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死に戻り勇者、因縁と対峙す
恋バナに飢えていた
しおりを挟む「……そうですか、はい、わかりました。引き続き、お願い致します」
現時刻、夜……ここは、ファルマー王国王城、とある一室だ。
通信器具を耳から話し、女性……メラは、小さくため息を漏らす。
今しがた連絡を終えたばかりだ。その内容は、メラの期待したような、期待していないような、そんな複雑なものであった。
「どうだったの? メラ」
「変わった動きはなし、と。しかし、セント町での調査を終えた後、ラーダ村という場所へと向かうようです」
「ふぅん、ラーダ村かぁ。聞いたことないや」
連絡を終えたメラに話しかけたのは、リリー・マ・ファルマー。ここはリリーの部屋だ。
メラが連絡を取っていた先は、現在ゲルド一行に加わっているチュナールである。彼には、ゲルドの様子を監視し、伝えてくれる役目を頼んでいる。
当初は、メラが自身でゲルドの後を追いかけるつもりだったが……いかに女怪盗であった時期があるとはいえ、ゲルドに加えて護衛の兵士に気づかれないように後をつけるのは、不可能だ。
それに、どれだけの日数がかかるのかわからないのに、一人で追いかけるのは現実的ではない。かといって、他の誰かを巻き込むわけにもいかない。
だから、彼らと行動を共にしても不思議ではない、兵士の一人にお願いしたのだ。
「ところで、なんでチュナールに頼んだの?」
ふと、リリーは気になったことを聞く。今回の件、どうしてチュナールという兵士に頼んだのか、だ。
それこそ信頼できる兵士という意味なら、隊長であるバングーマ……彼の人柄は真面目で、リリーでも真っ先に浮かぶのは彼だ。
「どうして……ですか。これといって意味はありませんが……」
「が?」
「……頼みやすそうだったので」
要領を得ないメラの回答。それを受けリリーは、静かに瞑想した。
リリーはチュナールなる兵士に直接会ったことはないが、メラが頼み事をしている場面を隠れて覗き見ていた。その際の、チュナールの表情……あれは間違いなく、恋している顔だった。
リリーは恋バナに飢えていた。
「頼みやすそうねぇ」
それは、相手がチョロいという風に取れなくもないが……別の意味を探せば、頼みやすいほど親密に感じる相手、ということでもあるだろう。
つまり、メラも心の底ではチュナールを、重要な任務を任せることができるほどに信頼しているのではないか。すなわちメラも本当はチュナールのことを……
リリーは恋バナに飢えていた。
「……どうしたの、そんなにじっと見つめて」
「別にぃ?」
リリーが見て、贔屓目なしにメラは美人だと思う。スタイルもいいし、給仕服ではよくわからないが、脱いだらすごい。性格だって悪くない。
そんなメラではあるが、彼女に浮いた話は聞かない。男に興味がないわけでは、ないたろう。以前告白されている現場を目撃したが、顔を赤らめていたし。
だが結局は、断った。恋愛に興味がない……というよりも。彼女はリリー自身のせいで、そういった自分のことに回す時間がないのだろうなと、感じていた。
「メラ。メラの幸せを、私は願ってるからねぇ」
「……なによいきなり」
「いい人がいたら、私応援するから!」
「だからなんの話!?」
自分のせいで、メラが自身の幸せを逃すなど、リリーには我慢できない。だから、そういうときには全力で応援するつもりだ。
それを素直に伝えれば、本人は必死で否定するだろうから陰ながら見守るが。
「ま、それはそれとして。モンスターの活性化について、手がかりを得られればいいんだけどねぇ」
「すごくわかりやすく話題を変えたわね。……でもまあ、そうね」
そもそもゲルド一行の目的は、モンスターの生態調査だ。今のところ、ゲルドの【鑑定眼】を持ってしても、原因は突き止めていられないようだ。
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