死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、因縁と対峙す

その出会いの先には

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 ……ラーダ村は、今日も平和な時間が流れていた。

 ワモニグラを新たに村の住民として迎え入れて、またしばらくの日数が経った。あれ以来、再び暴走するようなこともなく、村の畑を耕すなど貢献してくれている。

 それになんといっても、ワモニグラのおかげで活性化したモンスターを見なくなった、というのが大きい。村の周辺で見かけられていたモンスターは、ワモニグラがすべて退治してくれているからだ。

 ワモニグラは、地面からの振動でどこになにがあるか、おおよそわかる。そこに活性化したモンスターがいれば、村に被害が出る前に率先して退治しに行ってくれている。

 おかげで、ここ最近は活性化したモンスターを見てはいない。


「今日もご苦労さまー、ワモちゃん」

「プゥウ」


 今ではすっかり、村のマスコット的な扱いになっている。初めはエフィだけがワモちゃんと呼んでいたが、次第に呼び方は村中に浸透していった。

 畑は耕してくれるし、モンスターは退治してくれるし……うん、これは思わぬ拾いものだったかもしれない。


「アーロさん、今日もお疲れさまです」

「あぁ、エフィこそ」


 仕事終わりに、お茶を一杯。うん、おいしい。

 この生活も、繰り返していくうちにさすがに慣れた。俺が早く慣れるように、陰ながらエフィがフォローしてくれたおかげでもある。

 初めてのことばかりで、真新しい発見が日々あるため毎日飽きることはない。


「今日もお客さんたくさんでしたねー」

「そうだな。嬉しいことだ」


 客が増えると、俺も嬉しい。この店の従業員としての、責任のようなものが出てきたのだろうか。

 こうして、俺とエフィは仕事終わりに少しお話をする。なんでもない、世間話をして、ほどほどになったら俺は家に戻る。そんな、毎日を過ごしていた……


 コンコンコン


 そんな、穏やかで平和な時間……店じまいをしたというところへ、ふと扉を叩く音が響く。

 もう、店は閉まっている。そんなこと、この村の人間ならば誰しもが知っていることだ。あるいは、緊急の場合に誰かが訪れる可能性もあるが……

 だが、緊急のものにしてはいやに音が静かだ。緊急のものであれば、もっと荒々しい音がするだろう。


「誰でしょう、こんな時間に」


 エフィも、誰が訪ねてきたのかと疑問のようだ。俺と扉とを交互に見て、困ったように眉を下げている。

 ここは、俺が出るべきだろうな。危ないかもしれない……村人相手なら危険はないだろうとはいえ、一応、念の為にだ。


「俺がまず出るよ」

「は、はい」


 言って、俺は扉へと歩みを進める。コンコン、と何度か、一定のリズムで叩かれている。


「はーい、今開けますよー」

「遅い時間に、申し訳ない。少々聞きたいことがありまして」


 声をかけると、向こうからも声が返ってくる。男の……威厳のある男の声だ。多分、年配の人だな。聞き覚えは……ない。

 村の人間ではないのだろうか。村の外から来た人ならば、こんな時間に来るのもわからないでもないが。

 俺は、扉に手をかけ……開ける。


「どちら様ですか?」

「夜分遅くに失礼します。私は、このラーダ村より遠い国から来た、バングーマと申します」

「はぁ」


 扉の向こうにいたのは……一人の、男性だった。私服に身を包んでいるが、わかる……この人、ただ者ではない。

 バングーマと名乗った男性の後ろには、まだ数人の男がいるようだ。あまり物騒な感じはしないが……複数人の男所帯。それが、こんな時間になんの用だろうか。

 遠くの国から来た、と言っていたな。この村には、わりと遠くの場所から訪れる人も多い。だから、別段不思議でもないが……


「ここは、お店でしょうか?」

「えぇ、残念ながら営業時間は終わってしまいましたが……」

「でしょうな。ですが、無礼を承知で、尋ねさせていただきました。村に着いたばかりで、右も左も分からないので」


 このバングーマという人、ただ者じゃない以上に礼儀がしっかりしているな。いいところの人だろうか?

 ここを尋ねたのは、なんということはない。村に来たばかりで、右も左も分からないからだ。


「では、なにか用事があるんでしょうか?」

「えぇ。実は捜し人がいまして」


 この村での用事……捜し人がいると、バングーマさんは答えた。
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