死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する

厄介事に巻き込まれ

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「ロア、なんでこの人が、ここにいるの」

「それは、えっと……」

「なになに、チマ兄と知り合いなんですか?」


 店に訪れたチマ、そしてチマに詰め寄るディア……二人の関係性などまったく知らないため、呑気なエフィ。

 俺も、チマと初めて会ったときは似たような反応をしていた気がする。懐かしいな。

 そりゃ、魔王を倒した実力を持った男が、予想もしていなかった場面で登場したのだ。混乱するさ。


「あなた、この村でなにを企んで……」

「まーまーディア、落ち着いて」


 とはいえ、こんなところでチマが魔王を倒した、なんて話をするわけにもいかない。ガリーやエフィだっているのだから。

 俺はディアに、そっと耳打ちをする。


「訳は後で話す。他のみんなはなにも知らないんだ。彼は、安全だから」

「……ロアが、そう言うなら」


 とりあえず、この場は追及をしないということで、引いてくれた。後でそれとなく教えておこう。

 チマは時折、ディアを気にする素振りを見せつつ、買い物を済ませて帰っていった。チマにも、一応後で簡単に説明しておくか。

 その後、時間が出来たのでディアに、チマについて簡単に説明する。


「ふぅん……商人ねぇ」

「そう。で、あいつが魔王を倒したってことは、俺たち以外は誰も知らないんだ」

「まあ、悪い人じゃなさそうだけど」


 チマと接するエフィを見ていて、彼が危険な人間ではないと判断したようだ、ディアは。魔王を倒した直後に会った時は、なんとも胡散臭い笑顔を浮かべていたものだが……

 この村で見せる笑顔は、チマの本当の笑顔なのだろう。


「にしても、魔王を倒した男に、魔王の娘……ロア、あんたことごとく厄介事に巻き込まれるわねぇ」

「好きで巻き込まれているわけでは……」

「おまけに、魔王の娘の『スキル』は【消滅】って……大丈夫なんでしょうね」

「気を付けてるよ。この数日なにもなかったしね。心配してくれてありがと」

「……別に」


 とはいえ、ディアの指摘通り……厄介事に巻き込まれてるよなぁ俺は。まあガリーを連れてきたのは、俺なんだが。

 ガリーを連れてきたおかげで、彼女が原因だったモンスターの活性化はなくなった……そう考えることで、プラマイゼロだと思っておこう。

 それからしばらくして、メラさんが戻ってきた。村の人たちはとてもいい人たちだと、満足そうに語っていた。


「二人は、どこに泊まるか決めているんですか?」

「いや、まだですが……」

「なら、ウチに泊まりなよ! いいでしょおじいちゃん!」

「わしは構わんよー」


 閉店の時間となり、同時にディアとメラさんの泊まる場所を提案する。宿に泊まるよりも、その方が二人共助かるだろう。

 それを受け、メラさんは小さく微笑んだ。


「ご迷惑でないのなら、私としてはうれし……」

「あ、あー……ねえ、私は別に、ロアのとこでも……」

「!?」


 ディア!? いきなりなにを言い出すんだこの子は!?


「あ、いや別に深い意味はないのよ!? ただ、二人も泊めさせてもらうなんて、迷惑じゃない?」

「別にそんなこともないけど……」

「いやいや! ほら、どうせロアは一人暮らしなんでしょ!? だったら気楽かなーって……」

「いや、アーロさんはガリーちゃんと一緒に住んでますよ?」

「…………へぇ」


 エフィの言葉を受け、ディアが無言で俺を見つめてくる。やめてくれ、無言は怖い。

 それから、ガリーを見て……


「ちょ、なっ……あ、あなた! ロアに変なことしてないでしょうね!」

「? 変なこと、って?」

「っ、それは……」


 指差し、吠えるが……ガリーの無垢な反応に、逆にディアの方がたじたじになってしまう。

 それから、何事か言おうとしていたが……頭を抱え呻き……


「だ、ダメよそんなの! ロアと二人きりなんてうらやま……じゃなくて! ロアが変なことしないように、私が監視する! するったらする!」


 支離滅裂になりかけている台詞を、大声で吐いたのだった。
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