26 / 522
勇者パーティーの旅 ~魔王へと至る道~
第26話 人の恋路ほど面白いものはない
しおりを挟む「じゃーねー!」
魔獣を倒し、魔物も一掃した私たちは、今度こそ集落を後にする。姿が見えなくなるまで手をブンブン振っていたサシェが、なんだかほほえましい。
今度またここに来るときは、魔王を倒したその帰り道だ。
「しかし、チームワークも形になってきたじゃないか。さっきのはなかなかだったぞ?」
先ほどの魔物&魔獣との戦いで、事前に打ち合わせたわけではないが私たちはそれなりに協力プレイはできたと思う。師匠にも褒められたし、自信が持てる!
個々の力は、言うまでもなく相当高い。けれど、そこにチームワークという武器が加われば、私たちはもっと強くなる。たとえ相手が、魔王という強大な相手だとしても……私たちは、このチームで必ず勝つ!
そのために、仲良くなる……以外にも、戦いの中で呼吸を合わせることができればいいんだけど。無論、先ほどの魔獣との戦いみたいにできたらいいんだけど……
事前に打ち合せできるものでもないし、意識してもできるものではない。なかなかに、難しいものだチームワークって。
でもきっと、チームワークっていうのは……作るものじゃなくて、自然と出来るものなんだろう。私は、そう思う。
一緒に過ごしている時間は、短くない。三ヶ月という期間は、私たちの絆をより深めたはずだ。
……それに……三ヶ月という期間で、絆以外の感情を芽生えさせた人物も、ここにはいる。
「あ、ボルゴー、食べかすついてるよー」
「えっ、あ、あぁ、ありが……っ!?」
たとえば食事の時間、ボルゴの口端についていた食べかすを、隣にいたサシェが摘まみ取る。そこまでは、いいのだ……直後、その食べかすをサシェが食べてしまう。
その行為に、お礼を言おうとしたボルゴは固まり……サシェはニコニコだ。サシェにとってはなんでもない行為が、純情なボルゴには刺激が強いらしい。
なにせ……ボルゴは、サシェが好きなのだ。仲間的な意味ではなく、男女的な意味で。サシェを好きになったのだと告白されたときには、心臓が止まりそうになったよ。
まさかあのボルゴが、女の子を好きになるなんて……いやまあ、ボルゴもお年頃なんだろうけどさ。おっと、なんか母親目線っぽくなってしまった。
とはいえ、わからんでもない。サシェは、育ってきた環境のせいもあり同性異性関わらず距離感が近い。それに今みたいに、食べかすをぱくり、なんてされてしまったら男の子としては勘違いしてしまうものなのだろう。
こんなときに、そんな浮わついた恋愛なんて……と思うかもしれない。でも、実は……その浮わついた恋愛感情が、この旅の数少ない癒しになっていたりする。
だって、娯楽もなにもないこんな旅の中じゃ、人の恋路なんてなににも勝るスパイスだよ。ただ……
「うわ! 魔物だよ!」
くそう、空気の読まない魔物め……!
いつ現れるともわからない魔物は、私の僅かな娯楽さえも邪魔をする。ええい、こんな苦難続きの旅なんだ、ちょっとくらい楽しんでもいいじゃないか!
「うらぁ!!」
「アンズ、張り切ってるなぁ……」
だから私は、娯楽を邪魔された恨みやなかなか前に進まないボルゴの恋愛事情に感じるもやもやのもどかしさを拳に乗せ、魔物にぶつける。数体の魔物が、面白いくらいに吹き飛んでいく。
恋愛に関しては、本人たちの問題だ。けれど……なにが起こるかわからない、危険と隣り合わせの旅をしている。伝えたい想いがあるなら、伝えたほうがいいに決まってる。
そんなことを考えていた、ある時……みんなが就寝している中、私は目を覚ました。ううん、ちょっと暑苦しいかも……
その原因を探る……より前に、原因が明らかになった。サシェが、私に抱きついている。暑苦しいわけだ。寝苦しいわけだ。
サシェを起こさないように引き剥がし、すっかり目が冴えてしまったので少し、夜風に当たることにする。こうして一人で夜空を見上げるのは、いつぶりだろうか。
みんなからあまり離れない程度に、近くを歩いていると……話し声が、聞こえてきた。まさか、私たち以外に人が? ……その考えは、即座に否定される。
聞き覚えのある声に、岩影から覗きこんだ声の主は……師匠と、ボルゴだ。こんな夜遅くに、男二人でなにを話して……
「……そうなんですか?」
「あぁ、俺にも経験はあるさ。だからボルゴ、後悔することになる前に、伝えたいことは伝えとけ」
ううん、途中からだから話の内容がつかめないな。なにか、大切な話をしてるのか? 後悔することになる前、って?
「後悔……」
「俺と同じ道を辿るなよ? 男ならどんとぶつかってこい」
あれあれ? 男ならどんとぶつかれ? うんうん、これってもしかして……
「ターベルトさん……」
「お前にはそれだけの勇気がある。それに、あいつには言葉にしなきゃ一生伝わらんぞ?」
「はは、そうかも、しれませんね。…………うん、決めました。僕、サシェに告白します!」
キターーー!!!
0
あなたにおすすめの小説
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる