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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
不審者登場
しおりを挟む早いもので、ガリーがラーダ村の住人となってから、数日が経過した。俺の家に一緒に住んでいる彼女だが、今のところは悪さはしていない。
それどころか、おとなしいものだ。『スキル』を使用しないのはもちろんのこと、俺の言うことには素直に従うし、下手に暴れることもない。
従順な姿勢……それに、俺の動きを見て、自発的にも物事を覚えていくため、いつの間にかいろいろな作業もやるようになった。
それに、店で働くことになり、どうなることかと思ったが、思いの外きちんとやっている。まあ、接客なのに笑顔がないのが、難ありだが。
だが、それ以外のことなら、おおかたうまくできている。
「いやぁ、ガリーちゃんが来てくれて大助かりだよ!」
「……そう?」
特にエフィは、よくガリーに話しかけ、気にかけている。ガリーもそれがわかっているのだろう、エフィには若干ながらも心を開いているようだった。
客とも、表情は変わらないながらも少しずつ話をするようになっていた。
その実体が、魔王の娘だということを忘れてしまうほどに、平和な時間が過ぎていった。
「……」
仮にも女の子との二人暮らしはどうなることかと思ったが、特に問題は起きなかった。
俺が子供に興味がない且つ、ガリーが下手に羞恥心を持っていないおかげもあってか。
ちなみに、女性物の服などの提供は、エフィがしてくれた。一部サイズの違いなど、トラブルもあったが。
……そんな、平穏な日々が過ぎていった、ある日のこと。
「いらっしゃいま……せ……?」
今日も今日とて、店内に来客が訪れる。いつものように、元気よく挨拶を……しようと、したのだが……
思わず、言葉に詰まる。それは、隣のエフィも同じようだった。
なぜなら……
「シュコー……シュコー……」
「……」
黒い鎧に身を包み、顔も黒い仮面……マスクのようなものを被り、全体的に不審者丸出しだったからだ。
しかも呼吸の度にシュコシュコ言っててちょっと怖い。
「よぉエフィちゃん」
「あ、カイロさん」
そんな不審者の後ろから現れたのは、見知った村人だ。知った顔に、張り詰めていた緊張感も少し緩む。
彼は、不審者とエフィ、そして俺とを見つめながら……
「この人が、アーロに会いたいみたいでなぁ」
「お、俺?」
突然の名指しに、驚く。不審者に視線を移すと、不審者はシュコシュコ言いながら俺を見ていた。じっと見ていた。怖い。
なんだ、いったい……俺にこんな、不審者な知り合いはいないはずだが。
「ねーちゃん、あの人がアーロだよ」
「そうですか。ご案内、ありがとうございます」
「いいってことよ」
さらに、カイロさんの隣……俺からは見えなかったが、一人の女性が姿を現した。きれいな人だな。
どうやら、あの女性から、俺の居場所を聞かれて、カイロさんは案内したらしい。あの人も、知り合いではないけどな……俺を、探していたと。
役目を終えたカイロさんは、笑顔で帰っていった。
「あの……俺に、なにか用事でも?」
村の人間ではないのは明らかだ。それに、この店の店主ヤタラさんや、その孫であるエフィでない理由。
なぜ、俺を名指ししたのか。
「ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。私、メラと申します」
「あぁこれはどうも……ん?」
丁寧に頭を下げる女性、改めメラさん。
その名前に、俺は聞き覚えがあった。
「もしかして……ファルマー王国、の?」
「はい。リリー様の、給仕です」
やはり、そうだ。チュナールさんが連絡を取り合っていた、メラさん。その人が、なんでここに?
すると、黙って成り行きを見守っていた不審者が……カタカタと、震えだした。
「え、なに、どうした!?」
「あの……もう、いいですよ」
メラさんの、もういいという言葉に……不審者は、勢い良くマスクを外した。
その、マスクの下にあった顔を見て、俺は……仰天した。
「でぃ……ディア!?」
「ロアー!」
息を呑むほどの美貌を持つ、女性……かつて、共に旅をした仲間、シャリーディア。
彼女が、なぜかここにいて……目に涙を溜めて、俺に飛びかかってきた。
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