復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

文字の大きさ
139 / 307
第6章 王位継承の行方

明かされる真実

しおりを挟む


 ……キャーシュとの一件があった、翌日。昨日は情けない姿を晒してしまったが、あのことは一旦忘れるとしよう。

 昼休みの時間、俺とノアリとミライヤは、中庭で昼食を取っていた。ノアリとミライヤは、クラスの女子と食べることもあるし、俺も男子と食べることはあるが……今日は、この3人だ。

 最近、教室内の雰囲気はいい。俺やミライヤに積極的に話しかけてくれる人も増えたし、こちらから話しかけてもわりとフレンドリーに返してくれるようになった。

 今日は購買で買ったパンを食べつつ、他愛ない会話をしていた。


「……あ、ヤーク様。それにカタピル様に、ミライヤさん」

「ここにいらしたんですね」


 ふと、俺たちに話しかけてくる声が。声の方向に顔を向けると、2人の人影が立っていた。この1年、同じ組の中で、特に仲良くなった2人だ。

 男子の方は、タルロー・ピラカ。背が高く、スキンヘッドな上にガタイもいいため威圧感があるが、裏腹に性格はおとなしく、物腰柔らかい感じだ。ぶっちゃけ、初めて会ったときは殺されるんじゃないかと思った。

 女子の方は、ナーヴ・エリナテッゼ。腰まで伸びた赤みがかった茶髪を、なぜか後ろで4本にまとめている。タルローとは逆に背は低く、ミライヤとはまた違った小動物感がある。距離の詰め方がうまい。

 この2人は幼なじみのようで、よく一緒にいる。そんな2人と話すようになったきっかけは、購買だ。俺が、なんのパンにしようか悩んでいたところ、タルローがオススメのものを教えてくれた、というもの。


「ナーヴにタルローじゃない。どうかしたの? なにか用?」

「いえ、用というわけでは……ただ、今日はいい天気なので、昼食にいい場所を探していたところです」

「そうしたら、3人を見つけたというわけで」


 ナーヴは距離の詰め方がうまく、ノアリとミライヤもあっという間に仲良くなった。友達も多いようで、ナーヴの友達からさらに友達を……と、人の輪が広がっていく。

 人脈が多いのだ、この子は。


「じゃあ、2人もここで食べたらいいよ」

「! よろしいのですか?」

「私たちもう食べちゃったし、それでもいいならだけどね』


 人数が増え、3人から5人の空間に。人数が増えれば、それだけ話の種も増えるというもの。食事をしながらも、話に花を咲かせていく。

 なんとも平和な、1日……そう思うには、充分な空間であった。そう……昨日の忠告にも似たクロード先生の言葉など、まったく頭から抜け落ちてしまっていた。

 もっとも、覚えていたところでどう対処もできなかっただろうが……その時は、突然、訪れた。


『……あー、あー。聞こえているかな』


 それは、どこからともなく聞こえてきた声だった。それは、聞き覚えのある声……しかし、どこかノイズの入ったような、声だった。

 どこから聞こえるのか……声に反応したのは、俺だけではない。ノアリもミライヤもタルローもナーヴも。それぞれキョロキョロしている。だが、やがてミライヤが「あ」と声を漏らし、ある場所を指差す。

 その先にあったのは、なんてことはない……校舎の、壁だ。しかし、おかしい……少し薄汚れた、それでも白くきれいな壁には、なにやら映像のようなものが、表示されている。


「なにあれ……」

「スクリーン……みたいですね」


 ノアリの呟きに答えるように、タルローが言う……それは、なんとも的を得た答えのように思えた。スクリーン……校舎の壁を、幕として映像が映し出されている。

 しかも、映像があるのはそこだけではない。声はあちこちから聞こえる。よくよく辺りを見渡すと、木に、ベンチに、窓に、別の壁に、さらにはなにもない空に……あらゆるところに、映像が映し出されているのだ。

 そして、そこで喋っている人物こそ……


『えぇと、声だけじゃなく映像も、流れているんだよね。……こほん。どうも、皆さん。はじめましての人も多いと思います、なので簡単に自己紹介を。僕は、ゲルド王国第二王子、リーダ・フラ・ゲルドです』


 ……本人が名乗った通り、このゲルド王国の第二王子である、リーダ・フラ・ゲルド様であった。彼が、どこかにいて、それを映像としてなんらかの手段で、あらゆる箇所にスクリーンのように、映し出しているってことか?

 その光景に、周囲の生徒もざわついている。いったい、なにが始まったのか……そもそも、これはどんな方法で行っているのか。みんな、わからない。

 っそして、そんな時間の中でも、スクリーンの中のリーダ様は言葉を続けていく。


『挨拶は、あまり長くない方がいいかな。僕は、皆さんご存じの通り、王族ではありますが、優先的な王位継承権は別の人が持っています。そう、王位継承権は我が兄、ゲルド王国第一王子であるシュベルト・フラ・ゲルドが持ってます!』


 誰もが周知している事実を、リーダ様は言う。そんなこと、なぜわざわざ、今更、こんな方法を使ってまで宣言するのか。

 ……俺の中に、言い知れぬ不安が沸き上がる。


『しかし、我が兄シュベルトは、この国の次期国王には、ふさわしくない!』

「……ねえ、ヤーク、これって……」

「あ、あぁ……」

『なぜならば!』


 言葉は、だんだんと熱を帯びていく。このままでは、このまま喋らせていては、まずい……そう、わかっているのに、止める手段がない。リーダ様がどこにいるかも、わからないのに。

 そしてついに、リーダ様は、決定的な言葉を口にした。


『シュベルト・フラ・ゲルドは、国王と正妃の息子ではないからだ! シュベルトは、国王である我が父、アルベーラ・フラ・ゲルドが、側室に産ませた子供だ! ゆえに、シュベルトに王位継承権などありはしない!』


 ……そう、決定的な、言葉が、語られた。シュベルトが、国王の子ではあっても正妃の子ではないと。

 リーダ様には、注意が必要だと、クロード先生は言っていた。それ以前に、俺もそう思っていた。しかしまさか、このような事態に、なるなんて。俺は……いやきっと、誰にも、予想なんてできなかった。

 だってそうだろう。確かにシュベルトの出自を明かせば、王位からはかなりぐらつく。それほどの真実なのだ。だが、シュベルトの出自を明かすということは、国王の……ひいては国の、恥を明かすも同じこと。普通に考えれば、そんなこと、なんの利にもならない、明かすはずがない。

 それを、まさか同じ王族の……よりにもよって、国王の息子から、暴露されるなんて。


「……!」

「ヤーク!?」

「ヤーク様!」


 次の瞬間、俺は走り出していた。

 その場にいたノアリとミライヤは、シュベルトの事情を知っているが、タルローとナーヴは、そうではない。いきなり明かされた真実に、混乱している。いや、これが真実だということすらわかっていないだろう。

 だが、人の心理とは怖いものだ。シュベルトの出自が明かされれば、遅かれ早かれ、彼になんらかの……それこそ、罵倒や危害が加えられるかもしれない。

 シュベルトは国王と女王の子として、次期国王として国民に発表していた……言ってしまえば、それは国民すべてを騙していたということなのだから。


「シュベルト……!」


 俺は、リーダ様と同じくどこにいるかもわからない、シュベルトを探すために走っていた。どこにいるかはわからない、だがおおよその見当は、ついている……!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

処理中です...