異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~

人殺しの悪魔

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「それが原因で、エリシアは……」


 魔力の暴走に始まり村人から遠ざけられ、呪術の発動により異端として扱われた。それが、エリシアがこの村で居場所がなくなった大まかな流れだ。

 呪術によりなにがあったのか、それをエルドリエの口から聞くことはできない。目が見えない彼女が、そこで起こった出来事を把握することは、人伝ひとづてでしか方法がない。

 ならば、エルドリエから聞き出すよりも……そこでなにが起こったか見ていた人に聞いた方が、起こったことの詳細がわかる。

 エリシアが十三の時に起こった出来事ならば、今から約十年前……大人ならば、ほとんどが知っているだろう。村人ならたくさんいるし、適当に一人捕まえて……


「エルドリエから、離れろ!」

「!」


 そこへ、怒りに任せた声を荒げ、先ほどまで気絶していたガルバラが襲いかかってくる。しかも、その手にはどこにあったか刃物を持っているのだ。

 魔法同士のぶつかり合いでは、勝てないことを悟ったか……それにしたって、刃物一つで向かってくるなんて、命を捨てているようなものだ。


「……」

「くっ……!」


 振り下ろされる刃物を、私は難なくかわす。ナイフを持つ方の手首を掴むだけで、刃が私に届くことはない。かなり力を込めている……私をエルドリエから引き離すためだろう。

 仲間意識が強いのは立派だが、それにしたって刃物なんかで襲ってくるなんて……

 ……あぁ、そうか。仲間意識強いからこそ、か。魔法を使わなかったのは、私に勝てないと悟った理由だけでなく、下手をすれば真下のエルドリエまで巻き込む可能性があったから。

 だから、無謀とわかっていても、単身で向かってきたと。


「優しい人、なんだね」

「! ぐ、ぐくっ……!」

「ガルバラ!?」


 手首を握りしめる力を、強める。それにより、ガルバラは表情を歪め、ナイフを持つ力も弱まっていくのがわかる。それでも、エルドリエを心配させないためにか大きな声を上げないことは、評価したい。

 が、このままだと手首を握りつぶしてしまう。ガルバラ自身それを察しているのか、なんとか抜け出そうともがいている。


「き、さまっ……!」

「そんなに睨まないでよ。そうだ、エリシアがこの村になにをしたのか、教えてくれたら解放してあげる」


 そんなに抜け出したいなら、交換条件だ。

 エリシアのことを、憎く思っているらしいこの男ならば、教えてくれるだろう。痛みから解放されるという交換条件があれば、なおさらに。


「エリ、シアの……? なぜ……」

「なぜ、か……知りたいからじゃ、ダメ?」


 この呪術が、エリシアと関係している。ならば、彼女がこの村でなにをしたのか、なにを生み出したのか……それを知っておく必要がある。

 遥か昔に失われたという、呪術をエリシアが、なぜ生み出すことになってしまったのか……わかるかも、しれない。


「っ、知りたい、か……く……知りたいなら、教えて……やる……っ」

「ほんとに? じゃあ……」


 ガルバラが、話す気になってくれると……私は少しだけ、手首を握りしめる力を緩める。それにより、ガルバラの表情は少しだけ穏やかなものに。

 そして、このガルバラの言葉に対して、エルドリエはなにも言わない。娘の過去を話されたくない……とは今さら思わないらしい。

 むしろ、改めて自分も聞きたいと、そう思っているのかも、しれない。


「エリシアは……あの娘は……悪魔だ」


 そう話すガルバラの表情は、さっきとは違った意味で歪んでいる。悪魔……それほどまでに、か。

 それをよくもまあ、母親の前で言えるものだ。だが、エルドリエの表情に変化はない……もしかしたら、すでに同じ言葉を言ったことが、あるのかもしれない。


「あの娘はあの日、村をめちゃくちゃにした……いや、それだけじゃない。あいつは……人殺しだ」


 語られる、エリシアの犯した罪……それは、エリシアが呪術を発動させた、十三の頃まで遡る。

 エルドリエが見ていた通り、エリシアはその日魔力を暴走させ、更なるどす黒い力、呪術を発動させてしまった。呪術それは、エリシアの背中から腕のような形をして生えていたのだという。

 黒い腕……まるで、私の右肩から生えたものと同じだ。しかし、違うのは……それは、村人たちにも見えたということ。不可視の私のものとは、違う。

 どす黒いそれは、村中をめちゃくちゃにした。建物を怖し、地面を抉り、植物を枯らせ……そして事態は、それだけに収まらない。

 黒い手は、周囲を破壊していく。エリシアが動こうが動くまいが関係ない、腕という形を模しただけのそれは、自由自在に伸び、移動していく。腕を倒そうと応戦したらしいが、魔法は通用しなかったという。

 そしてついに、あってはならないことが起きた。腕を出している根元、つまりエリシアを止めるために、一人の男性が近づいた。腕は他の村人が引き付けてくれている。よってその時のエリシアは隙だらけ……

 そう、思っていた。


 ズボッ……!


『……ぇ……』


 瞬間、男性の腹に穴が開く。腹部には、腕が貫通し……それが、男性の腹部を貫通させたのだということは明らかだった。

 エリシアの背中から生えた、二本目の腕が、男性を襲ったのだ。その男性は、自らを回復魔法で治癒するものの……そのかいなく、命を落とした。

 それを皮切りに、エリシアからは一本、また一本と腕が出現し、次々村を、人々を蹂躙していった。


「……それから、好き勝手にここを荒らすだけ荒らしておいて……満足したのか、それは消えた」


 どれほどの時間、逃げていたかわからない。だが、それは突然終わりを告げる。村人を襲っていた腕は消え、そこにはエリシアが倒れているのみだったという。

 結局、どうしてそんなことが起こったのかわからない。なぜなら、エリシアは呪術が発動してからの間、なにも覚えてはいなかったのだから。
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