異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~

元気すぎるおっさん

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「燃えろ燃えろ燃えろ……さあ燃えろ!」


 その掛け声……かはわからないけど……が大きくなる度、不思議なことに剣を纏う炎も大きくなっていく。なんだかあれは、魔法とかそういった部類ではない気がする。

 炎はどんどん大きくなっていき、真っ赤に辺りを照らす。あれじゃ、剣を振るっただけでも炎が飛び散るだろうな。


「えや!」


 グラジニは剣を、振るう。それにより凍りついた地面は溶けていき、また熱気が周囲の温度を急激に上昇させる。

 振るったことにより放たれる飛ぶ斬撃は、燃え盛り威力を増している。剣ってのは基本接近戦だけど、ある程度の実力者になれば、距離なんて関係ないのだ。


「こん、の!」


 それを私は、魔力の壁で受け止める。いくら威力が高くなろうと、この魔力を越えることはできない。

 ……壁だと斬撃は防げても、熱気までは防げないから熱いんだけどね。


「ガルルルァ!」


 しかし、その瞬間ユーデリアは、グラジニの背後へと移動する。氷狼の速度はたいしたものだ……隙をつき本気になれば、捉えられる者など、そうはいないのではないだろうか。

 今も、グラジニが斬撃を放った瞬間を見計らった。炎の帯びた斬撃は、その威力を増すと同時に、燃え上がる炎により視界を一瞬赤く奪う危険がある……多分。

 そこに生まれた、わずかな隙。それを観察して、ユーデリアは動いた。


「取った……!」


 ギラリと光る爪が、グラジニの頭へと振り下ろされる。今から振り向き、防御に動いても間に合わない。これで……


「甘いわ!」


 しかし、グラジニはその場でしゃがみ、横凪ぎに放たれたユーデリアの爪をかわす。まるで、背中に目でもついているかのように、完璧なタイミングだ。

 さらに、空打ちするはめになったユーデリアへ、振り向き様に剣を振るう。その際、炎が周囲に散り、ユーデリアの身にも散っていく。


「あつっ……!」


 ユーデリアの冷気をもってしても、その熱気は耐えられるものではないらしい。すぐに飛び退く、が……それをグラジニは許さない。

 後退するユーデリアを追いかけ、剣を振るう。その剣擊に一切の乱れはなく、ユーデリアの体を少しずつ、傷つけていく。


「くっ……!」


 切り傷に、火傷。それらが、短い時間でユーデリアの体に刻まれていく。完全に、グラジニのペースだ。

 その動きは、さすがは『剣星』の父親だと言いたくなるほど。


「って、感心してる場合じゃない……か」


 さっきの炎の魔物といい、ユーデリアには相性の悪い相手ばかりだ。

 私は、二人の攻防に割って入るためにダッシュ。魔力で全身を強化すれば、火傷なんかを気にする必要はない!


「せい、や!」


 狙いを定め、グラジニに向けて拳を放つ。が、それは直接ではない。大気を打ち、それを衝撃波として放つためだ。

 拳によって放たれる衝撃波は、狙い狂わずグラジニへと迫る。それを黙って受けるわけもなく、グラジニは剣で切り裂くが……その一瞬の隙に、ユーデリアが距離を取る。

 それを目で追い、再びユーデリアを追撃するかと思ったが……次に狙いを定めたのは、私だ。

 村は人が生きるのも貧しい状態だってのに、このおっさん元気すぎだろ!


「覚悟!」

「うおっ!」


 距離を詰められ、斬撃を振り下ろされる。刀身(それ)を蹴り流すことで直撃を避けるが、魔力で強化してても多少なり熱いものは熱い。

 さらにもう一本の剣を振るうため、今度はそれを片手真剣白羽取りで受け止める。蹴り流した剣は足で地面に押さえ込み、お互いの力が拮抗しあった状態に。


「ぐ、ぬぬ……!」

「うぅおぉ……答えろ、元『英雄』! 『剣星』と呼ばれる男がどうなったか、貴様は知っているはずだ!」


 互いに睨みあったまま、不意にグラジニが叫ぶ。『剣星』……つまりグレゴの安否を。

 聞きたいことってのは、これか。


「聞いて、どうするのさ……」

「あいつは、私の息子だ……息子の安否を気にしない親が、どこにいる!」


 あっさりと、『剣星』が自分の息子だと暴露。まあ、隠す意味もないだろうが……


「魔王討伐の旅を終えたあいつは、この村に帰ってきた! その時は元気な姿を見せてくれたが……以来、まったく連絡が取れん! 貴様、なにか知っているな!」


 ……『英雄』であった私ならば、共に行動していた『剣星』が今どうなっているか知っているはずだというのか。むちゃくちゃな考えだ。

 それとも……すでに私がグレゴを手にかけたことを、うっすらながら察しているのか。

 私が、以前の仲間が破壊行動こんなことをしているのに、グレゴが放っておくはずがない……だからこそ、すでに私がグレゴと会ったのではないかと、思っているのか。

 どっちにしろ……私とグレゴがすでに接触しているのは、正解だ。そして、その結末は……


「あいつは、『剣星』になった功績を讃えられ、その稼ぎをこの村のために使っていた。だが、ある日その仕送りがぱったりとやんだ……なにか、あったとしか思えん!」


 なるほど……グレゴと連絡が取れないってのは、そういうことか。

 この貧しい村は、グレゴがマルゴニア王国で『剣星』となり稼いだおかげで、一時貧しさから脱したのだろう。だけど、その仕送りがなくなり、村は貧乏に逆戻り。

 あの生真面目な男が、途中で仕送りをやめるなど……なにかあったとしか、思えない。


「あいつを、息子をどうした!」

「……わざわざ言う必要、ある?」

「っ、ぐ……!」


 私の返答は、少なからずグラジニに動揺を与えたようた。その、僅かな隙を見逃さず……私は、グラジニの腹部を思い切り蹴りあげる。

 硬い腹筋であったが、今の私にはそんなもの、あってないようなものだ。


「ぐぁ、あっ……!」


 僅かに、空中へと浮き上がる。再度出来た隙……それを見逃すことなく、ユーデリアは飛び、額から生えた角でグラジニの腹部を突き刺した。
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