死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、軌跡を辿る

いよいよ旅へ。さらば国王

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 リリーの『スキル』が発現し、数日が経過した。リリーは【絶対防御】を難なく使いこなし、様々な応用を加えていった。

 自分及び仲間を守る壁……それを防御だけでなく、攻撃へと転換する方法。壁の作り出せる範囲、大きさの最大値等々……こちらからなにを言うでもなく、自分からそれらを考え、使い道を広げていった。

 俺たちは、元々この三年間で『スキル』との付き合いを深め、力を上昇させるつもりだった。なので、『スキル』が発現したばかりのリリーが、思った以上に『スキル』とうまく付き合い、力をつけていったことで……

 ついに、国を出る日がやってきた。心身ともに鍛えられ、『スキル』の使い方や仲間たちとのコンビネーション、それらを完成させた。


「今日が、旅立ちの日か……長いようで、あっという間だったな」


 と、感慨深げに告げるのは国王。国王は、俺たちにいろいろと便宜を計ってくれた。生活費の補助、訓練場の貸し出し、魔物の拘束……俺たちに頼り切る以上、出来ることはやると言ってくれた。

 そのおかげで、俺たちも気兼ねなく、訓練に励むことができた。


「お世話になりました、国王様」

「よしてくれ。礼を言いたいのはこちらだ」


 俺たちを代表して、シャリーディアが先頭に立ち、頭を下げる。その礼は、見ているだけで惚れ惚れするほどの所作だ。

 それを見て国王は、苦笑いを浮かべる。


「こちらができるのは、サポートだけ。本番は、そなたたちに任せてしまう形になる。心苦しいがな」

「国王様……」


 俺たちに全てを任せることを、心苦しく感じてくれている国王。まさに、人格者だ……こういう人が、ずっと国を納めてくれればと、思う。

 だが……現実は、非情だ。


「お祖父様……」

「リリー……」


 別れを惜しむように、抱き合う祖父と孫……国王とリリーの姿は、微笑ましいものだ。だが、俺の目には悲しく見えた。

 なぜなら、これは一時の別れではない……今生の別れと、なるのだから。

 前世で聞かされた、国王の病死。それは、俺たちが旅に出て、帰ってくるまでの一年の間に起こった出来事だ。


「……」

「どうしたロア、そんな真剣に二人を見つめて」

「! あ、いやなんでも」


 見た限り、今国王は元気だ。俺たちを見送るときは、元気だったのだ。それが、この一年で急に……

 俺だけが、この後の結末を知っている。国王の病死……果たしてそれを、みんなに話してもいいものか。変なやつだと思われてでも、話したほうがいいのだろうか。リリーに悲しい思いを、させないために。

 ……なんて話す。あなたは一年の間に命を落とすので、気をつけて? バカな……どうしてそんなことを知っているのか聞かれるのがオチだし、死因が病気なら、気をつけたところで……

 それに……そのつもりなら、もっと早く、話している。


「……」


 それぞれが、挨拶を済ませている。俺は結局、迷い……前世の展開を変えることを、拒んだ。

 俺の口から伝えたことにより、もし国王が生き延びた場合……俺を殺す指示をした王子は、王の座にはつかない。そうなった場合、どこで命を狙われるか、わからない。前世の死を回避するには、前世と同じ展開になる必要がある。

 はぁ……結局俺は、自分の命が第一だって、ことか。


「ロア殿……よろしく、頼むぞ」


 最後、俺は国王の前に立つ。国王は柔らかな笑顔で、そう語りかけてくれる。

 俺の口から国王の病死を伝えるのは、抵抗がある……なら、せめてこれくらいなら……


「国王様……体には、充分、お気をつけて」


 国王と固い握手を交わし、それだけを、告げた。

 俺の口からは、言えないが……せめて、これくらいならば、いいだろう。結局のところ、俺は国王に生きていてほしいのか、死んでほしいのか、わからない。

 だが、前世とはすでに、数多くの違う展開が流れている。もしかしたら、今回は国王は病死しないかもしれない……

 そんな、淡い期待を抱きつつ……俺たちは、旅に出た。
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