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予期せぬ再会
連携の力
しおりを挟む到着した本隊。どうやら警備隊が命懸けで時間稼ぎしたかいがあったようだな。実際には死んでないし、死んだ隊長は死ぬ前の時間に巻き戻ったようだけど。
現れたのは、なるほど警備隊の人たちよりもさらに魔力が高い。一人一人が洗練されている印象だ。
さすがに、一国を守るのにふさわしいってことか。
「ちょっ、遅いよ! 隊長さん一回死んじゃったんだからね!」
本隊のリーダーと思わしき、チョビヒゲを生やしたおっさんにお面の店員は噛みつく。噛みつくとはいってもそこに険悪な空気はなく、怒ってはいるがぷりぷり怒っているため本気で怒っているわけでははなさそうだ。
……いや、一回死んだってなに。ゲームか!
「申し訳ない、アコ殿。他にも魔獣の侵入がないか、確認のため遅くなった」
「……ホント、焦ったんですからね」
ゲーム……のような言い回しではあるが、本人はゲームだとは思っていないのは、その表情からわかる。そもそもこの世界にコンピューターゲームはないけども。
なにかしらの制限があると思われる、時間の巻き戻し。それはもしかしたら、一日一回とか、そういう縛りがあるのかもしれない。というかそれくらいないとな……制限ってのはこういうものかもしれない。
そうだとしたら。……巻き戻しができるのは一日一回。だからこの後誰が死ぬことがあっても、もう同じ手は使えない。彼女にとって、決して死が軽くなったわけではない。
そう考えると、隊長以外の警備隊の人間が一人も死んでないのは幸運だろう。軽症の者や、中には腕が千切れてしまったほどに重症の者もいる。
死した事実をも巻き戻せる力。けれどそれは、無制限でなく制限のあるもの。使いどころを選ぶそれは、もしかしたらそれだけで重荷かもしれないな。確実に救える……けれど、使う場面を間違えばとんでもないことになる。
もしかしたら、もっと先にその力が必要な場面が来るかもしれない。それは誰にもわからない。力があるからこそ、どこでどう使うのか、その判断力が求められる。
「ご安心を。もう、あの魔獣の好きにはさせません」
他にも魔獣の侵入がないか、確認していた……その本隊が来たってことは、他に魔獣の侵入はなかったってことだ。どうせなら、あちこちから侵入してくれてもいいけど……消滅したと思っていた魔獣がいること自体が不思議なんだ。そんなほいほい現れはしないか。
あの魔獣も、ただでさえあの店員がいるのに、そこに本隊まで到着しては、為す術がないだろう。
「ガゥルルル……!」
凄まじい魔力、そして殺気……獲物が増えた事実に、魔獣は歯を食い縛っているようだ。力の差を理解しているのかはわからないが、忌々しげに見ていることは確かだ。
魔獣が吠える。しかし、その瞬間を好機とばかりに、本隊は魔法を放っていく。火に水、雷と様々な種類のものが飛び交い、それは魔獣に……魔獣の口の中に、撃ち込まれていく。
「ガッ……ッ!?」
いくら皮膚が硬くても、口の中はそうはいかない。いくら体の外側が硬くても、内側は柔らかい……体内を硬くするなんて器用なことができるわけもなし、知性のない魔獣ならばなおさらだ。
複数の魔法を口の中にぶちこまれ、魔獣の体内でそれらは爆発する。口の中から喉へ、そして体内へだ。魔獣の口からは、爆発により発生した爆炎が漏れだしている。
それにより魔獣の動きが止まれば……あとは、対処は簡単だ。
「せぃ!」
いつの間にか走り出していた影が一つ。彼女は、この状況においても妙なお面を外すことなく、魔獣へと距離を詰め……先ほど自身の攻撃により皮膚を抉った場所へと、ジャンプ。そこへ蹴り上げをおみまいする。
ただでさえ鋭い蹴り……それが、皮膚の抉れた場所へと打ち込まれれば、ダメージは必須だ。
「ギュアォオ!?」
これまでのやり取りで聞いたことのないほどに、ダメージを受けたであろう魔獣の叫び声。弱々しいというか、痛くて仕方がないといった具合だ。
けれど、彼女の攻撃はこれでは終わらない。
「ららら、らぁい!」
飛び上がった状態のまま、蹴り上げた足で二擊目。そして三擊目……と、追撃を開始する。浮いているのではないかと錯覚してしまうほどの滞空時間……実際には浮いてはいないのだが。
落下の最中も、何発も蹴りを入れていく。しかも、皮膚の抉れている部分を集中的にだ。なかなかに、エグい。
「ギ、ァアァ!?」
「そぉ、りゃ!」
とどめと言わんばかりに、その場所に回し蹴り。それだけでなく、蹴りの瞬間に魔力を纏わせた……部分強化ってやつだ。それは容赦なく、魔獣にダメージを加えていく。
魔獣の巨体が揺らぐ……が、倒れない。八本の足すべてが、縛られているからだ。本隊の人たちによる拘束の魔法……緑色の鞭みたいなもので、魔獣の足を縛り付けている。一本の足に何本もの鞭が絡み付いている感じだ。
彼女が魔獣の体力を低下させ、その隙に本隊の人たちが魔獣を拘束する。うまく連携がとれている……それは事前に打ち合わせたものというより、状況に合わせてやり方を変えていく。といった形だ。
「そのまま縛り続けろ! B班は、アコ殿が抉った魔物の体へと集中攻撃!」
本隊のリーダーであるおじさんが、でっかい声を指令を下す。でっかい……うるさい。すごい響くなあの声。混乱の中でも自身の声を通すってことだからかもしれないけど。
B班と呼ばれた人たちが、先ほどから溜めていたらしき魔力を一斉に発射。どうやら、今魔獣の動きを止めるために鞭を出しているのがA班、続けて攻撃を放つのがB班と、分担していたようだ。それも、拘束していた間に魔力を溜めていたため威力は高い。
そして狙うのが、あの店員が散々いじめ抜き、硬かった皮膚を剥き出しにした場所。体内でなくても、同じ箇所を何度も集中的に攻撃すればダメージは蓄積される。それが硬い皮膚の抉れ、剥き出しになった箇所ならなおさらだ。
「ギァアァア!?」
複数の攻撃が、同時に着弾する。いかに強大な魔獣であろうと、知性のない個(まじゅう)では集団の連携には勝てない。目の前で起こっているのは、まさにそれを見せつけられている気分だ。
あれほど絶望的に思えた戦況が、今では一方的に傾いている。魔獣の行動は封じられ、本隊からの絶え間ない魔法攻撃とお面の店員の重い追撃に、沈むのはそう遠くはない……
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