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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
見学
しおりを挟む俺とエフィの話は、平行線だ。ガリーをエフィたちと一緒に住まわせるわけにはいかないという俺と、一緒に住んでも問題ないというエフィ。
「だったら、まだ俺がガリーと一緒に住んだほうがいいでしょう」
引く様子のないエフィに、一番安全だろう提案をする。
本当は、俺としても積極的に示したいものではないが……この際、仕方がない。そもそも、ガリーから目を離さないなら一緒に住むのが一番なのだ。
「え……いや、それは……だめでしょう」
「どうして。俺なら、ガリーが危険でも止められる」
「だって……女の子と、ひとつ屋根の下、なんて……」
俺がガリーと一緒に住むことに反対するエフィだが、その理由は……危険だからとか、そんなものではなかった。
むしろ、俺も考えはしたことだ。まだ子供とはいえ、女の子と二人暮らしなど。倫理的にどうだ、と。
だが……
「いや、そんな心配しなくても。なにもしないって」
俺自身、ガリーに手をハズがないと、わかっている。シャリーディアやミランシェといった、スタイルのいい美女を見てきたのだ。
今更こんな子供に、どうこうしようとは思わない。
「そ、うなんですけど……そうじゃ、なくてぇ……」
エフィはどこか顔を赤くしたまま、不服げに呟く。そうだけどそうじゃない、とは、どういうことだろう。
そのまま、沈黙の時間が流れ……
「……わかりました。アーロさんにお任せします」
根負けしたかのように、エフィがため息を吐いた。
そんなわけで、ガリーの面倒は俺が見ることに。この村に連れてきたのは俺だし、なんだかんだで俺が面倒見るのが筋ではあるよな。
他に空き家はあるが、一人で住まわせるわけにもいかないし、ガリーの素性を知らない人たちと住まわせるわけにもいかない。
「そんなわけで、ガリーには俺と一緒に住んでもらう」
「……わかった」
なにを考えているのかわからない無表情で、俺の言葉にうなずいている。先ほど村人に囲まれている姿を見ていた時もそうだが、基本的にこちらから離さないと、反応がない。
俺と一緒に住むということで、思うところある人も居るようだが……ヤタラさんがとりなしてくれたおかげで、すんなりと通った。
「こっちが、俺たちが働いているお店だ」
「……ん」
村の、案内をしていく。素直に後ろをついてくる姿は、とても魔族の血が入っているとは思えない。普通の少女だ。
初めて会った時は、俺に対して……いや父親である魔王を殺した者に対して、大きな憎しみを見せていた。
その、憎しみといった感情を、今は感じない。彼女には、魔王を殺したのはチマだということは内緒にしているが……これは、隠し通した方がいいだろうな。
「……で、ここが今日からキミも住む家だ」
「……ん」
俺と一緒に住むことに抵抗もないようで、先ほどと同じような反応で小さくうなずいている。なにを考えているのか、読み取れない……
これでも、相手がなにを考えているのか、ある程度のことは表情を読めばわかる。まあ、ディアの気持ちや正体にはこれっぽっちも気づかなかったわけだが……
このガリーからも、そういった考えは読み取れない。
「これからのことは、これから考えるとして……俺は今から仕事だけど……」
そこまで言って、考える。仕事中、こいつを一人にしておくのは不安だ。あぁ、四六時中見張るって言っても早速つまづいてしまった。
いろいろ考えた結果、ガリーもお店についてきてもらうことにした。
「なんなら、ガリーちゃんも一緒に働いてもらったらどうですか? 楽しいですよ!」
俺の後ろについてきたガリーを見て、エフィが言った。当のガリーは、相変わらずきょとんとしたままだが……
とりあえず、見学という形で、端の方に待機してもらう。
「いらっしゃ……あ、ヨッちゃん!」
「よぉ」
早速店を訪れる人が。それはヨルガだった。
……なんかこいつ、毎日来るな。まあ、目的は店の商品ってより、エフィの方なんだろうが。
「毎日来てくれてありがとねぇ」
「気にするなよ」
当のエフィは、そんなヨルガの気持ちにまったく気づいてはいないが。むしろ、いいカモだくらいにしか思ってないんじゃないか。
そこまであからさまなことは思わないだろうが。
「……ん? その子は……」
店内を見回すヨルガが、ガリーを見つける。二人の目が合うが、どちらも動かない。なんだこの反応は。
そのまま少し時間が経つと、ヨルガが視線をそらした。
「新しく住むことになった女の子だろ? なんでここにいるんだ」
「えへへ、ここで働いてもらえないかなぁって思って。見学してもらってるの」
「ふぅん」
見学として、そこに立っているガリーをチラッと見て、ヨルガが相づちを打つ。あまり興味がなさそうだ。
そして、ガリーの方も特に興味はなさそうだ。
「ま、いいや。じゃあ今日は……」
と、ガリーから興味を外したヨルガが、店内を見て回っていく。
なにを買うか決めず、店内で決めながらできるだけ長く留まる……少しでも、エフィと一緒にいたいがための作戦だ。
それから、ヨルガは適当な傷薬を買って、帰っていった。
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