死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、第二の人生を歩む

話を聞かない冒険者

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 とりあえずコアプテラの引き渡しには成功。思わぬ形で報酬も貰えた。

 そんなわけで、ここでの用事は済んだしあとはラーダ村に帰るだけ……その前に少し、ダガさんの家に顔を出してもいいかな……

 そう、思っていたのだが。


「さあ、ぜひ我がチームに入ってくれないか!」

「……」


 俺を、冒険者として勧誘する『銀の牙』、そのリーダーであるライバー。

 彼の両隣にいる女性、プラとマイも嫌そうな顔はしていないことから、二人も同意であることがうかがえる。

 そう、三人から評価されているという点では、ありがたいことなのだが……


「さっきも言ったけど、俺は冒険者になるつもりは……」

「わかる、不安なのだろう? 初めてというのは誰しもそうだ……俺でさえ、冒険者になろうかというときは、緊張していたものだ。そう、俺だってあのときは……」


 本当に話を聞かないなこの男は。

 しかもなんか語りだしたぞ。


「冒険者に憧れ、いざ冒険者になってみても、成り立ての頃はせいぜいゴブリン一匹を討伐するのが精一杯だった!」

「お、おう」

「しかし、その後特訓に特訓を重ね、仲間を集め、チームとしての力を上げていって……地道に、高ランク冒険者を目指していったんだ! その結果、ついにAランク冒険者になれた!」


 だんだん興奮してきたのか、声が大きくなっていく。ただでさえコアプテラを連れてる変な男にAランク冒険者が絡んでいる、という珍妙な光景なのに、これでは余計に注目を浴びてしまう。

 それに気づいてもいないのだろう、ついには涙まで流し始めた。当時の苦労を思い出しているのだろうな。

 しかも、両隣のプラとマイも涙を流している。お前らの情緒どうなってるんだ。


「た、大変だったんだな……」

「キミが……いや、アーロがいればもっと上に! それこそSランク冒険者となるのも夢じゃあない!」


 熱烈な勧誘。ここまで熱い勧誘を受けたのは、初めてだ。勇者のときは、言われるがままあれよあれよって感じだったし。

 もし俺がラーダ村でなく、この町についていて……ここで暮らそうと思っていたら。そう考えてしまうほどだ。

 だが、俺はこの二度目の人生。できるだけ穏やかに、のんびり暮らすと決めたんだ。


「悪いけど、俺は冒険者になるつもりはない。俺を誘ってくれる気持ちは嬉しいが、他を当たってくれ」


 ここは、しっかりと断っておくべきだ。ありがたい話だが、俺にそのつもりがないことを、こうして真正面から伝えておく。

 いくら話を聞かなくても、これだけはっきりと断れば……


「……なるほど、つまりはオレとキミとで勝負をし、買ったほうが決めると。そういうことか」

「んん?」


 あれ、今俺勝負で決めようって言ったっけ? そんなこと一言でも言ったっけ?

 この人本格的に話聞いてないな。


「いいだろう! ならばその挑戦受けて立とう!」

「もしもーし! 話聞いてる!?」

「大丈夫さ、勝負は一対一。真剣勝負だ。オレが勝ったらキミは『銀の牙』に入る。キミが勝ったらオレたちは諦める。それでいいかな?」

「ねぇ話聞いてないの!? それとも俺の言葉が通じてないの!?」


 ここまで話が通じない相手初めてなんだけど! 俺を殺そうとしたゲルドとだって、もう少し話はできたぞ!

 しかも、いつの間にかライバーの意見が通ったかのように、勝負の準備を始めている。勝負するのにいい場所はないかとか、審判がいた方がいいかなとか。

 なんかどんどん大事になってる!?


「ちょっとま……」

「でしたらその勝負、審判は私が引き受けます!」

「どっから出てきた!?」


 店の奥に引っ込んだはずの、受付の人カーリッサさんまで再度出てきた。どこから話聞いてたんだ! しかもノリノリで!

 どんどん断れる雰囲気じゃなくなっていく。場所はこっちで用意するだとかルールはどうするだとか賭けようぜとか。

 ……どうして、こうなった?
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