異世界病み記 ~そのヒロイン、好意が行き過ぎに付き~

白い彗星

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第六話 勇者は平穏へと戻る

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 ……どうして、あんなことになったのだろうか。
 ……どうして、あんな未来にしかたどりつけなかったのだろうか。

 どうして……どこで、間違えたのだろうか。


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「だから、これからは……もう、私だけのものだよ。
 エイジ♪」

 起きた先に広がっていたのは……まさに、地獄だ。
 その地獄の中で、仲間である少女は……いや、仲間だった少女は、笑っていた。

 その足元に、屍を置いて。
 その光景は……到底、信じられるものでは……

「ずぅっと、一緒にいようね♪」

「うわぁあああ!」

「!」

 英治は、飛び起きた。そう、起きたのだ。
 ここは……ベッドの上だ。

 荒い息を整え、周囲を見る。
 すぐ近くに、見知った人間が、驚いた表情で座っていた。

「……リ、エーラ?」

「あ、そ、の……お、はよう、ございます」

 眠っていた英治を見て……いや、看病していた、王女リエーラ。
 彼女は、英治をこの世界に召喚した張本人だ。

 彼女は、気を失ってしまった英治をずっと、心配していた。
 そこで突然、寝ていたはずの人間が叫んで起き上がっては、驚いても無理はない。

 まだ混乱の中に居るが、それでも英治は、とりあえず謝罪する。

「いえ、問題ありません。それよりも、なにがあったのですか?」

「……その前に、確認させて」

 英治の記憶は、仲間たちが全滅したあの瞬間から止まっている。
 ……正確には、仲間を皆殺しにされて、だ。

 自分と、もう一人を除いて。

 仲間を殺したのは……カリィだ。信じたくはないが。
 あんな悪夢のような光景、いっそ夢だったならどれほどよかっただろう。

 だが、あの胸を掻きむしりたくなる嫌な気持ちは、冷たくなった仲間たちの体は、色っぽく囁くリエーラの吐息は、べったりと血の付いた手で撫でられた頬は……
 嘘では、ないのだ。

「確認、ですか?」

 きょとんとした様子のリエーラ。
 そう、確認しなければならない……仲間たちが、どうなったと認識しているのかを。

 リエーラによると……ダニーもリヤもピアミアも、旅の途中で命を落としたと報告を受けたらしい。
 それは、悲しい話だ……それが、魔王討伐の過程で、魔族との戦いの末にという事実の下であれば、そんな感想も持てただろう。

 だが、この報告をしたカリィが……他ならぬ、カリィが、仲間たちの命を……

「俺はなんで、ここに?」

 その後、あくまでカリィからの報告の話だが……

 仲間を失い、それでも英治とカリィは進んだ。
 そして、命の危機に遭いながらも魔王を討伐し、なんとかこのトロダンタ国まで戻ってきたのだと。

 なんとも、めちゃくちゃだ。
 本来五人で協力して倒すはずの魔王を、二人だけで……
 いや、すでに戦力外となっていた英治を除けば、カリィ一人で魔王を倒したことになる。

 なんとも、馬鹿げた話だが……
 英治は事実として、ここにいる。

 カリィが魔王を倒したのであれば、世はまさに平穏を取り戻したと言える。
 英治の心は、まったく穏やかになどならないが。

「それで、エイジ様……なにが、あったのですか?」

「……実は」

 言うべきか、迷う。
 しかし、仲間の無念を晴らすため……英治は、話すことを決めた。

 あの、恐るべき女の、恐るべき正体を……
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