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死に戻り勇者、因縁と対峙す
護衛たちの心労
しおりを挟む……ゲルド・アールボートがファルマー王国より出発し、数ヵ月。彼は、王国の数人の兵士を護衛に、目的地であるセント町へと向かっていた。
報告では、このまま順調にいけば明日にでも、セント町につけるだろうという。
本来ならば、目的地がわかっていればいかに遠い場所とはいえ、これほど時間がかかるはずではなかったのだが……
「ったく、急激にモンスターの数が増えやがった」
水を口にするゲルドは、忌々しげに舌を打つ。ここまで時間がかかってしまった原因、それは度重なるモンスターの襲撃に他ならない。
ある一定の区域に入ってから、明らかに正気ではないモンスターの群れに何度と襲われた。
そのおかげで、予定していた時間を大幅に過ぎてしまうこととなった。
「ゲルド様、お疲れ様です。この辺りは安全なようで……」
「あーそうかい。ったく……なんで俺がモンスターの生態調査なんかに、とはもう言わねえがよ。せめて、旅の供に女を付けてほしかったぜ。むさい男ばかりの旅でなにが楽しいんだ」
「あ、はは……失礼します」
ゲルドの愚痴に、兵士はただ苦笑いを浮かべることしかできない。
今回、ゲルドの護衛として数人の兵士を付けたのはザーラ国王だ。この人員配置は、彼の嫌がらせとしか思えない。
……ゲルドの女癖が悪いことは、ザーラだけでなくほとんどの国民が周知の上だ。だからこそ、ザーラは旅に女性を同行させなかった。
どうしてか、ゲルドの女癖の悪さを知っても、女性たちはゲルドを避けようとしない。それはゲルドのカリスマ性なのか……ともかく。そんなゲルドと、旅の供に女性を同行させたらどうなるか。
「……当然の判断だな」
ゲルドから離れつつ、兵士はそっと呟く。ただでさえ楽な旅ではないのだ、それがさらに時間を取られる結果になりかねない。
それに、これは噂であるが……勇者パーティーでの旅をしていた際、男三人と女三人。ゲルドは女性の誰かと関係を持ったのではないかというもの。
国王の娘であるリリーは違うだろう。美しい女性であるが、ゲルドはガキだなんだと興味を示さなかった。それに、いかに国王でも愛娘になにかあれば、黙ってはいない。
美の化身とも言えるシャリーディアか、冒険者ミランシェか。ただ前者は、あってほしくないという願望が強い。それに、旅が終わった後ゲルドは、ミランシェとは度々会っているという情報も……
「! いかんいかん。俺には関係のないことだ」
思わぬところにまで想像が及びそうになり、兵士バングーマは首を振る。
ゲルドの女性関係についていろいろ考えても、仕方のないことだ。自分たちの役目は、ゲルドを無事セント町まで送り、モンスター活性化の原因を解明すること。
「あ、隊長」
「ゲルド様、いかがでした?」
「相変わらずだ。女っ気のない、むさい所帯だとむくれていたよ」
バングーマは、兵士たちが休んでいる場所へと戻る。今年で五十を迎えたろう兵士であるが、昔より王国に仕え、鍛え上げた覇気は未だ衰えを知らない。
兵士の数は、バングーマを除けばわずか四人。栄誉ある勇者パーティーのメンバー護衛がこの程度の人数であるのは、バングーマの実力の高さゆえだ。
老いはしたがまだまだ現役。さらに人を教えるのもうまく、彼に教えられ精鋭とも呼べるのが、この四人だ。
「相変わらずですねぇ、それは」
「必要以上に嫌われこそしていないが、必要以上に好かれてもいないな。今は、テントの中で休んでおられる」
「気楽なもんですねぇ。俺らは毎夜、見張りで二人は起きてるっていうのに」
「口が過ぎるぞ、ゾラ」
「へーい」
ゲルドは、兵士たちと仲良くしようとはしm¥ない。あくまでも、旅を供にする……いや、後ろをついてくる有象無象としか思っていないだろう。
きっと、兵士たちの名前を覚えてもいない。バングーマでさえ。
元々、ゲルドは自分一人で充分と言っていたのだから。だが国王は、無理にでも護衛を付けた。その目的は当然、ゲルドの身を守ること……も含まれてはいるが。
それよりも、行く先々でゲルドが女性と関係を持ち、いつまで経ってもセント町にたどり着かない……それを、危惧してのものである。
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