54 / 263
死に戻り勇者、軌跡を辿る
ついにたどり着く先は
しおりを挟む「……わぁ」
「す、すごいですね。ここまでやるなんて……」
「ふぅ」
背後から、驚きに満ちた声が聞こえる。振り返ると、シャリーディアとミランシェ、その後ろに隠れるようにして、リリーが立っていた。
戦闘が終わり、安全となったために出てきたのだ。
「残る二体の魔族も、あっという間に……あななたち、本当に人間?」
「あははー、ミランシェは手厳しいな……」
残った二体の魔族……それらは、俺たちの敵ではなかった。
魔族にも徒党を組まれれば厄介だったが、三体の仲間が一気に減ったことで奴らは、混乱していた。その隙を突けば、簡単に倒すことが出来た。
一体一体は強力でも、やはり、このメンバーならばそこまで苦労は必要とせずに倒せる。
「にしても、あれだけ魔族が出てきたってことは、そろそろ本命も近いんじゃねえか?」
ゲルドも、そうやら同じことを感じていたようだ。ここに来るまでに、早くも数か月……長いようで、あっという間だったな。
本命は、すぐそこ。だが、今日はそこまで進まなくてもいいだろう。今日は出発してまだ時間は経ってないとはいえ、今までよりも力を使い過ぎた。
特に、リリーだ。『スキル』の力を使えなくなるほどに、消耗してしまった。
「まずは、リリーちゃんを休ませた方がいいですよ。私の【癒やしの力】はあくまで傷を治すだけ……集中力は、戻せませんから」
「わ、私なら大丈夫だよ」
「いや、あまり無理はしない方がいい。それに私たちも、こう見えて疲れているからな」
そう言って、ドーマスさんはどっかりと腰を下ろす。確かに、目に見えて疲れているわけではなくても、実際に疲労は溜まっている。
なんせ、あれだけの魔物の大群と戦い、続けて魔族ともやり合ったのだから。
「けっ、俺ァまだまだ余裕だけどな」
そう言うゲルドも、腰を下ろす。ああは言っても、この中で一番疲れているのはリリーを除けばゲルドだろう。
俺やドーマスさんは、『スキル』の力で身体能力は向上している。それは、体力の上昇も含まれる。
だが、ゲルドは素だ。あれだけ動いて、疲れないはずがない。
「そうね、少し休憩しましょう」
「はい」
ミランシェ、シャリーディアも続けて座る。みんな、リリーを気遣っているのもあるが、実際に疲れているのも事実。
それを見ては、リリーもゆっくりと座る。
「やれやれ、ひと段落だな。今日はこのまま寝れそう」
「おいおい、なにを抜けたこと言ってんだロア」
「冗談だよ」
このまま寝転がれば、さぞ気持ちいいことだろう。だが、そんなことをしている余裕はない。
少し休憩したら、ここを離れた方がいいだろう。考えたくはないが、また魔物の大群が押し寄せてくる可能性もなくはないのだ。
「ま、気を抜いていられないも事実だな。あれだけの魔物の大群、そして魔族を倒したとなれば、奴らも本腰を入れるだろう」
「魔物を消したのは魔族だけどな」
おそらく、魔族でも魔物を完璧に支配できているわけではない。そりゃ魔族の方が上位存在だし、多少は命令を下したりはできるだろうが……
しょせんは、知能のない獣だ。魔物は、ほぼ好き勝手に暴れているだけ。
両者の間に意思の疎通が取れてなかったのも、今回の襲撃を乗り切れた一端だ。
「他の魔族も、さっきの奴みたいにバカならいいだがな!」
「それはあまり期待しない方向でいきましょう」
そうして、今後の方針を固め数十分。魔物も魔族も襲撃はなく、精神的にだいぶ回復できた俺たちは、進む。
その先は、魔物の大群が襲ってきた方向だ。魔物の大群は、一方向からやってきた……ならば、奴らがやってきた方向には、奴らの根城があるということだ。
実にわかりやすくて、よろしいことだ。
「……見えた」
「あれが……」
それから、数日。魔物の襲撃、魔族の出現などあったが、それらは難なく乗り越えることが出来た。
そして、ついに見えた。眼前に見えるあの、大きな城が……魔王城だ。
1
あなたにおすすめの小説
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
氷の精霊と忘れられた王国 〜追放された青年、消えた約束を探して〜
fuwamofu
ファンタジー
かつて「英雄」と讃えられた青年アレンは、仲間の裏切りによって王国を追放された。
雪原の果てで出会ったのは、心を閉ざした氷の精霊・リィナ。
絶望の底で交わした契約が、やがて滅びかけた王国の運命を変えていく――。
氷と炎、愛と憎しみ、真実と嘘が交錯する異世界再生ファンタジー。
彼はなぜ忘れられ、なぜ再び立ち上がるのか。
世界の記憶が凍りつく時、ひとつの約束だけが、彼らを導く。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる