異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

文字の大きさ
418 / 522
英雄vs氷狼vs……

巨大化

しおりを挟む


「邪魔だ!」

「貴様もな!」


 目の前で、氷の狼と大柄な魔族がぶつかり合う。どちらも、優先して私を狙ってくるが、優先するがゆえに相手が邪魔になる。ユーデリアはガニムが、ガニムはユーデリアが邪魔に。

 そこで、手を組んで私を襲って来ないのはとりあえずありがたい。共通の敵を相手に共闘、なんて展開にならないのは助かっている。できれば、そのまま共倒れしてくれればありがたいんだけど……


「お、おぉ!」

「むん!」


 ユーデリアはスピードでガニムを翻弄、そして死角から突撃する。それはつまり、額から伸びる氷の角を突き刺すということだ。死角から潜り込んだユーデリアのスピードに、反応はできない……はずだ。

 だが、ガニムは驚くべき反応速度で振り向き、鋭い視線を向ける。突き刺さらんと向かってくる氷の角を、真剣白羽取りの要領で手で挟み突き刺さるのを防ぐ。


「っ……」


 挟み、防いだはずの攻撃……しかし、ユーデリアの攻撃はただ氷の角で突き刺すだけではない。むしろそれはおまけで、本命は冷気にある。

 その証拠に、氷の角を手で挟んだガニムの手が、目に見えるほど白く凍っていく。ユーデリアの冷気を一点に集めたのが、あの氷の角を作り出しているのだ。当然の結果だ。

 さらに冷気は、ガニムの足元をも固めていく。動きを封じ、手を凍らせ、全身を凍らせるつもりか。もしくは、動けなくなった間にその速度で、牙や爪で切り裂いてしまうのか。


 カチカチッ……!


 ユーデリアを中心に、音を立てて地面が凍っていく。氷場の足場は、氷狼であるユーデリアにとってこの上なく有利なものとなるはずだ。逆に、私たちには不利な足場だ。

 まあ、その程度ならば足場を崩すなり、氷を溶かすなりで対処の仕様は充分にある。問題は、地面を凍らせるほどの冷気をガニムが至近距離で受けているということ。

 できれば共倒れしてほしかったが、まあ数が減るだけでも儲けものだ。ガニムには得体の知れない力があるし、それと真正面からぶつかるというのはリスクが高い。見た感じパワーバカだし、トリッキーな氷狼相手なら……


「むぅう、おぉお!」


 わりとあっさりやられてくれるかもしれない……と思っていたけど、それは間違いだったかもしれない。

 ユーデリアの攻撃を防いでいたはずのガニムに、変化が表れる。気合いを入れている……のだろう、その場で腹の底から出しているんじゃないかと思えるほどの重々しい声が、響く。それは徐々に大きくなっていき、それに合わせるように体に異変が起こる。

 異変……というには絶対にあり得ない光景ではなく、それでも普通に考えればあり得ない光景だ。それが、目の前で起こっている。

 大柄であったガニムの体が、急激に大きくなっていく。腕が、足が、肩幅が、身体中の筋肉が増量していき、全身が大きく……巨大化していく。


「おぉおお、おぉお!」


 筋肉が膨れ上がり、体が元の倍の大きさになっていく。その体を支えるため、足も強靭なものへと進化する。目の前で、魔族が巨大化していく。今まで会った魔族で、こんな変化をする奴はいなかった。

 氷の足場は、足が強靭になるにつれ破壊されていく。凍っていたはずの手も、腕が膨らんでいっているためか氷を砕いていく。

 巨大化という、シンプルでありながら一目で、パワーアップを果たしたと見える姿に、ガニムは変化した。


「んむぅ!」

「!」


 凍りつくそれは、すでに手首にまで侵食している。見た感じ、手と角とはすでに氷により接着しているといっても過言ではない。つまり、手を角から剥がそうとすれば皮膚が剥がれるほどの痛みを覚悟しなければいけない。

 だがガニムは、そんなことお構い無しと言わんばかりに角から手を引き剥がしていく。その際に訪れるであろう痛み……しかし、ガニムはそんな表情を浮かべることはなく、引き剥がしに成功。そのまま、ユーデリアをぶん投げる。


「……っ」


 うまく着地したユーデリア、その氷の角には……遠目からだが、わずかにヒビが入っているように、見えた。


「っ、お前……!」

「氷狼ごとき、敵ではない」


 見た目以上のパワーバカ……けれど、それも一定のラインを越えると脅威だ。実際、腕力のみで上り詰めた『剛腕』だっているのだから。

 足も、簡単に上げていく。バキバキと氷が砕け、地面とくっついていはずがまるでそんな事実などなかったかのよう。

 あれは……ヤバいな。単純な腕力だけなら、師匠に勝るとも劣らないかもしれない。ユーデリアの氷の角を傷つけた時点で、並の力でないことはわかっている。


「この、邪魔だっての!」


 再び、ユーデリアの体から冷気が吹き荒れる。今度は、四方八方撒き散らすのではなく、完全にガニム一人を狙い撃ちしたものだ。

 ガニムを中心に、まるで砂嵐のように冷気が渦巻き立ち上る。あの冷気の中にいれば、一瞬で氷付けにされてしまうだろう。

 なのに……


「ぬるい!」


 冷気の中から声があった後、まるで内側からはぜるように冷気が弾け飛んでいく。するとガニムの姿が露になっていくが……え、今どうなったの。


「っ、化け物め」

「心外だな」


 なんか、さっきよりもでかくなってる気がするし。なんだこいつ……?
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...