異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~

娘の魔力

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 眼帯を外し、左目を露にする。エリシアの、左目を。

 エルドリエの目が見えないのが、残念だ。もしも、娘の目が別の人物のものになっていると知ったら、どんな顔をするのだろう。


「エリシアと……まるで、同じ……」


 娘の魔力と同じ魔力を前にしているだけで、こんな顔をしているのだから。


「ふぁ……あ、もういいのか?」


 ……ユーデリア、キミ今寝てたろ。

 隣から発せられた魔力に、目覚めたのだろうか。軽くあくびをしながら、ユーデリアは首を回している。


「ど、どうして……似てる、とかじゃない。これは、間違いなくあの子の……エリシアの、魔力。どうして……」


 エリシアと離れて、四、五年……それでも、娘の魔力はわかるってわけか。だからこそ、別の人間から、娘と同じ魔力が出ているのが理解できないのだ。

 魔力というのは、人によって微妙に違うのだという。なにがどう違うと言われても、魔法術師でも『魔女』でもない私にはわからないが……まあ、指紋と同じようなものと考えればいいかもしれない。

 魔力の波長……と言えばいいのか。それが似ているとされるのは、親兄弟など、身内の関係に限られると言うが、それでもまったく同じなのはまずあり得ない。

 エリシアに兄弟はいない。父親は亡くなり、エリシアの身内は今ここにいるエルドリエだけ。つまり、この場にいるエリシアの親族は、たった一人しかいない。

 その一人以外から、エリシアとまったく同じ魔力を感じるなど、あり得ないことだ……


「あなたは、いったい……」

「……私は、アンズ・クマガイ。ごめんなさいね、アン・クーマなんて偽名使って。でも、仕方ないでしょ」

「アンズ……クマ、ガイ? それって……」


 この人は、目が見えない。だから、本名を名乗らない限り、私の正体がバレることはない。幸い他の村人も、私の顔には気づいてなかったから、そこからバレる心配もない。

 だけど、名前を聞いた瞬間にこの反応だ。やっぱり、隠しておいて正解だった。


「この世界の……『英雄』の、名前……」

「……そう。そして、あなたの娘さんと一緒に旅をして……殺したんだよ。私が、この手で、エリシアを」


 ドゴォッ!


 次の瞬間、家の壁が壊れる。これは、私の仕業でもユーデリアの仕業でもない。エルドリエの仕業でも、なさそうだ。

 壁に穴が開き、その向こうから何人かの男の姿が見える。


「エルドリエ、大丈夫か!?」

「家の壁を壊したのはすまねぇ! けど、とてつもねえ殺意を感じたもんでよ!」

「あぁ、それに……この、バカでかい魔力は……」


 どうやら、壁を壊したのは村人たちらしい。まったく、いくら危ないだろうからって、人の家の壁を躊躇なく壊すなんて。

 どうせ魔法で修復できるから、とか軽く考えてるんだろうけど。


「おい、あんた! なんのつもりだ……エリシアの、知り合いじゃないのか!」

「いや、だからじゃないか? 俺たちを恨んでるエリシアから頼まれて、来たんじゃ……」


 来訪者わたしの放つ殺意に、みな混乱するばかり。中には、エリシアの依頼で、この村に復習しに来たんじゃないか、なんて意見もある。

 バカだなぁ……エリシアなら、あの優しい性格はともかく魔力なら、わざわざ人に頼まなくても村一つ滅ぼすなんてわけないよ。


「みんな、逃げて! この子は……」

「まあまあ、落ち着いて。そんなに騒がなくても、ちゃんと一人残らず殺してあげるから」


 エルドリエの体を、魔力で拘束。ついでにお口もチャックしておく。

 せっかくだ……いいことを、考えた。


「うわ、悪そうな顔」


 私の顔を見たユーデリアは、あきれたような声を出す。私、そんなに悪そうな顔をしてるかな?

 考えたこと……それは、母親エルドリエの前で、エリシアの魔力を使って村人を殺していく、というもの。自分の子供の魔力が、共に暮らしてきた人たちの命を奪うのだ……なかなかに、残酷だろう。

 ……今、自分の顔を見ていなくてよかった。こんなことを考えている自分の顔なんて、あんまり見たいもんじゃないからね。


「おい、あんた……」

「えいっ」


 ドォオオオッ……!


 村人たちを、一気に家の外に吹き飛ばす。その際、家の壁が余計に壊れてしまうが、まあ仕方がない。

 それでも、エルドリエと彼女の周辺は無傷だ。彼女には、私が村人を殺すところをちゃんと見といてもらわないといけない……


「……あー、目ぇ見えないんだったね」


 見せようと思っても、目が見えないのなら……今考えたことは、意味がないことか。

 ……いや、魔力を感じるのなら、近くで村人の魔力……つまり命が消えていく様子を、感じさせることはできるか。


「ぐっ……なにか知らんが、あいつは敵だ!」


 村人たちは、ようやく危機感を抱き出したらしい。それぞれが魔力を起こし、私に対して敵意を向ける。

 ……これは、すごいな。若い人も年寄りも。みんな、魔力の質が高い。さすが、エリシアが生まれた村って感じだ。

 これなら、マルゴニア王国の魔法術師隊なんて目じゃないかもしれない。


「我々を襲う目的はなんだ! あんたエリシアのなんなんだ!」

「答えるつもりがないなら、捕らえてゆっくり聞き出してやる!」


 目的、か……それを素直に話したところで、あなたたちは納得しないだろう。この世界への復讐なんて、あなたたちには理不尽以外の何物でもないのだから。

 捕らえて聞き出してやる、か……甘いよ。捕らえて、なんて甘い考えのままじゃ、すぐに死ぬよ。殺すつもりで、来なよ。
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