死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、因縁と対峙す

脅してるわけじゃない

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 今のファルマー王国の状況は見てきたわけじゃないし、ザーラ国王の人となりを知っているわけでもない。だが、バングーマさんの話を聞いてわかったのは……

 前王ザラドーラに比べて、ずいぶんと自分勝手なイメージがする男だ。俺の命を狙ったことも含めて……な。


「……つまり、今あなたたちがここにいることが公になると、そちらの王国にとっては都合が悪いということですね?」

「え? ……え、えぇ、まあ」


 今聞いた話を整理したらしいエフィが、なにやら怪しげな言葉を告げる。そして、それを受けたバングーマさんは微妙に冷や汗を流している。

 ……なんだろう、エフィから黒い笑みが見える。


「お国事情は大変ですねぇ。内密にこんなところにいることがバレたら大変なことになりますよ」

「……えっと……もしかして、エフィ、バングーマさんを脅してる?」

「いえいえまさかそんな」


 脅して、とは物騒な言い方かもしれないが、それに近いことをエフィは今やっている気がする。

 ファルマー王国の兵士であるバングーマさんたちは、その格好を見るに身分を隠している。その身分がバレれば、他国の兵士が潜り込んでいるという状況になる。

 そうなれば、ファルマー王国にとってはまずいことになるだろう。国同士の問題だ、俺が想像するよりも大きな問題になりかねない。


「脅してはいませんよ。ただ……この件を公にされたくなければ、おとなしく帰って、アーロさんのことは内緒にしておいてください」

「それを脅しと言うんだよ!?」

「いえ取り引きです」


 思ったよりエフィ黒いな! いやまあ、俺のためを思って言ってくれているのは、わかるんだけども!

 エフィが持ちかけるのは取り引きというより、脅し……いやでも、取り引きなんて場合によっちゃ脅しと同じようなもんか。

 それを受けて、バングーマさんは苦々しい表情を浮かべている。


「ぬぅ……」

「……結局のところは、その人を黙らせないとだめってことですか」


 またも怖い発言と共に、エフィは未だ気絶しているゲルドへと視線を向ける。

 黙らせる、って……その言葉遣いが、もう怖いんだけど。


「エフィ? あまり物騒なことは……」

「いっそのこと、ワモちゃんに地中に埋めてもらいましょうか……」

「エフィー!?」


 ぶつぶつと何事か呟いているエフィ……なにやら不穏な言葉が聞こえてしまう。ワモニグラを使ってまでゲルドを埋めようとしている。

 さすがにそこまでの発想は俺にもなかったよ!?


「あはは、冗談ですよ。あの人が国に無事に帰らないと、それはそれで問題なんですもんね」

「じょ、冗談か……それならよかった。……本当に? 本当に冗談?」

「うふふ」


 冗談……と言ってくれたが、目が笑っていない。というか、問題とするのがゲルドを無事に帰さないと不審がられることであって、ゲルドを埋めることに関してはなんとも思ってないのか。

 結構長い間一緒の村で暮らしてきたが……この短時間で、エフィの知らなかった面がどんどん明らかになってきている気がする。


「とりあえず、その人縛っておきましょう。起きたら、またうるさくなりますよ」

「え? あ、あぁ、そうだな」


 とりあえずエフィの言葉に従い、気絶したままのゲルドの手足を縛る。後ろ手にした状態で手首を、そして足首を拘束。

 これで、ゲルドが起きても好きに暴れたりはできないだろう。


「う、んん……」

「!」


 ゲルドを拘束し、とりあえず岩に寄りかからせたところで、うめき声が。他の兵士たちが、目を覚ましたらしい。

 四人の兵士たち……それぞれ、周りをキョロキョロと見回し、困惑の表情を浮かべている。まあ、それはそうだろうな。

 そんな彼らに、バングーマさんが今の状況を説明しているようだ。


「えっと……じゃあ、彼が……」

「あぁ、ロア様だ」


 他の兵士にも、俺の正体が伝わる。あまり俺の正体を知る人間を増やしたくはないんだが……

 ボコボコになったゲルドが目に入り、他にごまかす方法がわからなかった。ゲルドをボコボコにできる人物なんて、それこそ勇者パーティーメンバーでもないと、無理だし。

 俺も、自我を失ってなければ、あそこまではやらなかったし。


「彼が……」


 そんな中で、一人やけに俺を見つめてくる兵士がいる。それぞれ俺を物珍しそうに見てはいるのだが、一人だけ視線が違うというか。熱があるというか。

 まさか、そういう……? いや、俺は男には興味がない。


「あの……少し、よろしいですか?」


 そんなことを思っていた中で、その兵士が声をかけてきた。おいおい、行動力早いな。

 しかも、二人で話したいなんて言われ、みんなと少し離れたところに。なんだよおい、怖いんだけど。


「あなたが、ロア様……」

「そうだけど。あのね、俺はノーマルでキミの気持ちには……」

「メラさん、をご存知ですか?」


 なにか変なことを言われる前に断ろう……そう思って口を開いたが、まったく予想だにしていなかった言葉が返ってきた。

 なんだって……? メラさん?


「いや、知らない」

「彼女の頼みで……いえ、彼女に依頼をした、リリー様についてお話が」

「!」


 メラという人物に聞き覚えはない……しかし、次に出てきたのは、聞き覚えのあるものだった。

 共に、旅をした……仲間の、名前だ。
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