるのだ。
「さ、ついたぞ」
城にたどり着き、中へと案内される。長い廊下を歩き、王の間へと向かう。
そして、王の間へと案内され……大きな扉を、開いて中へと入る。
そこには……
「……!」
大きな部屋に、何人かの兵士がいる。その他にも、鎧を着ていない人間が数名……見覚えのある、顔だ。
一番高い位置にある、玉座には誰も座っていない。
「すみません、国王様はもうじき、お着きに……」
「おいおい、いつまで待たせるってんだよ?」
頭を下げるリデューダさん。そんな彼女に、荒々しく声をかける男がいた。
その男は、部屋の柱に、もたせて腕を組み、こちらを見ていた。
「申し訳ない、ゲルド殿」
「ケッ。……よぉ、お前が【勇者】の『スキル』持ちか……カハハ、しけた面した平民だな! 俺ァゲルド・アールボート。ま、仲良くしようや平民勇者!」
腕を組みながら、俺を値踏みするように全身を見つめてくるこの男……短めの茶髪を撫でつけ、一目見ただけではまるで強盗かなにかかと間違えそうになる凶悪な顔立ち。
実際、初対面の俺は強盗、いや殺し屋かと思って震え上がったものだ。だが、話してみると口は悪いが、気はいい奴なのだ。ゲルドという男は。
……そして、前世で俺を、刺し殺した男。その『スキル』は、【鑑定眼】。対象がどんな『スキル』を持っているか、見ることが出来るらしい。
それだけでなく、生物の『急所』つまり弱点をも看破する。その『スキル』があったからこそ、【勇者】の恩恵で体が頑丈なはずの俺は、あっけなく死んでしまった。
その『スキル』だけならば攻撃用ではない。だが、ゲルドは本人の身体能力も高く、素で魔族と渡り合えるほどだ。
「ゲルド、平民だからと下に見るのはよせ、お前の悪い癖だぞ」
「へいへい、かるーいジョークだろうがよお堅いねえ」
「すまんな、初対面でこのバカが」
「いえ」
ゲルドをたしなめ、俺に謝罪する大柄の男。鍛え上げられた筋肉は、見掛け倒しではないことを俺は知っている。
「ドーマス・カルローだ。よろしく頼む」
ドーマスさんは、このパーティーの年長者。妻子持ちの、頼れるお兄さんといった感じだ。いや、お兄さんよりお父さんのが近いか?
彼の『スキル』は【獣化】。元々筋骨隆々な男だが、性格は穏やか。だが【獣化】すればその凶暴性は増し、力も増す。さらに、気配の察知能力が上昇し嗅覚も鋭くなるため、索敵にうってつけなのだとか。
本人曰く、『スキル』の影響か【獣化】していなくても、ある程度は鼻が利くとのことだ。
会釈したあと、彼の斜め後ろへと目を向ける。
「……ミランシェ・ザールハルトです」
そう、短く自己紹介するのは、クールな長身の女性だ。俺よりも年上だからか、やたら落ち着いた雰囲気。そうそう、初対面の相手には、必要以上の興味は持たないんだよな。
彼女の『スキル』は【百発百中】。投石でも、弓矢でも、自分が放ったものはなんであれ対象に百パーセント命中するというものだ。
そんな彼女の後方支援には、何度も助けられた。
彼女は冒険者であり、そのためか結構勘が働き、実力もある。この国には冒険者という職業があるのだが、まあそれは追々。
さらに彼女は、『精霊師』だ。精霊師というのは、この世に存在する精霊と対話することができる人のことだ。『スキル』は誰にも平等に与えられることとは反対に、精霊と対話できるのはある程度の素質が必要なのだ。
「……」
……そして、この場においてひときわ、異彩を放つ人物がいる。そこにいる人物こそが……
「よろしくお願いいたしますね、ロアさん。私はシャリーディア・ラー・フランツェルと申します」
「よ、よろしく」
そこにいたのは、とても美しい女性……あまりに美しすぎて、劣情を抱くことすらためらわれるような、それほどまでに輝いている存在だ。実際、彼女のファンは何人もいるが、告白する者はいないらしい。
『スキル』【癒やしの力】……回復術師である彼女も、勇者パーティーの一員だ。名を、シャリーディア。教会の神官、それも大神官という位置にいる。
神官は基本的に回復系の『スキル』持ちしかなれない。その中でも、シャリーディアは特別に力が強いのだという。俺と同い年にして、神官よりも位の高い大神官という地位にいるほど。
「ふふ、緊張なさらなくても、大丈夫ですよ」
『ラー』とは、この国で神を意味する言葉……だから、神官となった者にはこの名が授けられるのだ。
教会の衣装なのだろうか、白い修道服のような衣装は、彼女に似合っている。
さらに彼女は、『精霊術師』だ。精霊術師とは『精霊術』を使うことのできる希少な存在。精霊術とは、精霊の力を借り使うことのできる、超常の力のこと。
火の精霊、水の精霊、風の精霊……といったように、様々な精霊の力を借りて、術を使役する存在。
精霊師との違いは、もちろんある。それは……
キィ……
「すまない、待たせたな」
そこへ、扉が開く。入ってきた人物に向け、兵士たちは頭を下げる。リデューダさんも、例外ではない。
威風堂々とした、人物。刻まれたシワや白くなった髪は、どこか威厳すら見せるほどに、その人物の佇まいは素晴らしい。
彼こそが、このファルマー王国の国王である、ザラドーラ・マ・ファルマーである。そして、彼の足元には、一人の女の子が隠れるように立っていた。
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