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死に戻り勇者、因縁と対峙す
踊り子様との出会い
しおりを挟む「いらっしゃいませ……あ、リーズレッテ様!」
「どうもー」
最近、リーズレッテがよくお店に来る。花は買っても植える場所がないからか、買うのは野菜が多い。意外にも料理が得意らしく、ここで買った野菜を料理して食べているのだとか。
エフィと仲良くなったのは、ここでよく話をするからだ。
「こんにちはエフィちゃん。アーロさんも」
「あぁ、こんにちは」
「こんにちは!」
「今日はどれにしよっかなー」
リーズレッテは、店頭に並んでいる野菜を見回す。野菜を選んでいる間も、鼻唄を歌っていてどこか楽しそうだ。
見ていると、どこかこっちまで楽しい気分にさせられる。不思議な魅力を持った女性。
そんなリーズレッテと初めて出会ったのは、とある街の一角。人が賑わっている一箇所があり、なにが起こっているのかと注目したのだ。
『なんだろー、面白そう』
『変な催し物でもあってるだけだろ』
興味津々なリリーに引かれるように、俺たちも人の波へと突っ込んだ。
その向こう側にいたのが……言葉も奪われるほどに、洗練した踊りを披露する、一人の踊り子であった。
『……っ』
その踊りを前に、小言をブツブツと言っていたゲルドでさえ押し黙った。ドーマスさんは感心するように、リリーは目を輝かせ、ディアとミランシェはうっとりするように。
これだけ人が集まっているのに、周囲の人々は静寂を保っている。聞こえるのは、踊り子が踊りを披露する際の体の動き、布切れの音、そして彼女の背後で楽器を持ちBGMを流している人たちの音のみ。
ちなみにこの楽器を弾いていた人たちこそ、リーズレッテの護衛である。結構イカつい見た目からは、想像できないくらいにきれいな音を出していたものだ。
『うわぁ、きれいな人』
『そうだな』
『むっ』
踊り子の踊る様子に、リリーは素直な感想を口にし、俺も嘘偽りなくうなずいたものだ。その時ディアがムッとしていた気がしていたのだが……
今になって思えば、その意味がわかる。こう考えるのは恥ずかしいが……嫉妬、のようなものだったのだろう。
『…………』
その後、踊りが終わり……彼女の方から、俺たちに声をかけてきた。なんでも、他の人たちとは纏っているオーラが違ったのだとか。
そして、女性陣……特に素直なリリーを始めに、親睦を深めていったわけだ。
彼女の踊りには、俺たちも元気をもらった。旅の最中は娯楽のようなものはなく、そういった意味でも励まされたものだ。
「……どうかしました?」
「いや、ちょっと出会ったときのことを思い出してて」
じっと見ていたせいだろう、リーズレッテに声をかけられる。ごまかしても逆にやましい感じになるので、正直に話す。
初めて会ったときのこと……それはリーズレッテも覚えているらしく、「あぁ!」と手を叩いた。
「あのときのことですか。懐かしいですねぇ。アーロさんったら私の踊りに見惚れてしまってて」
「嘘じゃないけど俺だけじゃないだろ。あとなに、エフィその目は」
「別になんでもないですよ?」
今でこそリーズレッテの人柄を知っているが、初めて会ったときはそりゃとてつもなくおしとやかな人だと思ったもんだ。
まさか話してみたら、こんなに明るいというか、フレンドリーというか。普段の様子を知っていたら、あの踊りが嘘じゃないかと感じるほどだ。
「私、そろそろこの村を発とうと思うんです」
「! そりゃ、急だな」
「こんなに長居するつもりはなかったですからね、これでも結構居たほうです」
「……寂しいですね」
躍りで、あちこちに活気を与えたい……それが、リーズレッテの願いだ。そのため、一つの場所に長居することは、あまりない。
本人としては、これでも長居したほうなのだ。エフィの言うように寂しくなるが、仕方のないことなのだ。
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ありがとうございます💞
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