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第6章 王位継承の行方
復讐の心
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『21年……21年だ。貴様ら人間に猶予をやろう』
『猶予だと? 負けた奴が、ずいぶんえらそうじゃないか。それに、お前はもう消えるんだ』
『ははは、21年の月日が経った後、我は再び甦る……その時が、楽しみだよ』
『寝言は寝て言え……永遠の眠りの中でな』
…………
『はぁ……終わった、のか?』
『あぁ、そのようだな』
『やった……やったのよ、私たち! 勝ったんだわ! それに、生きてる!』
『ねぇ、魔王の、最期の言葉って……』
『なあに、ただの負け惜しみさ。魔王を討ち滅ぼすって言う、この国宝でとどめをさしたんだ。それに、ちゃんと手応えもあった……巨悪は、消えた』
…………
『これで、全部終わりだ……じゃあなライヤ、今までごくろうさん』
『え……』
ズシャッ……
…………
「っ……はっ……」
懐かしい記憶が、頭の中に残っている。まるで、本当に体験したことであるかのように、感情もこの胸の中に残っている。
目が、覚める。頭の中に流れた映像は、声は、鮮明に残っている。久しぶりに見たな……あの、夢を。俺が殺される直前の、記憶を。
最近は、こういう夢を見る頻度は減っていた。それは、俺がこの体での生活にようやく慣れてきたからか……あるいは、あり得ないが復讐の気持ちが薄らいできたのか。
「……ふぅ」
……いや、それはあり得ないな。今だって、あの男を殺したくて仕方がない。憎悪の炎は、確かに存在している。
俺が、あの男……今は父親であるガラドを殺すにあたって、注意すべきは2つ。ひとつは、単純に実力の差。あいつは、『勇者』と呼ばれた男だ、そう簡単に殺せる相手ではない。
だが、セイメイと戦ったおかげだろうか、以前よりも自信がついているのが、わかる。ひとりでは決して勝てなかった相手だが……そんな相手との戦闘には、意味があった。
「……」
もうひとつは、俺があの男を殺したとして……その後、殺したのが俺だとバレないようにしなければならない。
俺はこの1年で、ずいぶん学園からの信頼も得たはずだ。特に、『魔導書』事件が大きい。それを抜きにしても、できるだけ人との関わりを大切にしてきた。明るく、気のいい奴だ。そんな奴が、まさか実の父親を殺したなんて、誰も思わないだろう。
学園での生活は、俺が第2の人生を楽しみたいからとは別に、そういった信頼を積み上げるための意味合いも、あった。
そう、おかげで俺が奴を殺したとして、疑われないための地盤は出来つつある。そして、実力も確かについてきた。地盤がある時点で、学園に在籍しているタイミングで事を起こしたほうが、いいかもしれない。
おそらくは……この1年以内に、ガラドとの因縁は決着することになるのではないか。そんな予感が、した。
「すぅ……」
「!」
だが、今は……シュベルトの件を、なんとかしないとな。友達として、助けたい……あと、打算で助けるわけではないが、シュベルトに恩を売っておけば万が一のとき、庇ってくれるかもしれない。
……さて。久しぶりにあの夢を見たのは、やっぱり今日の出来事が原因だろう。
『そうとも。奴は力を欲しておった。じゃから魔石を与え、こう告げてやったのよ……『魔導書』の存在及び在処を』
セイメイの、告白……あの男のせいで、ミライヤは傷つき、ミライヤの家族は亡くなってしまった。
あの瞬間、セイメイに感じたのは確かに……こいつを許せないという、憎悪の気持ち。すなわち復讐心だ。
セイメイへの復讐心が、俺の中にあった復讐心を呼び覚ましたのだろうか。
「……もう、朝か」
目が覚めてはしまったが、カーテンから差し込む光がある。つまり、朝日が登ってきたってことだ。
目覚めは最悪だが、今一度自分の目的を確認できた。シュベルトの件が片付いたら、俺は本格的に挑む。
そう、心に誓った俺は、予想もしていなかった……このあと起こることになる、大騒動を。
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