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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
見学中
しおりを挟むディアとしては、ガリーをどうにかしたい気持ちはあるだろう。直接魔王と対峙したことのある、あの時の記憶を持っている、俺を除いたただ一人の人間だからこそ……思うところはあるだろう。
しかし、俺が監視しておく、ということで納得してくれたようだ。俺を信用してくれてるって、ことなのかな。
「さて、と。まだ話し足りないことはあるけど、仕事もあるんじゃない?」
「ホントだ。もう休憩時間も終わりそう」
「今日はわしとエフィ、ガリーに任せて、神官度と話していてもいいのじゃよ?」
「いえ、そういうわけにはいきませんよ」
ディアとまだまだ話したいことがあるのはもちろんだが、だからといって仕事を放り出すわけにもいかない。
「じゃあ、仕事見学しててもいい? ロアが働いてるの、私、見てみたいわ」
「え、俺はいいけど……どうせなら、村の中を見学したほうがいいんじゃないか?」
「気が向いたらねー」
「それと、他の人の前では俺のことはアーロでお願い。メラさんも」
「かしこまりました」
休憩時間を終えて、俺たちは仕事に戻る。ディアとメラさんは、端のテーブルに座っていたが、しばらくしてからメラさんは席を外した。村の中を見学に行ったのだろう。
村への道中ならば、きっといかなる理由があってもディアから目は離さなかっただろう。どんな危険があるかわからないからな。だが、ここは村の中。
それに、自惚れるわけではないがこの場には俺もいる。やっぱり、俺を信用してくれているってことだろうか。
「アーロさん、シャリーディアさんってすごい美人ですね」
「え? まあ、そうだな」
仕事の最中、エフィは含み笑いを浮かべた表情で、ちょくちょく俺をからかうような言葉を投げかけてくる。この子、やたらテンション高いな。
それはそれとして、エフィと話しているとディアから鋭い視線を感じる。なんだこの板挟み状態は。
「ガリーちゃん、これをそっちの棚に置いておいてくれる?」
「ん、わかった」
エフィとガリーは、うまくやっている。ほとんどがエフィから話しかけることが多いが……
とはいえ、ガリーの方もエフィに一定の信頼を置いているように見える。この村で、一番親身になって接してくれるのがエフィ、と言っても過言ではないだろう。
だから、ガリーもエフィに懐いているのかもしれない。
「なあなあ、あの人旅人さんか? めっちゃ美人じゃんか」
「けど、あの鎧はなんなんだ……?」
店内に居座るディアは、注目の的だ。見慣れない顔、それもディアのような美人がいれば、そりゃみんな注目する。
……顔だけでなく、黒い鎧を着たままだ。さらに、目立つ。ちなみに仮面は、暑いし息苦しいからあまり被りたくはないらしい。
この村なら、ディアのことを知っている人間もいないし……ま、大丈夫だろう。
「こんにちは」
「あ、いらっしゃいチマ兄!」
知ってる人間来たー!
「どうも、エフィはいつも元気だね」
「えへへ」
「アーロさんも、こんにちは」
「あぁ、うん」
うわ、ディアのやつめっちゃこっち見てるよ。チマは逆に、ディアに気がついていないし。
今回、時間を巻き戻したディア本人と、俺だけが知っている。前回の時間軸で俺たちは魔王を倒したが、今回の時間軸ではそうはならなかった……展開が、大きく変わっていることを。
本来なら俺たちが倒すはずだった魔王を倒したのが、今現れたチマだ。展開が大きく変わっていることを除いても、ゲルドのように因縁をつける場合もあるが。
「……」
ディアはそういうタイプではないとはいえ、魔王を倒せるほどの人間がこの場にいることに、ひどく困惑していることだろう。今だって、目ぇ細めてめっちゃこっち見てる。
しかし、次第に見ているだけでは物足りなくなってきたらしく……立ち上がり、ガシャガシャと音を立てながら、こちらへと歩いてきて……
「あなた……あの時の、人だよね」
「え? ……えー……」
チマの肩を掴み、話しかけた。振り向いたチマはなんとも……気まずそうな表情を、浮かべていた。
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