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死に戻り勇者、因縁と対峙す
滞在数日後
しおりを挟むワモニグラがラーダ村に住むようになってから数日。今のところ、ワモニグラが再び暴走するようなことはない。
それどころか、力仕事に積極的に参加し、村人からの信頼を着々と得ている。
最初のうちは、ちゃんと村に馴染めるか心配な部分もあったが……どうやら、問題なかったみたいだな。
「ワモちゃん、今日もお疲れ様」
「プゥウ~」
特に、ここ『緑屋』ではよく役に立ってくれている。畑を耕すのはもちろんのこと、野菜や花を食べる害虫を駆除してくれるのだ。
そんなこともあってか、特にエフィはワモニグラをいたく気に入っている。すでに『ワモちゃん』なんてあだ名を付けているくらいだ。
曰く、ワモニグラでは味気ないとのこと。
「それにしても、よく懐いてるなぁ」
「そうですかね?」
「プゥア~」
ワモニグラは、エフィに鼻先を手のひらで擦られながら、にこにこと笑みを浮かべている。自らも擦り寄っているかのようだ。
こいつ、もしかしてオスだろうか。
「まあ、仲がいいことはなによりだよ」
「そうですねっ」
「プァ!」
あれから、モンスターが襲ってくることもない。平和な時間が、流れている。
他の村人もワモニグラに懐いているし……なにより、ワモニグラもあれ以来暴走していない。この分だと、ワモニグラにラーダ村の警備を任せることになるときも近いだろう。
「ところで、この子……ワモちゃん、大丈夫なんですか?」
「あぁ、今のところ異常は見られないよ」
ワモニグラが、いやモンスターが活性化している原因。それを調べるために、定期的にワモニグラの体を調べている。だが、異常は見当たらない。
【勇者】の『スキル』は、医者のように対象の容態を見れるわけじゃあない。だから、調べると言っても精密なものではないのだが。
ただ、毎日ワモニグラの様子を見て、体を触って、口の中を覗いて……医者紛いのことしか、できないわけだ。
「変調があったら、ワモニグラ自身が伝えてくれるとも思うしな」
外から見てわからない変化も、中からならばわかるかもしれない。例えば、腹痛とか頭痛とか……そんな些細な変化でも、伝えてくれとは伝えてある。
それに、気配……普通のモンスターと、活性化したモンスターとでは微妙に気配が違うのだ。
活性化したモンスターはなんというか……あれだ、ピリピリした感じがするのだ。
「なにか異変があったら、すぐにわかるとは思うよ」
「そうですか……でも、ワモちゃんは大丈夫じゃないですかね」
根拠はないが、エフィは大丈夫だと言う。それはあるいは、願望のようなものかもしれない。
また暴走しても、ある程度の痛みを与えれば元に戻る可能性はある。とはいえ、またあんなことにならないに越したことは、ないのだ。
「そういえば、アーロさん聞きましたか?」
「なにが?」
かわいらしく、エフィは首を傾げる。
「リーズレッテさん、もうしばらくこの村にいてくれるようですよ! 嬉しいですね!」
「ん、そうなのか」
踊り子リーズレッテ。彼女は数日前からこの村に滞在している。その間も、その見事な踊りを披露して村人たちを湧かせていた。
基本的には一週間ほどしか一箇所に留まらない彼女であるが、セント町とこのラーダ村では長く滞在している。
曰く、気に入った場所は長く滞在することもあるし、今回はそうだったらしい。セント町ではご飯がおいしかったし、ここでは村人みんながいい人だからと。
「リーズレッテ様、やけにアーロさんをお気に入りみたいですもんね」
「そんなことは……ないと思うが」
村に滞在している間に、本人の強い希望もあって、エフィはリーズレッテのことを踊り子様からリーズレッテ様と呼ぶようになった。
リーズレッテとしては、慕われるのは嬉しいことなのだがあんまり踊り子様なんて呼ばれ続けると、むず痒くなってしまうらしいからだ。
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