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英雄vs氷狼vs……
剣の攻防戦
しおりを挟むケンヤの手から、日本刀を手にした。それにより、私は攻撃手段が増えケンヤの武器を奪った……はずだったが。
ケンヤの手に新たに握られた剣……しかもそれは、ただの剣ではない。禍々しいほどのその気配を漂わせるその剣は、間違いなく……『呪剣』だ。最近はそれに触れることはなかったが、その印象は強く残っている。
『呪剣』という名の示す通り、それは呪われた力を持つ。呪術と似たようなものだ。
単に『呪剣』とはいっても、それは種類の名称であり一本一本の効果は違う。私がこれまでに見てきたのは、二本。
一本は私がこの世界に戻ってきたばかりの頃に出会ったコルマ・アルファードという男が所持していたもの。それは斬った者の自我を奪うというもの。もう一本は、『剣星』グレゴ・アルバミアの故郷で見たもの。それは斬った者を砂のように崩れ落ち消滅させるというもの。
どちらも、呪われた剣と呼ばれるにふさわしい邪悪な力を持っている。『呪剣』が二本あった以上、三本目があっても不思議ではないが……
グレゴの故郷で見て以来見てなかったものを、まさかここで見ることになるとは思わなかった。どんな能力があるのかはわからないが、それを一太刀でも受けるわけにはいかない。
「……これを知っているのか」
「……似たようなのは、使ったことがあるんでね」
実際に、コルマ・アルファードが使っていたものを、彼が死んだ後に私が使うようになった。コルマは『呪剣』を使っていた影響かはわからないが、倒しても倒しても立ち上がってくるゾンビのようになっていた。
最終的に頭を潰したことで機能を停止させたけど、あれが『呪剣』を手にした者に備わる、耐久力のようなものだとしたら……同じ『呪剣』を手にしたケンヤも、同様の耐久力を?
それともあのゾンビみたいな耐久力は、あくまでもあの『呪剣』だから備わっていた能力……とかなら、また話は違ってくるんだけどな。だとしたら、あれを使い続けていた私の体に異変がないのも妙だけど……
……いや。異変なら、それこそたくさん起こっているじゃないか。私の中に呪術の力が生まれたり、エリシアの左目を手に入れたときだって……
とっくに、おかしくなっている。
「はっ!」
「!」
っと、いつまでも考え事に浸らせてはくれないか。『呪剣』を手に、ケンヤが襲いかかってくる。さっきの立ち回りを見ていると、剣は扱えるようだが落ち着いて向き合えば、対処できない相手ではない。
それに、私も日本刀がある。
ガキンッ……!
振られる『呪剣』を日本刀で弾いていく。単純に剣を受けるよりも、受け流す方が効果的なはずだ!
私だって剣の扱いに慣れているわけではないけど、すっと剣士の頂点の動きを見てきたんだ。見よう見まねでも、多少動くくらいならばできる。
とはいえ……
「っく……!」
剣擊を弾くだけとはいえ、その猛攻は激しい。斬られたら……いや、触れられた時点でなんらかの悪影響が及ぶと考えるなら、一挙一動に注意を配らないといけない。
それに、単純な話魔法が使えず回復もできないし、致命傷を負うのも避けたい。
「へぇ、なかなか動けるね」
「そっち、こそ!」
くそぅ、涼しい顔して……! 攻めるより守る方が難しいとはいえ、これじゃこちらの体力が奪われるばかりだ。
それに……
「ちょっと、ヤバイかも……」
打ち合っているとわかる。刃が触れあう度、強度が落ちてきているのがわかる。この剣の強度が弱いわけではない、単純に打ち合う『呪剣』の強度が強いんだ。
元々ケンヤが出した剣だし、強度を調整してたりするのかもしれない。
「そこ!」
「!」
ほんの僅かに生まれた隙……そこを狙って、ケンヤは『呪剣』を突き刺してくる。肌に触れてしまう前に、咄嗟に剣でガードするが……パキィン……と音を立てて、剣は砕け散っていく。
まずい、得物が……!
ケンヤの追撃は、止まらない。くそぉ、動作がスローモーションに見えるな。でも、ここからいくら速く動いても完全に避けきるのは、不可能だ。
となれば……被害を、最小限にする。狙いは脇腹、なのでそこから一番近い。右腕でガードする。肉を切らせて骨を断つ、みたいな感じだ。
このまま脇腹に突き刺さって致命傷を負うくらいなら、少しでも怪我を軽く。この『呪剣』にはどんな効果があるかわからない。けど、どうせ受けてしまうのならダメージを軽くすべきだ。
それに、以前コルマが持っていた自我を奪う『呪剣』に斬られた際、体に違和感はあったものの自我を保てたままだった。『呪剣』の効果が及ばなかったのだ。今回も、そうなるだろうことに期待するしか……ない!
ザクッ……!
「っ!」
考えている間も、咄嗟に動いた。右腕。それは、脇腹を防ぐようにして……『呪剣』が、突き刺さった。
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