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もう一つの異世界召喚
危険な力
しおりを挟む勇者召喚の日付がわかり、それに向けてケンヤたちは、主に体力や知識などをつけていった。なにをするにも、まず必要となるのはこの二つ。これはケンヤだけでなく、魔族たちにも同じことが言える。
これは、今さらということはない。むしろ明確な日付が明らかになったからこそ、改めてやることに意味があるのだ。
「……結構、筋肉ついてきたな」
そのおかげか、この世界に来た頃に比べれば、体格はまるで別人のようになっていた。筋肉もついた以上に、肩回りなど一通り大きくなった。
それに、魔力とのシンクロ率も凄まじいものがあった。魔力と魔法は言い方が違うだけで、中身は同じものだ。そもそも、魔法はその源の力のことを魔力という言い回しをすることが多い。
聞いた話によると、人間は魔法の適正は全員が持っているが、それを発現することができるのは多くはない。つまり、魔力とのシンクロ率が低い者ばかりということだ。
逆に魔法を使える人間は、『魔女』と呼ばれる女を始め、とある王国では魔法術師として魔法隊のようなものを作っているらしい。
ケンヤも、そういった者たちと同じように、シンクロ率が高かったということだ。この点も、ケンヤが選ばれた適正に含まれているのだろう。
「ほっ、よっ……」
魔力を扱い、さらにそれを使いこなすことがケンヤの次のステップだ。力というものは、ただぶっぱなせばいいというものではない。時に強く、時に弱く……自分の思い描いた大きさの力を、自在に出せてこそ、力の制御が完璧になるのだ。
これに関しては、魔族に勝ることは簡単にはできない。なにせ、生まれたときから魔力と付き合っている連中だ……覚えたてのケンヤが、その力を上回ることなど簡単に考えてはいけない。
ただ……ケンヤにも、魔族よりも上回る点はある。
「魔力の制御……目を見張るものがありますね」
「え、そう?」
ガルヴェーブ曰く、ケンヤの魔力制御は相当なものであるらしい。制御がよければ、たとえ弱い力であっても、力の使い方によっては自分よりも大きな力を、打ち崩すことができる。
目を養えば、力の弱所を見つけることができる。どんな強大な力であっても、そこを突くことができればその力は半分の威力も発揮することができない。
だから、魔力の制御と目を養うこと。これを、更なるステップアップとして、訓練に組み込んでいった。
「呪術?」
この世界の知識を得るにあたって、知っておいた方がいいことはなんであれ教えられる。呪術という力も、その一つだ。
「魔力とは違うのか? 聞いた感じ、なんかまがまがしい印象を受けるんだけど」
「はい。魔力よりももっと邪悪な力です」
と、話すガルヴェーブ。魔族が邪悪というのだから、相当なのだろう。
曰く、使うと体を蝕まれ、最終的には呪術の力にすべてを呑み込まれてしまうらしい。文字通り、呪われた力というわけだ。
その力は本人の意思とは関係なく発動してしまうこともある。そもそもどうして呪術という力が生まれているのか、どうして特定の人物に表れるのか、明らかにはなっていない。
使えば体を蝕むというのに、勝手に発動してしまうこともあるというのだからはた迷惑な話だ。
「実際に、呪術というのは強大な力ではありますが……恐ろしい力でもあります。過去、呪術を使う人間は監禁されていたという話も聞きます」
「ひゃー」
聞いたことのあるような話だ。力が大きすぎるから、本人の意思に関わらずどっかに閉じ込めておこうというのだ。
呪術の力というのは、なにも人の中に生まれるわけではない。あるところでは、たとえば剣などの武器が、そういった呪われた力を持っていたのだという。人でなく武器にも、その力は宿る。
また、呪術の中でも特に危険とされるのが……禁術とされる力だ。それは、死んだ人間を生き返らせるという、神をも恐れぬ所業。禁じられた術、ゆえに禁術。
魔法や剣や、ファンタジー満載のこの世界であっても、死んだ人間を生き返らせる術なんて、ないのだ。いや、あったとしても、それは許されないこと。それが禁術だ。
「呪術で、体が蝕まれるんだ……禁術なんてもん、使ったらどうなるんだろうな」
「使うなんてこと自体考えないでくださいよ」
呪術も禁術も、同様に恐ろしい術。だが、この二つは似てるようで実は違う。呪術の中でも禁止とされるのが禁術であるが、禁術は呪術とは違い、『その方法』を知っていれば誰でもできる。なにも呪術を使えないと禁術を使えない、というわけではない。カテゴリーが同じだけで、正確には違う力なのだ。
「はは、まーそんな力、無縁だろうしさ。一応疑問に思っただけ」
自分が禁術なんていう、怪しげなものを使うはずがない。どころか、きっと呪術という力にだって、縁はないだろう。
それに、自分は異世界から来た人間だ。魔力はともかくとしても、呪術なんて力が発現する可能性は低いだろう。
と、根拠のない自信を持ったりもしていた。
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