復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

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第7章 人魔戦争

魔族への決定打

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「ちっ……!」

「よっ……」


 拳と蹴りの衝突、数秒の後、クルドと魔族は互いに距離を取る。

 クルドがこうも、険しい表情をしているのも珍しい。いや、元々険しい顔つきではあるんだけど、それとはまた違って……

 苦々しいというか、そんな雰囲気のものだ。やはり、相手の魔族の実力が、かなり高いということだろうか。


「竜族がここにいるとは、思いませんでしたよ。ま、たった一体でなにができるとも思えませんが」

「舐められたものだな」


 余裕を見せる魔族。竜族が相手だというのに、あの余裕はなんだ。自分の実力によほどの自信があるのか、それとも……

 改めて構えるクルドは、気力を高めていく。隠していた翼や尻尾が露になり、味方だとわかっていてもその覇気に押されそうになる。

 一旦は人間サイズにまで戻っていた腕。その、両腕の筋肉は膨れ上がり、気のせいだろうか体自体も一回り大きくなっているように見える。


「おぉ、これはこれは……」

「行くぞ……!」


 完全な戦闘態勢。姿勢を低くし、魔族へと迫るために地面を陥没させるほど、踏み込みを強くするクルド……

 だったが……


「っ!?」


 不意に、クルドの動きが止まる。飛び出そうとした足が、動かないかのように……俺からは、はっきりと見えた。

 クルドの影から、飛び出すように伸びた手が……クルドの足を、捕まえているのを。


「なん、だこれは……!?」


 影から伸びるのは細腕だ。にも関わらず、クルドの力では簡単に振りほどけないほど、腕力が強いようだ。

 その、影から……徐々に、なにかが出てくる。


「! 魔族か……!?」


 クルドの影の中から、現れたのは……あの、黒い魔族だ。白銀の魔族と、その色を除いて外見はそっくりだ。

 以前……というか昨日。国中の人間の影から、あの魔族が現れたのだ。そして、人々は為す術もなく捕まえられた。最初から影の中に潜んでいたのか。

 それとも……


「それは私の能力のようなものでして。影を対象として発動させるもの……本体と同等の力を持つ魔族を、生み出すというものです」

「本体と、同等?」


 クルドの影から現れた、魔族……それは、魔族が影に潜んでいたわけではない。影から、魔族を生み出していた?

 しかも、対象となる相手の影と、同等の力を持つ魔族。

 つまり、クルドの影から現れた魔族は……


「クルドと、同等の力を?」


 それは、考えただけで恐ろしいことだ。そりゃ、あの影の魔族が立ちはだかる可能性は、考えていた。それこそ、かなりの実力を持つ魔族だという予想も。

 だが、こうして実際に、同等の力を持つと明言されると……


「むっ……!」


 影から出てきた魔族は、クルドに襲いかかる。魔族とクルドの体格差はかなりある……にも関わらず、魔族と組み合うクルドは、魔族を押しきれない。

 互いに手を組み、相手を押し切ろうと踏ん張る。力が同等というのは本当なのか、2人の力は互角のようだ。

 それでも、体格差からクルドの方が有利であるはず……


「って、見てる場合かよ!」


 今、クルドは動けない。ならば、ここは俺がやるしかない。

 俺の方にも影から魔族が出てくる前に……決める!


「はぁ!」

「いい気迫ですねぇ」


 剣を引き抜き、魔族へと振り抜く。予想はしていたが、やはり魔族は素手で……いや、腕で受け止める。

 鎧のような体。しかしそれは、鎧のようなだけで魔族の体の一部だ。刃を通さないなんて、相当に硬い!


「どうしました? なにか策があるのでは? それとも、同じことの繰り返しですか?」

「やかましい!」


 俺は、一旦距離を取ってから再び突撃。今度は、一度きりじゃない……何度もの剣撃を、叩き込む!

 我竜の太刀……!


「"竜星群"!」


 魔族へのリーチ内に入り、剣撃による鋭い一撃を放つ。それは魔族に避けられるが……続けて二撃、三撃と繰り返し剣撃を振り下ろしていく。

 まるで見えているかのように、魔族は剣撃を避け、防ぎ、俺の攻撃をうまくかわしていく。が、俺の攻撃もどんどん早くなる。

 次第に、魔族の防御も追いつかなくなっていき……


「せぇえや!」

「!」


 カンッ……と、魔族が防御に回した右腕を弾き飛ばす。左腕も今からでは防御に間に合わない……胴体はがら空きだ!

 ここを、攻める! 半端な攻撃ではダメだ。我竜の太刀……


「無駄ですよ、あなたの剣では私には……」

「"竜馬"!」


 ザンッ……


「ぬっ……!?」


 できるだけ素早く、それでいて力のある一撃を、魔族の胴体へと振り下ろす。魔族の右肩からななめ下へと刻まれる一太刀は、これまでとは違う手応えを感じた。

 実際に、今までは剣はただ弾かれるだけだったが……今のは、確かに斬撃を刻んでいる。


「っ、ぐ……」

「どうよ!」


 魔族は苦しそうに、呻く。ようやくその余裕は表情を崩してやった。仮面のような顔だから実際には表情が変わったかはわからないが。

 だが……今度は、魔族が"自ら"、距離を取った。


「これは、予想外ですね。昨日の今日でなにが……それとも、ようやく本気を出してくれた、ということでしょうか?」

「やかましい。次は体を切断するつもりでやる」


 いける……そう、確信した。今ならば、魔族に決定打を、与えられる!
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