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死に戻り勇者、因縁と対峙す
異変の前兆
しおりを挟むラーダ村に来て、ラーダ村で過ごすこと……もう、しばらくの時間が経った。
エフィとの店作業はそれなりに慣れ、最近では一人でも店番を任せてもらえるようになった。花や野菜の名前、種類を覚え、どういう方法で育てればよく育つか。
食べるにはどうすれば一番美味しいか。それらを覚え、知識を溜め込んでいく。そうして、次第に従業員としての自覚も深まっていった。
「アーロさん、もうすっかり従業員って感じですね」
「あはは、そうかなぁ」
「私も、アーロさんの覚えが早いので楽をさせてもらってますよ」
村では、いろんな人が尋ねてくる。大きな村ではないから、やがては村人全員の顔と名前を覚えることも、できるだろう。
中でも、ヨルガとケエラさんはちょくちょく店に顔を出してくれる。
「そういえば、最近チマは見ないけど……」
「チマ兄は、商売をしにまた別の国へ行きましたよ」
「そっか」
商人であるチマは、あまり村に滞在はしない。休憩がてら帰ってくるくらいで、よくいろんな場所へと出向いている。
その度に、ケエラさんが寂しそうにしているのが印象的だ。そして、その日の夜は決まって酒を飲む。
俺も、何度付き合わされたことか。
「ケエラさん、いちいち俺を飲みに誘うのは勘弁してほしいんだけどな」
「それだけ気を許してるってことですよ」
「そうかなぁ?」
村人たちには、なんだかんだで受け入れられている。ヨルガに関しては、相変わらずではあるが。
なんにしても、見かけたら挨拶。そして忙しそうにしていたらそれを手伝ったりと、そうしているうちに受け入れられていったわけだ。
「アーロさんが来て、村全体がさらに明るくなったような気がしますよ」
「それは大げさじゃ……」
「そんなことはないです」
エフィはこう言ってくれるが、それというのもやっぱり村人たちがいい人ばかりだからだ。でないと、俺だってあそこまでしようと思えないし。
こうして、一日一日なにも危険なことが起きず、村人たちと、エフィと、のんびりと穏やかに過ごしていく……これこそ、俺が望んでいた生活だ。
……の、はずなんだが。
「最近、モンスターが暴れていますよね……怖いです」
「んん……そうだね」
以前、ラーダ村を襲ったコアプテラ。そしてセント町を襲ったハイプテラの大群……あれほどとは言わないが、今村の周辺では、少なからずモンスターが暴れている。
それは、ラーダ村を襲うほどの脅威ではまだない。せいぜい、村の周囲をうろうろしている程度。
……しかし、セント町や遠出をする際、村の外から出ると襲ってくる。村には入ってこないが、村から出たら容赦はないといった感じだ。
そのせいで、少なからず影響もでているわけで。
「チマ兄は腕が立つからいいですけど、そうじゃない商人さんとのやり取りは滞っているそうです」
「そっか……そうだよなぁ」
商人はなにも、チマだけではない。それに、こっちから出向くでなく、向こうから出向いてくる場合もある。
そんな中で、道中モンスターに襲われるという事件も多発している。これは、見過ごせないことだ。
そのため、最近ではすっかり商人の行き交いが少なくなっている。
「なにか原因があるんでしょうか? セント町も、襲われたみたいですし」
「あれ以来、なにも起こってはいないみたいだけどね」
ハイプテラの大群に襲われたセント町。原因はわからないガ、あれからモンスターに襲われることは、今のところないらしい。
もしそうなっても、あの町にはライバー始め、たくさんの冒険者がいる。あのときは俺もいたが、俺がいなくても強い町だ。
もし、あんなことがこのラーダ村でも起こったら、果たして俺はみんなを守りきれるだろうか。
「……」
胸騒ぎ、というのだろうか。近頃はよく、胸がもやもやする。
しかし、それは俺の気分次第。そんなことは関係なく、今日もお客さんはやってくる。
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