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第4章 騎士学園での騒動
組分けは
しおりを挟む入学の日から、翌日……目覚めた俺は、部屋のカーテンを開け部屋に日差しを呼び込み、うんと伸びをした。
「んんー、いい朝だ!」
入学式の翌日、つまり今日からが、学園生活の本番とも言える。別に仲良しこよしをしたいわけではないが、せっかく第2の人生を送る過程で学園に入ったんだ。せめて楽しいものにしたい。
今回入学した人数は、3組に分けた約20人構成……つまり約60人ということだ。これが多いのか少ないのかは、俺にはわからないが……ま、同じ組の人間とくらいは仲良くしたい。
「ふぁあ……なんだ、もう朝か?」
「おはよう、シュベルト様」
まだ一日も共に過ごしていないが、結構この人の性格が見えてきた。王族だしきっちりしているのかと思っていたが、実は結構だらしない。
だから侍女のお世話も必要なんだろうな。王族だからって理由以外に。
「あぁ、おはようヤーク。早いんだな」
「まあ、癖ですよ」
そんな王族シュベルト様、タメ口でいいと言ってくれるためなんとかそうしようと思ってはいるのだが、敬語に成ったり敬語が抜けてたり……変な感じに、なってしまっている。
ま、追々ということで。
「さ、準備しましょう。朝食を食べて、それから教室へ」
「おー」
制服に腕を通し、準備を整えていく。基本的に、男子はカッターシャツの上にグレーの上着、黒のズボンにネクタイ。女子は黒のミニスカートにリボンがこの学園の正装だ。ちなみにネクタイは青、リボンは赤となる。
後は、上着にはこの学園のバッヂを付ける決まりだ。一年生は黄色、二年生は緑……というように、学年によって色が違う仕様だ。
「よっし、行こうか!」
「元気だなー」
寝起きは弱かったシュベルト様だが、顔を洗ったり準備をしているうちに、目が覚めたらしい。なんとも元気なことだ。
食堂に行けば、すでに大勢の生徒で賑わっている。朝からやっぱりしっかりと食べたいからか、食堂に来るのがほとんどのようだ。
なら、ノアリたちも探せばどこかにいるだろうか……とはいえ、時間は限られている。とりあえず、料理を注文して、と。
シュベルト様と2人で、朝食をとる。さすがに一夜過ぎたからか、昨日よりは緊張せずに食べることができている。
「そういえば、俺たちの組は一緒だったっけヤーク。俺はBだ」
「残念、俺はCだから、別々ですね」
「ちぇー」
3つに分けられた組は、それぞれA組B組C組となっている。実にわかりやすい。
A組が一番優秀で、上からA組B組C組……というわけではなく、組により実力分けはされていないらしい。あくまで、均一に分けられている。
「他に知った人がいればいいけど」
「そうですねぇ」
そんな会話をしつつも、食事を終える。食器を片付け、教室へと歩いていく。正直道はまだ覚えていないが、この人の波に身を任せていけばたどり着けるだろう。
お、ほら着いた。
「じゃ、また後でなヤークー」
「はいはーい」
やっぱり朝から元気だな、あの人は。
さてと。ここが俺の入る組か……まずは第一印象が大切だからな。前の人生じゃ、友達なんてのは故郷の村の中でしかいなかった。だから今回は、より多く人との付き合いを大切にしていきたい。
そんなことを思いながら、教室に入っていくと……
「……お」
すでに、それぞれ何人かのグループができていたり、ひとりでいる者もいる中で、ひときわ目立つ者がいた。いや、目立つ……とは少し違うか。
そこにいたのはひとり……いや2人だ。誰も近寄らない、というよりは、誰も近寄れない、という表現が正しい。
「よ、ノアリ、ミライヤ」
「あら、ヤークじゃない」
「ヤーク様、一緒の組だったんですね」
そこにいたのは、ノアリとミライヤだ。ノアリの家カタピル家は、貴族の中でも上位に値する……おいそれと近づく奴らはいない。今のように、遠巻きに羨望の眼差しを送っている。
そしてミライヤは、平民……平民にわざわざ近づこうという奴も、いないわけだ。ノアリとは逆の意味でな。そんな人物が一緒にいるのだから、周りは近づくどころかどんな目を送ったらいいかすら迷っている。
「よかった、知ってる人がいた」
「てことは、この組にいるのは私とミライヤ、あんただけってことね」
「他の人は?」
教室内の様子を見るに、知った人間はノアリとミライヤのみだ。でなければ、ここに一緒にいるはずだ。B組のシュベルト様が別なのはわかっていたが……
残るリィ、アンジェさん、リエナは別の組だってことだ。
「リィは、A組です。あと確か、アンジェ様はB組だと言ってました」
「てことはアンジェさんはシュベルト様と一緒か」
「リエナはA組って聞いたわ」
ふむふむ……ということは、
A組、リィ、リエナ
B組、シュベルト様、アンジェさん
C組、俺、ノアリ、ミライヤ
ってことか。
「……」
「心配か?」
「え? あ……はい」
無言でうつむくミライヤに、問いかける。ミライヤも素直にうなずく通り、心配なのは当然だろう。この、貴族だらけの学園でたった2人の平民、そのうちひとりが別の組に行ったのだから。
平民が貴族にどういった扱いを受けるか、身をもってわかっているミライヤは、リィも同じ目に遭うんじゃないかと心配なのだ。
さすがに、学園内でそんなことはない……とは言いきれない。入学試験の日でさえ、ああだったのだから。
「一緒の組になった、リエナに任せるしかないな」
シュベルト様の侍女、リエナ。彼女は物静かで、あまりしゃべることはなかったが、他の貴族のように平民を無下に扱う……なんてことはなさそうだった。
それはシュベルト様とアンジェさんも同じ。昨夜はその2人と一緒だったから、蔑みの態度を引っ込めていた……わけじゃないと、信じたい。まあ、友達ってわけじゃないからリエナが他の貴族からリィを守る責任もないんだが。
というか、ミライヤとリィに対してどこか、優しげな目すら向けていたような……
「あんま変なことにならないといいけど」
知り合ったばかりとはいえ、ミライヤの友達。なにより元は同じ平民だし、心配になってきたな。
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