復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

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第7章 人魔戦争

竜族の血

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「えっと……その、ノアリ様の力、というのは、コントロールできないんでしょうか?」


 申し訳なさそうにするノアリを見て、聞いていいか迷っていたらしきミライヤだったが、恐る恐る手を上げ、口を開く。

 それは、俺が考えていたことと、同じ内容のものであった。


「それは……ノアリ次第だろうな」

「……私、あのときは頭がぼーっとして。ただ、ここで私が負けたら、みんなひどい目にあうって考えたら……」

「……なるほどな」


 ノアリ自ら、あの力を引き出したわけではない。

 俺も経験があるが……あまりに怒りが湧き上がると、自分の思った以上の力が出る。ただ、それをせえいぎょするとかは考える前に、目の前にいる敵を倒すためだけに力を振るう。

 ノアリの場合も、そうなのだろう。彼女の場合、思った以上の力が明確な形として出ただけで。


「力に慣れれば、使いこなせることもできるだろうが……今は、そのような時間はないだろうな」

「じゃあ、私、どうしたら……」


 心配なのだ、ノアリは。自分の中にある強大な力を、制御する術がないことが。

 もしかしたら、また魔族との戦いになった時……同じようなことが起こるのではと。


「なぁに、また暴走したら殴って止めてやる」

「……」

「冗談だ、そんな顔をするな」


 冗談に聞こえないぜクルド……


「こほん。だが……お前はおそらく、その力を制御する術を、無意識のうちに手に入れているはずだ」

「え、どういうこと!?」


 改めて告げられるクルドの言葉に、ノアリは前のめりになって話の続きを促す。

 ノアリ自身が力を制御する術を知らないというのに、もう手に入れているというのはどういうことだ?


「以前……半年程前か。この辺りで、強大な魔力を感知した。わかるか?」

「半年……強大な魔力……」


 クルドは、半年前に強大な魔力を感知したという。それを聞いて、考え込む。

 うーん……半年前の、か……


「あ、シン・セイメイ!」

「うむ。その時に、一瞬だが、竜族の気配も察知した。今思えば、あれはノアリ……正確には、ノアリの力が覚醒したことを意味していたのだろう」

「へ。わ、私?」


 シン・セイメイとの激突。あの時、竜族の気配を感知していただって? それも、一瞬。

 それを聞いて、俺の中で点と点が結びついていく。セイメイにやられても、ノアリはほぼ無傷だった。

 竜族は頑丈な皮膚が特徴だという。


「セイメイとの戦いの最中、ノアリの中の竜族の血が目覚めていた?」

「そうだ」

「え、でも……あの時、私別に意識が飛んだりとかなかったわよ? そ、それとも、自分でも気づかないうちになにかしてたの!?」

「そうではない。あの時、ノアリは初めて竜族の血を覚醒しつつ、制御していたのだ」


 ふむ……セイメイとの戦いで、ノアリは竜族の血を覚醒させた。初めてでありながら、今回のように暴走することはなかった。

 それは、なぜか。


「え、制御って……でも、ホントに竜族の血が覚醒してたのか、自分じゃわからないし……」

「竜族の……いや、竜族に限った話ではないが。人間族以外の一部の種族の特徴として、"負わせた傷に対しての、魔力による回復を遅らせる"というものがある。心当たりはないか?」

「負わせた傷……回復……あ!」


 さらなる説明を聞き、俺は当時のことを思い出す。

 セイメイは、腕を斬られるほどの深手を負っても、魔術によりそれを即座に回復させた。

 だが、ノアリに斬られた腕は、回復させなかった……いや、できなかった?


「あれは、ノアリが竜族の血を覚醒させたから……?」

「竜族に負わされた傷、それを回復させるには時間を要する。人間が負わせた傷ならば、セイメイほどの男が放置しておく理由はないからな」


 そういうことか……セイメイが腕を斬られても、治さなかった理由。治せなかった……それこそが、ノアリが竜族の血を覚醒させた理由になる。

 ……ん? クルドは、人間以外の一部の種族って言ったよな。


「……」


 その可能性に気付いたのだろう、ミライヤも表情を硬くしていた。

 あの時……ミライヤも、雷の如き剣でセイメイの腕を斬り落とした。それを、セイメイが治さなかったことに。いや……治せなかったのだとしたら?

 それだけじゃない……俺も、最後に負わせた傷があった。だが、他の傷は治したのに、最後の一太刀だけ、治さなかった。


「……?」


 俺も、それにミライヤも、竜族の血を体内に得た経験なんてないはずだ。

 ならば……あの現象は、いったい……?

 セイメイがこちらを混乱させるためにわざと治さなかった? なんのために?

 もし、そうでないとしたら……本当に、傷を治せなかったのだとしたら……俺とミライヤは、いったい……?


「じゃあ、なんであの時私、力を制御でき……というか、暴走しなかったのかしら」

「ふむ……そうだな。たとえば、特定の人物への強い想いから、力は覚醒し且つ力を自身のものへと昇華した、とかな」

「とく、ていの……?」

「あぁ。今回のように、ただ人々を守る、といった漠然なものではなく。強い想いだ。その者を守る……役に立ちたい。そういった強い想いは、時として血の暴走をも凌駕する。心当たりは……」

「べ、別にないわよ!」


 考え事に没頭していたためか、ノアリがクルドになにかを聞いているその内容は、わからなかった。

 ただ、その後ノアリは俺を見ては、顔を赤くしたり睨んだり、落ち着きのない様子だった。
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