死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、軌跡を辿る

モンスターと魔族について

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 ……息抜きの休日。それは、時折設けられた。もちろん、毎回出掛けるわけではないが、休みの時間も必要だからとちゃんと気遣ってもらえている。

 普段は、訓練の日々……だが、訓練ばかりの毎日、というわけではない。

 体を使う日もあれば、頭を使う日もある。今日のように……


「えー、では今日は、モンスターと魔物の違いについて、説明していく」


 俺たちは、とある部屋に集められ、席についている。前にいるのは、一人の老人……いろいろと教えてくれる、言ってみれば先生のようなものだ。

 名を、ワニ・ニーマ。見た目は若々しいのだが、その実七十を超えているというのだから驚きだ。


「よろしくおねがいしまーす!」


 と、元気よく手を上げるのは、リリーだ。普段は、リリーの家庭教師という形で彼女と接しているらしい。

 リリー曰く、いい先生。それは、俺も接してみてわかった。


「はい、よろしく。えー、まずは前回の復習だが、魔族の中でも獣に近い姿をしたものを魔物と呼ぶ。これはよろしいかな?」

「はい!」

「うむ。獣と言えば、まずモンスターが頭に浮かぶだろう。だが、モンスターと魔物とではまるで意味合いが違う」


 元気なリリーに返事は任せ、俺たちは真面目に話を聞いていく。

 ……まあ、ゲルドは退屈そうにあくびをしているし、ミランシェも態度にこそ出さないが知っている知識だ。ドーマスさんも、知っているはずだが真面目に聞く姿勢は、見習いたい。

 とはいえ、俺も前世に聞いたことのある授業だから、知っていることではある。

 それでも、改めて聞いておいて損はない。


「見た目で判別するのは、そう難しくはない。魔物は、みな一様に黒い色をしている。中には、黒い靄(もや)のようなものにつつまれたものも。そして、その瞳は赤くぎらついている」

「それは、どうして?」

「残念ながら、理由はわかっておらん。共通しているのは、みな凶暴ということ。そして、一番の違いが、死体だな」


 モンスターと魔物、見た目の違いで判別するのは簡単だ。間違って、モンスターを倒してしまう心配がないのは、ありがたい。

 そして奴らは、モンスターよりもはるかに凶暴だ。以前俺の村を襲ったコアウルフなんかよりも、よっぽど。


「モンスターは死ねば死体がその場に残る。当然だな、生き物なんだから」

「……」

「だが魔物……いや魔族は違う。……死んだら、消えるのさ。その場には、なにも残らない」

「なにも?」


 そう……魔族は、死んだらその場にはなにも残らないのだ。その理由は、やはりわかっていない。

 死体の処理を必要とするモンスターと違って、その処理を必要としないのが、いいことなのか悪いことなのかは、わからない。

 モンスターの中には、生き残るために死体を食べるものもいる。それは、生物の本能だ。だが、それがない魔族を、果たして生物と呼べるのか……


「不思議じゃろうが、な。これが、モンスターと魔族の、大きな違いじゃ」

「そっか……なんか、ちょっと怖いね」

「どうせガキは魔族と戦うことなんてねえんだ、気にすることでもねえだろ」

「むぅ、ゲルド兄ちゃんきらい!」


 ……ゲルドの言葉は、ある意味真実だ。というか理想だ。【絶対防御】のリリーは、後方支援の支援……戦いの場にはいても、本来は戦いに参加しないポジションだ。

 リリーが戦いに参加するということは、それだけパーティーが追い詰められるということを意味する。

 そんなことにはさせてはならないし、前世ではならなかった。だが、油断は禁物だ。

 ゲルドは、そういった意味を込めてもいるのだろうが……リリーは、お子様扱いされたと思ってしまったようだ。


「基本的に、獣の姿をしたものを魔物。それ以外……主に人の姿をしているものを、魔族と呼ぶ」

「人の姿……」


 魔族とは、どこから現れるのか、どこに消えるのかもわからない。だが、わからないことも多いとはいえ、これだけのことがわかっているということは、過去にも魔族が現れたことを意味している。

 今後も魔族が現れる可能性は、ゼロではない……うん、この情報で、俺を殺そうと指示した王子に訴えかけるのも、ありだな。

 ああいうタイプって、基本今後のことよりも、目先のことしか考えていないしな。魔族再来の可能性に気付いていないってことも考えられるか。
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