死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、第二の人生を歩む

再会パート2

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「…………」

「どうも、マーチさん?」

「……どうも」


 逃げられないと悟ったのか、観念した様子でマーチはうなずく。まさか、こんなところで再会するとは……!

 さぁて、どうしてくれようか。


「チマ兄、アーロさんと知り合いだったの? すごい偶然!」

「エフィ……なんで、彼がここに……」

「……チマ兄?」


 俺たちの事情を知らないエフィは、なんだか嬉しそうだ。それにしても、チマ兄だと?

 マーチが偽名の可能性は考慮していたが、それが本名か?

 そこへ、マーチは顔を寄せてくる。


「彼女には、いやこの村の人たちには私の事情は、知らせていません。どうか、あの件は内密に」

「……チマ兄ってのは?」

「……私の名前です。マーチは、とっさに出たデタラメの名前です」


 観念し、マーチ改めチマは話す。本名はやはり、チマだと。

 しかし……チマがマーチ。そして、俺は、ロアをアーロ……か。

 俺は、こいつと同レベルのネーミングセンスなのか……


「……あぁ、彼女にはなにも言わない。だから……」

「えぇ。あなたのことも、話しませんよ」


 俺がチマの事情を知っているだけではない。チマだって、俺の事情を知っているのだ。

 エフィとヤタラさんは俺の事情は知っているが、他の村人は知らない。まあ、お互いに黙ってようってことだ。


「?」

「あぁ、エフィ。彼とはその、旅の途中で仲良くなったんだよ」

「へぇ、そうなんだ!」


 エフィから慕われているんだな、チマは。

 それにしても、どうやら彼は旅に出ているらしい。だから、昨夜の宴にもいなかったのか。


「そうなんだよ。だから、いろいろ積もる話もあって。……な?」

「……そうですね」


 俺はチマの肩に腕を回し、笑顔を浮かべる。チマからは顔を背けられてしまったが、どうやらエフィは信じてくれたようだ。

 チマは今すぐにでもここから逃げ出したいようだが、そうはいかない。俺はこいつに、聞きたいことがあるのだから。

 魔王を倒した、その理由を。


「では、後は片付けだけなので、アーロさんはチマ兄と話してきてください」

「……いいのか?」

「はい!」


 あぁ、なんてええ子や。涙が出るな。

 だが、さすがにそういうわけにもいかない。


「俺もやるよ。仕事の初日から、サボるわけにもいかないし。チマさんも、手伝ってくれるよな?」

「えっ? ……えぇ、もちろん」


 俺が片付けをしている間に、逃げられたのではたまったものではない。なので、無理やりチマを巻き込む。

 チマも、エフィの手前強くは断れないのか、渋々といった形でうなずいた。


「わぁ、ホントに!? ありがとうチマ兄!」

「は、はは……」


 それから、三人で片付ける。元々二人で切り盛りしていたお店、三人もいれば片付けは捗っていく。

 片付けが終わると、チマを俺の家へと招く。チマは終始緊張した様子であり、どこか落ち着かない様子だ。

 気持ちはわかるが……


「さて。まずはリラックスしてくれ。っても、難しいか」

「私に、なんの用です?」

「そう警戒するなよ。ただ話をしたいだけだ……あのときの、話の続きを」


 魔王娥死んだあのときから、もう数ヶ月……それでも、おれはあのときの光景を忘れたことはない。

 前世の展開とはまったく違う、最たるもの。どうしてチマという男があの場に現れ、魔王を殺したのか。

 この男がこの村で、なにをするとは思えない。それはエフィの態度からも明らかだ。だが、油断はしない。

 なにも武器を持っていないのはわかるし、警戒もして見ていた。だが、この男の『スキル』は【透明化】。あのときと同じように、手に持った武器を透明にしている可能性は、なくはない。


「ゆっくり話そうぜ? 時間はたくさんある」


 チマを座らせた席……その正面に、俺も座る。

 正面切って戦えば、負けはしない。それでも、決して警戒は、解かない。
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