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死に戻り勇者、因縁と対峙す
アーロとロア
しおりを挟む捜し人を探して、このラーダ村へとやって来たというバングーマさん。この村に来るのは初めてとのことらしいが、捜している人がここにいるとはわかっているようだ。
こんな時間にまで訪ねてきて、よほど緊急のことなのだろうか。
「そうでしたか。俺にわかるかはわかりませんが……その人の、名前は?」
「えぇ……名前は、アーロ、という方です」
捜し人の名前を尋ねた結果……返ってきた名前は、思いもよらないものだった。
だって……アーロって……え、あれ?
「あ、アーロ……」
「はい、そうです。アーロという名前の方を、ご存知ありませんか?」
ご存知ありませんかって……そりゃ、知ってるも知らないもない。だって、アーロは俺なのだから。
正確には、ロアという名前を捨てた後の名前、だが。
「えぇと……その人に、なんの用事で?」
俺は、すぐに自分がアーロであると明かすのをやめた。だって、なんでこの人たちがアーロという人間を捜しているのか、分からないからだ。
名前が同じ人違い、という線もあるが、わざわざラーダ村にまで来ているのだ。ここへきての名前間違いは、ないだろう。
「実は、アーロという人物に興味を抱いた方がいらっしゃいまして」
「興味?」
「えぇ。なんでも、隣町のセント町でハイプテラの大群を撃退したり、Aランク冒険者に勝ったとか」
「……」
なるほど……その話を聞きつけた奴が、物珍しさに訪ねてきたのか。大方、力にしか興味がない脳筋みたいな人だろう。
とはいえ、それだけなら害はなさそうだ。
「それなら……」
「隊長、やっぱりゲルド様は外で待っているそうです」
「そうか、まったく」
「……!?」
アーロは俺だ……そう明かそうとしたが、ふとバングーマさんに話しかけた男の口から、聞き逃せない単語が耳に届いた。
「げ……ゲル、ド?」
「? えぇ。アーロという人に会いたいと、ゲルド様……私たちの連れが、言い出しまして」
「……!」
その春化、俺は咄嗟に、顔を背けた。だって、この人が言うゲルド様って、もしかして……
いやいや落ち着け。名前が同じだけの、別人の可能性もあるじゃないか。ゲルドなんて、別段珍しい名前でもないんだし。
うん、きっとそうだ。
「ところで……失礼ですが、あなたの顔、どこかで見たような気がするのですが」
「! きき、気のせいじゃないですカネ?」
顔を見たことがある……そう指摘され、俺の心臓は跳ねた。あぁ、これもう確定じゃないか?
ゲルドという名前の連れがいて、且つ俺の顔を見覚えがあるということは……この人、まさか……
いかんいかん、動揺するな。
「あの……失礼ですが、あなたがたは、どちらから? 遠くの、国って……」
「名前は、ファルマー王国と言います。この近くへは、そう、観光目的で……」
……あぁ、確定してしまった。この人、いや人たちは、ファルマー王国の人間だ。幸運だったのは、俺の顔が割れていないということ。
俺は、ファルマー王国で広く顔を知られているが……国を出てから、もう数ヵ月以上の月日が流れている。
ラーダ村での生活により、生活習慣も変わり……顔つきだって、少しは変わっているはず。俺とそんなに親しくない人には、俺がロアだとバレないはずだ。
「その……アーロ、って、人のことですが……実はもうこの村には……」
「アーロさーん、話し込んでいますが、お店に入ってもらったらどうですか?」
「!」
もうこの際、アーロは村を出たことにした方がいい……そう言おうとしたところへ、店の奥から出てきたエフィが俺の名前を、呼んだ。
あぁもう、タイミング悪い……
「え……じゃあ、もしかしてあなたが?」
「はは……はい、アーロです」
ここまで来ては誤魔化しきれない。俺は、観念した。
だが、まだ全てを諦めてはいない。俺がアーロだとはバレたが、ロアだとバレてはいない。
バングーマさんたちはまたしも、もしもゲルドと会ってしまったら……さすがに、正体はバレてしまう。そうなったら、俺は……
「ここはなんとしても、誤魔化さないと」
小さく、口の中でつぶやく。
ゲルドと会うわけにはいかない。そのために、やれることはなんだってやってやる。
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