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死に戻り勇者、第二の人生を歩む
指名手配犯ロア
しおりを挟む今や、ファルマー王国内ではロアは、指名手配犯として手配されてしまっている。
その内容は、数人の兵士殺しの容疑者として。一度は勇者としてのし上がった男の信頼が地に落ちるのは、一瞬だった。
それでも、信じない者も当然いた。リリー以外にも。
「ロアが殺人!? そんなわけがあるか!」
当時、事件の詳細を聞かされたドーマスは、自ら城に乗り込み、ザーラへの面会を求めた。勇者パーティーの一人、アポ無しでも国王と会うことは叶った。
ロアが殺人など、犯すはずがない。まして、相手は犯罪者などではなく、一般の兵士。ロアには確かに、兵士程度ならば殺せる力はあるだろう。
だが、力があることとそれを実行することとは、まったく別のことだ。
「私も信じられませんよ、ドーマス殿。しかし、これが真実です」
「っ……私があのとき、ロアたちと一緒にいれば……!」
旅から戻り、ドーマスは家族の下へと真っ先に顔を見せに行った。もしも、自分がいればこのようなことには、ならなかったであろう。
ドーマスの怒りは、どこに向ければいいのか。行き場のない怒りは、自らの中に押し殺すしかない。
……目の前の男が、ロアを殺そうとゲルドをけしかけたことなど、気づくこともなく。
「しかし……どうして、あのときバレたのか」
ドーマスの追求を逃れたザーラは、自室にて一人呟く。ゲルドの話では、ロアはまるで自分の命が狙われることを、わかっていたようだというのだ。
城への同行を拒否したこともそう。ゲルドが不意をついてロアの命を狙ったはずなのに、初めからなにかを警戒していたようにかわしたというのも引っかかる。
ザーラは、以前ロアを見かけたことがある。彼らが旅に出る前のことだ。だが、必要以上の接触はしなかったはずだ。
「ゲルドなら、簡単に殺せると思っていたんだがな」
【鑑定眼】を持つゲルドであれば、いかに勇者であろうとその命を奪うことは容易い。相手が、必要以上に警戒していなければ、だが。
ザーラの計画では、魔王を倒すほどの力をつけたロアを亡き者にすることで、自らの地位を脅かす存在を消す三段だった。
「ロアの行き先……おそらく、何者かの手引きがある」
国中を包囲してしまうその前に、ロアは国外へと逃げてしまった。いくらなんでも、動きが早すぎる。何者かの手引きがあったと、考えてしまう。
可能性として高いのは、勇者パーティーのメンバー。だが、ドーマス、ミランシェ、リリーはこちらの思惑により物理的に距離を離した。
また、ゲルドはあり得ない。となると……
「大神官殿……か」
残るシャリーディア。彼女が、ロアの逃亡を手引きした。そう考える理由として、彼女の動きも関係している。
こちら側のゲルドはともかく、シャリーディアまでロアが逃亡した経緯に関してだんまりを決めている。もし、不必要なことを言うようであれば、教会側に圧力をかけるつもりだったが……
「やれやれ、厄介だな」
シャリーディアに居場所を聞くことも考えたが、立場的に彼女自身に危害を加えることはできない。
また、ロアの故郷に帰っている可能性も考えたが……シャリーディアの介入により、必要以上の兵は動かせなかった。
そして、結果としてロアは、彼の故郷カルボ村にはいなかった。村人も、知らぬ存ぜぬで嘘をついている様子もなかった。
「……くそっ」
命を狙われたとなれば、仕返しにロアの方から姿を現すかもしれない。しかし、そうなれば彼を罠にハメたことがバレる。
そうなったら、彼一人でも厄介なのに……シャリーディアはもちろんドーマスやミランシェ、さらにはリリーまでも彼の味方をする可能性がある。
そうなってしまう前に……なんとしてでも、ロアの居場所を見つけ、始末しなければ。
自身の地位を脅かす存在……そんなもの、この世に必要ないのだから。
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