死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する

気まずい二人旅

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 ゲルドをファルマー王国に送り帰してくれ……これに対してのチュナールさんの応えはというと……


「……」


 言葉で言うまでもなく、とても嫌そうな顔をしているのがすべてを物語っていた。

 まあ、気持ちはわからんでもない。


「あの状態のゲルド様と、王国まで二人で旅をしろ、と? はは、そんなの嫌に決まってるじゃないですか」

「ですよねー」


 なんと爽やかな笑顔で、さらっととんでもなく毒を吐くなこの人。いや、それほどこの事態が嫌だと本気で思っているわけだ。

 今のゲルドは、魔族と気に入らない奴とを倒すことを邪魔され、苛立ちを溜めている形だ。そんなゲルドと二人きりなんて、俺だって嫌だ。

 それ以前に……多分、チュナールさんは……というより、他の兵士たちもだが。ゲルドのこと、苦手だろうしな。


「苦手な相手と二人旅……か」

「しかも、今のゲルド様と、ですよ。拘束解いたとたんに噛み付いてきそうじゃないですか」


 ……それは、確かに。袋を被せているからゲルドが今どんな表情をしているのかはわからないが、まあ穏やかな表情をしていないのは確かだな。

 さすがにずっと顔に袋を被せたまま移動するわけにもいかない。拘束したままというわけにも。それに、道中気性の荒いモンスターに襲われることだってあるだろう。

 ゲルドの協力なくして、モンスターをチュナールさん一人で突破できるだろうか。


「それに、ここからファルマー王国までは結構距離がありますし」

「その間気まずすぎる、か」


 なんとかゲルドに、おとなしくファルマー王国へと帰ってもらいたいものだ。またヤタラさんの力を借りようか。

 騒動が一段落し、チマはエフィとなにやら話していて、ガリーは一人ポツンと佇んでいる。チュナールさんは、そんなガリーを見ていた。


「チュナールさん?」

「……悔しいが、確かに私では、あの子には勝てない。どころか、軽くあしらわれて終わりみたいです」


 先ほどのゲルドとの戦いを見て、感じたのだろう。ガリーは手足を拘束された状態で、ゲルドの攻撃をあしらっていた。

 それだけで、自分とのレベルの違いを思い知ったようだ。チュナールさんにとってはキツいだろうが、あのまま力の差もわからずにガリーに挑むよりはよほどいい。


「あの魔族のことは、許せません。ですが……その気持ちを、今は抑えます」

「……そっか」


 チュナールさんにとっては複雑だろう。だが、結果としてみればゲルドがガリーと戦ってくれたおかげで、チュナールさんが無駄に挑まずに済んだ、ということか。

 そして、そのゲルドだが……


「おい、誰でもいいからこれ外せ!」

「……なんであの状況で偉そうなんだろう」


 視界も手足も封じられた状態で、なおあの態度を保てるのは感心する。


「まあチュナールさんの気持ちもわかりますけど。どのみち王国には帰らないといけないでしょう」

「……そうなんですよね」


 遅かれ早かれ、彼らはファルマー王国に帰らなければならないのだ。ゲルドとの二人旅は、どうあっても避けられない。


「帰る途中でゲルドの拘束を解いたら、即チュナールさんに殴り掛かりそうですしねぇ」

「それに考えてみてください。あの状態のゲルド様を乗せて、道中いろいろな場所に行くことを」

「……」


 言われて、考えてみる。顔は隠したまま、手足も縛った人物を乗せて歩き回る……か。

 不審者かな。


「やっぱりヤタラさんにこう、うまい具合に記憶を操作してもらうしか」

「ですね」


 結局、二人で考えて結論は出た。またヤタラさん頼みになってしまうが、ガリーやチマとの出来事を記憶から消してもらうとしよう。

 そう考え、みんなのところへと戻る。


「……なんでゲルドは倒れているんだ?」


 そこには、なぜか倒れているゲルドの姿があった。もちろん顔は隠したまま手足は縛ったままで。

 殺人現場かな?


「あ、アーロさん。今、おじいちゃんが『スキル』でこの人の記憶を操作したところです!」


 エフィは、どこか嬉しそうに言う。まだ俺なにも言ってないのに、すでにゲルドは【記憶操作】された後だった。
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