異世界病み記 ~そのヒロイン、好意が行き過ぎに付き~

白い彗星

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第三話 勇者は友好を深める

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 仲間が集まり、これで戦力の強化は整った。
 だが、戦力だけ整えれば勝てるというものでもない。
 一番大事なのは……

「チームワーク?」

「はい。皆さん、まだ会って間もありません。
 そのような状態での旅は、危険です。
 なので、お互いのことを深く知っていただきたいのです」

 勇者パーティーとなったメンバーは、各々友好を深めることになった。

 いかに戦力が整っても、一番重要なのはチームワークと言える。
 危険な戦いの中で、互いによく知らない相手に背中を預けるなんて、無理な話だ。

 よって、英治は戦い方の基礎を教わりつつ、メンバーとの友好を深めていくことになった。
 もちろん、他のメンバーも、初対面同士。


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「よぅエイジ、調子はどうだ」

「わ、れ、レオンハットさん」

「だはは! ダニーでいいさ!」

 まず、英治を一番に気にかけてくれたのが、ダニー・レオンハットだった。
 見た目はいかついおじさんを思わせるが、その実気さくであり、この世界に馴染めない英治を気にかけてくれた。

 同じ男同士ということ以上に、パーティーの中では最年長であるため、英治にとっても頼れる存在だ。
 どうやら、彼には妻子がいて、故郷に残してきたようだ。
 よく、身の上話を聞かせてくれた。

「娘はちょうど、エイジくらいの年でなぁ」

「へぇ、そうなんですか」

 ……ただ、異様に距離が近いのが、気にはなったが。

 ダニーが男女ともにイケる性格だと聞いたのは、知り合ってからしばらく経ってからだ。


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「…………」

「……あの、なにか?」

「別に……」

 対して、一番接するのに困ったのは、リヤ・コネラ。
 英治のイメージする魔法使いそのものではあったが、いかんせん無口……その上、ちょくちょく英治のことを見てくるのだ。

 美少女に見つめられて悪い気はしないが、さすがに無言で見つめ続けられるのも、居心地が悪いものだ。
 ただ、嫌われているわけでは……ないのだろう。

 こちらから質問をすれば答えてくれるし、特に魔法に関することは口数が多くなった。
 単に口下手だけなのだろうと、だんだんとわかってきた。


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「へぇ、神官……うわぁ、すげぇ」

「あ、あの、恥ずかしいです……」

 高位の神官だというピアミアは、どうにもおどおどしている。
 英治を苦手としているわけではなく、誰に対してもこうなのだ。
 本人は、平民であることを強く気にしている。

 とはいえ、英治は貴族だの平民だの、気にしない。
 元々そんなものが存在しない世界で、生きてきたのだ。

「俺にはそんなにおどおどしなくてもいいのに、ピアミア」

「い、いえそんな!
 勇者様に、お目通し願うことすら本来、恐れ多いことなのです!」

「うぅん……」

 自身が平民という立場に加えて、神官としての立場もあるのだろう。
 見ている分には面白いが、あまりそうとばかりも言っていられない状態だ。
 まあ、あまり急かすこともできないので、ゆっくりでも少しずつ改善していけばいいだろう。


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「えっと、エイジ……だったわよね。
 隣、いいかしら?」

「カリィ。もちろんだよ」

 王宮の食堂でご飯をいただくことが多い英治だが、そこに示し合わせたようにカリィ・ドラヴェールは現れる。
 美しい彼女は、城内でなおも人目を惹く。
 そんな人物が隣に座るというのは、英治にとって嬉しくもあり恥ずかしくもあった。

 異世界からの人間が珍しいのだろう、彼女は英治によく話しかけてきてくれた。
 その社交性が、英治には眩しかったが、同時にありがたかったものだ。

「エイジのいた世界は、どんなだったの?」

「興味あるの?」

「あるわよ!」

 カリィは、自分の話をするよりもどちらかというと英治の話をよく聞いた。
 面白味のない話ではあるが、英治にとっても知っていることを話すのは、気が楽だった。

 彼女には様々なことを話した。
 一人暮らしをしていること、学校に通っていること、幼馴染の女の子がいること……それを、カリィは興味深そうに聞いていたものだ。


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 こうして、英治は仲間たちと友好を深め。
 同時に、訓練も行っていった。

 そもそも武器を持つ、というのが初めてだ。
 勇者として召喚された英治の身体能力は大幅に上昇しており、あらゆる武器を使いこなせるようになっている。
 魔法だって、多少ならば使うことができる。

 それでも、その道を極めた者には敵わない。
 剣を使っても、騎士であるカリィには及ばないように。魔法を使っても、エキスパートであるリヤには及ばないように。

 よく言えばオールラウンダー。悪く言えば器用貧乏というやつである。

「こう、剣はこう握るのよ」

「魔法は、タイミングが重要」

 それに、使い方がわかっても、やはり経験の差というのは大きい。
 ただ剣を振るうにしても、持ち方から動き方。
 それを変えるだけで、だいぶ違うのだ。

 訓練には、剣はカリィ、魔法はリヤ、武術にはダニーに教わることになった。
 そしてピアニアは、神官として日々祈りを捧げている。

 曰く、この世界には精霊というものがいて、精霊と通じる力を持つ者を神官と言う。
 神官は精霊の力を借り、魔法とは違った精霊術を使うことができる。

「魔法と精霊術の違い、ですか?」

 いつか、ピアニアに聞いたことだ。
 彼女が言うには、魔法は自らの体内にある力魔力を使用する。
 一方で、精霊術は精霊の力を借りるため、消費する力も使える術の規模も違う。

 英治は、残念ながら精霊術は使えないようだった。


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 ……訓練の日々は、実に半年にも及んだ。
 英治の戦いの筋はよく、本来想定されていた時間を大幅に短縮した形だ。

 ついに英治は、勇者パーティーを率いて、魔王を退治するための旅に出ることになった。
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