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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
平和な村で
しおりを挟む「んー、いい天気!」
メラさんとエフィのおかげで、今日一日はディアと二人きりの時間を過ごすことができる。なんだかんだ言っても、俺もディアとこうしてのんびり、過ごしたかったしな。
村の中を、歩く。仕事をしている人がいて、遊んでいる子供がいて、買い物をしている主婦がいて。様々な人が、それぞれの時間を過ごしている。
この村に来てずいぶん立つが、こういう風に、落ち着いて村中を見て回ることは、なかったかもしれない。
「いい村ね」
ふと、ディアが言った。ディアも歩くたびに、過ぎ去る人たちを、見つめている。
それは、昔……俺の故郷や、俺は行ったことはないがディアの故郷を、思い出させるようなものだったのかもしれない。
「あぁ。この村に、ラーダ村に来れてよかったと思ってるよ」
「……ロアが幸せそうなら、それが一番だよ」
いつも挨拶を交わしてくれるおばちゃんがいる、商人としてあちこち回っているチマがいる、会うと突っかかってくるヨルガがいる、畑仕事を手伝うワモニグラがいる。
人もモンスターも、みんなが仲良く、暮らしている。
「……ん? あれは……」
ふと、村の入口に見知った影があった。その人物は、俺たちに気づいて近づいてくる。
「ロアさ……じゃなくてアーロ様! それにシャリーディア様も!」
「リーズレッテ!?」
嬉しそうな笑みを浮かべて、手を振り走ってくるのはリーズレッテ……踊り子の、姿だった。
勇者パーティー時代に知り合い、その後は俺がアーロとして暮らしていくうちに、再会した女性だ。
それにしても、なんでここに? 踊り子だから各地を回っているとは言っていた。同じ場所に訪れることもあるだろう。
だが、以前ラーダ村を訪れたときからまた来るまでに時間は経っていないはずだが。
「ホントに、ラーダ村に来てたんですね!」
「わぁ、久しぶり! まさか会えるなんて!」
思わぬ再会に、ディアもはしゃぐ。美女が互いに手を取り合い、キャッキャと喜ぶ姿は見ていてなんともいいものだ。
とはいえ、ずっとそうしているわけにもいかず。
「ホントに、って、どういうことだ?」
俺は横から、声をかけた。
「ふふん、私の情報網を舐めてもらっては困ります! 怪しげな鎧の人がいるとの情報を聞きつけて、どうやらラーダ村に向かっているということがわかったんです!」
「鎧……あぁ、ディアの変装用のか。でも、それがどうしてディアだってわかったんだ?」
「シャリーディア様、ずっと鎧を被っていたわけじゃないでしょう? たまたま目にした方がいて、その方の言う特徴とシャリーディア様の特徴が一致していたので!」
来ちゃいました、と笑うリーズレッテ。
なんというか……凄まじい、行動力だ。それとも、これくらいの行動力がないと各地を渡る踊り子なんてやっていけないのだろうか。
「……変装の意味やっぱりあんまりなかったんじゃないか」
「……てへ!」
鎧を着ても目立つし、脱いだらもっと目立つ。そういう存在なのだ、ディアは。
まあ、そのおかげでこうして、リーズレッテと再会できたわけだ。
「シャリーディア様はいつまでこの村に滞在される予定なんですか?」
「明日にはここを発つ予定だよ~」
「明日!?」
と、二人の会話する様子を見守る。村の入り口とはいえ、踊り子様と旅の美少女……すぐに、人々の注目は集まる。
「でしたら、今夜にでも再会とお別れを祝して、踊らせていただきますよ!」
「ホントに!?」
「別れを祝してってなんだよ」
「細かいことは気にならさずに。……そういえばシャリーディア様、そんな喋り方でしたっけ?」
「あぁ、えぇと、これは……」
「そっちのほうが、親しみやすくて私は好きですよ!」
いつの間にかディアは、シャリーディアという外向きではなくディアとして素の話し方になっていた。リーズレッテも、気にしていないようだし……やはり、あの丁寧口調は肩が張るみたいだな。
ともあれ、思わぬ再会を果たした俺たち。ディアと別れる前日に、リーズレッテの踊りを見られるとは、ツイてるな。
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