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死に戻り勇者、軌跡を辿る
旅の中で成長していく物語
しおりを挟む「おらぁ!」
……ファルマー王国を旅立ち、初めて国を大きく離れることになった。もちろん、前世の記憶を含めなければ、だ。
国から離れれば、それなりにモンスターや魔物の数も増えてくる。とはいえ、魔物との戦闘訓練を積んだ俺たちに取っては、モンスターはさしたる障害ではなかった。
「ゲルド、モンスターは殺すなよ。むやみに殺しては、自然界に影響を与えかねないからな」
「へいへい」
モンスターは魔物と違い、むやみやたらと殺さない。できるだけ、追い払う方向に決めた。ドーマスさんの言うように、むやみに殺しては自然界のバランスを崩しかねないからだ。
無論、例外はあるが……基本的には、モンスターは追い払う。魔物は倒す、だ。魔物に比べれば、コアウルフなどであってもたいした障害にならない。
村でモンスターの群れに襲われた時を思い出す。あの脅威が、今は軽いもののように見える。あの時に、今の力があれば、あんなにも苦労しなくて住んだのに。
ちなみに、村を襲ったモンスターの群れ。さすがに全てを殺さず済ませることはできなかったので、何匹か殺すはめにはなってしまった。
「みんなすごいね。本当に私の出番あるのかな」
「大丈夫、リリーの力は絶対必要になるから」
今相手をしているのは、モンスターばかり。モンスター相手ならば危なげなく戦うこともできるため、今のところリリーの力は必要としていない。
とはいえ、今は必要としなくても、今後必ず必要になる。むしろ、今からリリーの力に頼るようでは、この先やっていけない。
「ずっとこの調子なら、楽勝なんだけどなぁ」
「それなら、私たちが集められ三年もの期間をかけて力をつけた意味もないだろう」
「モンスターと魔物じゃ、全然違うから」
みんな、魔物との戦いの経験を積んだからか、堂々としたものだ。
元々、ゲルドとミランシェはモンスターと戦ったことがあった。冒険者であるミランシェは、特に。ドーマスさんは昔、冒険者だったらしく何度か。
シャリーディアは基本的には教会や王都のみで暮らしているため、モンスターと接した経験はない。のだが、どうやら昔、モンスターと接する機会があったようだ。
リリーだけは、モンスターとも魔物とも戦ったことも会ったこともなかった。『スキル』が発現してからも戦うことはなく、どちらかといえば、どれだけ【絶対防御】で耐えられるか、耐久性を計っていた。
「っはぁ、そろそろ布団が恋しいねぇ」
「仕方ないだろう、こればかりは」
国を出て、もう何日と経った。その間に、人里を見つけることはできず、野宿が続いていた。
「ロアさん、大丈夫ですか? 疲れてません?」
「うん、大丈夫だよ。シャリーディアこそ」
「私結構、鍛えているので!」
旅に出て、常に屋根のある場所で寝られるわけではない。もちろん、野宿になることが多かったりする。
ある程度日が暮れると、動き回るのは危ないということで、野宿の準備をする。村など、人里があればそこで泊まれる場所を探す。
一日の終わりに、決まってシャリーディアは体の調子を聞いてくる。他のみんなにも聞いているし、俺だけ特別というわけではないのだろう。
「今日は歩きすぎて疲れちまったな。足でもマッサージしてくれねぇ?」
「自分でやっててください」
……ゲルドは、相変わらずだ。元気だな、ホントに。
リリーは最年少ではあるが、ここまで弱音を吐いたことはない。強い子だ。
野宿については、冒険者の頃の経験を活かしたミランシェが率先して、テキパキと動いてくれる。俺も前世の記憶を使えばある程度はできるが、俺がやるよりミランシェに任せたほうがよほど早い。
焚き火をしたり、テントを張ったり……就寝の時間になっても、各二名は起きて見張りをすることになった。
「私も、起きてる!」
と、初めのうちはリリーをどうしようかと考えていたが、リリー本人の要望により、見張りの要員に加えることになった。
まだ、モンスターを追い払って進むだけの日々だ……危機とは程遠い。だからか、どこかピクニックのような気分でも、あった。
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